06. 朝一番の空
伝えておくれ、矢よりも早く。
夜毎、身体が言葉に溺れはじめる。
伝えられずに、呑み込まれ積み上がり溢れ出した言の葉たちに。
自分が生み落とした毒に自分で傷ついて、
耳まで赤くなっては、布団の中に頭を隠す。
恋占いは、一回200円。
銀色の貨幣二枚で
めくったカードが逆位置の塔。
お金で買ったのは絶望の絵。
絶望を飲み込んで、言葉が内臓の中で破裂する。
これはバベルの塔。
塔から逆さになって人が降ってくるよ。
だけどこれは逆位置のカードだから、人は空に昇ってゆくのだ。
まるで息をしに水面へ浮上するアザラシみたいに。
「サプゥ、サプゥ」
早朝に扉の外から聞こえてくるのは
女の声と、地面を掃く竹箒の音。
ざあーっ、ざあーっと軽やかな。
破裂して散らばった私の言の葉を、掃き集めてくれるのだね?
陽の出と共に
内臓の熱はゆるやかに冷えて、
額に熱が集まってきた。
熱は水蒸気に、
水蒸気はあの人の顔に。
あの人にあの人に。
あの人に逢いたい。
響きが消えると、あとは伽藍堂。
かの人の記憶と温度が、肌の上数センチの空気を震わせる。
物狂おしくて
ひゅるると泣いた後は、
ベランダに出て朝一番の鳥を待とう。
矢よりも早く、
いかづちよりも鋭く、
あの人の夢の中へと落としてもらうために。
私の心を。