第10話   大集合
翌日、私達を乗せたタクシーは、「和尚コミューン」の門の前で止まった。
夢にまでみた場所に私は降り立った。
写真では見たことがあったのだが、とうとう私は正真正銘のインドのその場所へとやって来たのだ。
こんな話がある。
突然、暗闇の海の中深くに放り出されると、殆どの者がパニックで、
上下左右の方向すら分からなくなるという。
おかしな話だが、あまりのパニックに、海面とは反対方向の海底へと
向かって潜り始める者もいるそうだ。
そんな場合は、自分の吐いた空気が、上がっていく方向をゆっくりと見つめ、
冷静に判断しなくてはいけない。自然の法則は、そんな中にもそのまま存在している。
もちろん、この時の私がパニックを起こした訳ではない。
会社を辞め、自分の行くべき方向が全くの暗闇だった時、
私は、この自分の吐息で方向を判断するように、
自分の心の赴くまま、恐怖に叩き潰される事なく、魂の叫びに従って進んできた。
がむしゃらに上を目指すではなく、浮力で勝手に体が海面を目指すかのごとく、
無駄なエネルギーを使うことなく、浮かんできた様でもある。
そして私は、まだ浮上の途中ではあるが、ここに辿り着いた。。。
早速、手続きの為、ウェルカムセンター(案内所)に向かった。
日本人スタッフでもいるのか思っていたが、それは甘かった。
しかし、あーだ、こーだと、つたない英語で悪戦苦闘していると、
次から次に、ここの顔である?日本人が現われ始めた。
アナディー、アキード、アタサ、赤木さん夫妻(この時、到着)・・・・・・・etc。
この時私は、この場所(ウェルカムセンター)は、日本人の溜まり場みたいなもんであろう、と感じた。
しかし、私自身ここで生活を始めて、分かった事だが、
この場所には通常2週間に1度、それも1分位しか行かない場所であったのだ。
(2ヶ月以上も足を踏み入れない時もあった。)
偶然にも、私達が到着した日、それもその時間帯にそれからもお世話になる方々が、
あれよ、あれよという間に、勢揃いしてくれたのであった。
”縁”だね〜と簡単に片付けることも出来るが、
私達の到着を祝福してくれる為に集まってくれたに違いない、と私は感じている。
諸々の手続きが終わると、いつの間にか皆いなくなっていた。
も1つ大事なことが残っているのに・・・・・。
それは、今晩の「寝床」である。。。
私はインドに辿り着いてから、約一週間で、日本の一年分は生きた気がした。
何せ、明日のことが考えられないのである。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、今日は無事、生き残れるのか?
そして、今晩は無事、寝床まで辿り着けるのか?それしか考えられないのである。ホントである。
2歳半の子供と野宿をするわけにはいかないであろう。
しかし、昨日タクシーの中で「信じ切った」ばっかりだし、
”ま〜どうにかなるでしょう〜♪”と、ウェルカムセンターをあとにした直後だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
何がそうさせるんだろう〜? 誰か見ていて指示を送っているのか?
ジム・キャリー主演の「トゥルーマン・ショー」じゃあるまいし・・・・・?
それでもやっぱり、全ては絶妙なタイミングで起こってくるのである。 お〜まいがっ!
突然、「ニイハオ。 アニオハセヨ。 こんにちは。」と声を掛けられた。
とっさに私は、「こんにちは」と反応してしまった。
すると、「やっぱり、日本人だ〜。」とマハスクとミーナが近づいてきた。
(アジア系人種には、こうやって声を掛ければ、瞬時に人種が判断できる。この時知った。)
「今日来たの? じゃ〜今晩どこ泊まんの?」
最初は、軽いノリだし、信じていいのか迷ったが・・・・・・・善良な人達だった。
格安のホテルを紹介してもらい、この後もずーと世話になった。ありがとうございました。m(。-_-。)m
さらに後〜〜になって判明したことだが、
このミーナは、私達が到着する2週間ほど前に、アメリカ・ボルダーから来たのだという。
そしてなんと彼女は、パンタさんの経営する「寿司三昧」と深い関わりがあったのである。
ボルダーで会っていてもおかしくない状況であったのに、
なんとインドのプーナで出会うことになろうとは、人との縁は不思議である。
その後にも、こんな展開は日常茶飯事で起こっていくのだが、
も1つ、ついでにパンタさんつながりを書くことにしよう。
私はこの場所で、オイルマッサージを学んだ訳だが、
その時、通訳等諸々で、すっごいお世話になった「イクコ」という女性がいる。
ナント彼女は、「寿司三昧」オープン当初、そこで働いていたという。
店の名物になった”ロックンロール・ショー”の時には、
ノリノリを演出する為に、電気を消したり、付けたりが彼女の仕事だったという。
そんな話をしながら、大笑いしたのを今、思い出した。
ところが、そんな事実を知ったのは、オイルマッサージのトレーニング終了後、
それも帰国寸前のほんのちょっとした偶然がきっかけであった。
出会う人には、それぞれ縁があって・・・・・・・・とは、よく言うが、
それを当たり前のように目の前に差し出されると、分かっていても、
え〜〜〜? 何で〜〜〜? どうしてそうなるの・・・?と
人生の神秘に感動しながらも、畏怖の念を感じてしまう。。。
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