旅と遊びの記録

サーモンフィッシング編

 

2004年春

日ごろからあまり心から笑ったりすることの少ない男達が5人ほど集まってサーモン釣りをしようということになりました。

そしてある春の日の早朝6時、M&Mチャーターズの船長ことマス井上さんの案内により、我々はまだ明けぬバラード入り江の暗がりを出航することになったのです。

まだ肌寒いノースバンクーバーの港を縫うように進みながら暖かいコーヒーなどをすすっていると、東の空からは見事な朝焼けとともに太陽が顔を出しました。

「おおっ!日の出だ」

とふだんよりあんまり楽しい思いをしていない男たちは必要以上に喜び、興奮して叫び声をあげていました。

 

 

漁師になった気分で早朝の海へと漕ぎ出す!

 

船長ことマス井上さんは非常にリラックスした頼もしい人でした。

愛船である「M&M号」(昔はビクトリア号だったらしいが。恥ずかしいので変えた…らしい)を上手に操り、サーモンたちがうろついているあたりをモニターセンサーなどを駆使して確認しながら、楽しく盛り上げてくれるのですが、竿に魚が食いつくや否や突然人が変わったようになるのです。

「(リールを)巻けー!」と叫びながら竿に飛びつくと、食いついた魚を逃すまいとすさまじい形相になります。

のんきにポカーンとしている我々は竿に魚がかかったかどうかすらほとんど判別できず全く戦力にならない状態なので、この人のいいオジサンが船の操縦からつり竿の動き一つまですべてを管理して、船の中を走り回るハメになっていました。

こうしてあれこれと四苦八苦している間にあっという間に時間は過ぎ、お昼になっても釣果はナシという状況でした。

のほほんとした我々もさすがに「まぁ、なんとか一匹くらいは…ねぇ…」と徐々に危機感を覚えつつも相変わらず遠くの島などを眺めつつ、「あの島はなんていう島かなぁ」とつぶやいている一同だったのです。

がその時、マスさんの「巻けー!」の声が船内に響き渡り、しばし船の中が戦闘状態になったあと、下のキングサーモンを釣り上げることに成功したのでした。サイズはギリギリ持って帰れる大きさだということでした。

 

 

人間というのは現金なもので、一匹釣れるとそこからは土佐の一本釣りのように入れ食いになるものだと勝手に思い込んでしまうようです。

さきほどまでは完全に農耕民族の顔をしていた男たちは突然に狩猟民族と化して竿をにらみつけ始め、目つきがギラギラとしてきました。

でも世の中そんなに甘いわけはありません。その後はまた何の音もしない静かな静かな海へと戻っていったのでした。

そんな時はマスさんのいろいろな釣りや魚に関する話を聞きながら時間を過ごすのです。

 

結局、特別に延長してもらった9時間に及ぶ船上での格闘の末、80センチ超の大物をワタシが逃がしてしまうという失態もありましたが、もう一匹のキングサーモンを釣り上げて大満足でM&M号を降りた我々でした。

釣りには潮の流れや気候、季節などさまざまな要因があり、それにあわせて楽しむものだということのようです。

いつもは浮かない男たちも最後はとても晴れやかな表情になり、日焼けした顔に微笑を浮かべつつ港を後にしました。

その後、友人の家でBBQにして食べたのですが、せっかくマスさんが内臓などを取り除いてくれたのに、魚をさばくことのできない我々はこのサーモンたちを見るも無残な姿にしてしまいました。

釣るだけじゃダメだということですね。

 

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