第24話   その演技に100ルピー
インドにも慣れてくると、”そんなのもありかよ〜”と
起こること全てが滑稽に見えてくる。
「信号待ちで、白線の最前列に止まったのに、スタートは最後になる。」
別になぞなぞではない。
交差点での光景そのままだ。
赤信号で、先頭に止まってしまったら、信号が青に変わった時には、
20〜30台後方になってしまうというもの。
さらに詳しく説明してみよう。
まず、あなたの車が赤信号に引っかかって、白線の最前列に止まったとする。
するとあなたの真後ろの車は、あなたの車を追い抜き、白線の前へ出て止まる。
さらにその後ろの車は、その前へと出る。
そして、交差点の中央ギリギリまで、その列ははみ出していく。
そしてもう前へと出れなくなると、車は横に広がり始める。
信号が青に変わる頃には、すでに20台以上の車があなたの前に陣取り、
エンジンをガンガンふかし、スタートの合図を待っている。
白線なんか何の意味もない。
日本でのバーゲンセールで、「どけ〜どけっ」と最前列まで押し寄せる迫力をもった
オバタリアンでなきゃ、インド人には太刀打ちできないと思われる。(笑)
話しは変わるが、ある時、町を歩いていると、
「あれ〜タナカじゃないか?」とインド人に声を掛けられた。
不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。
そして「ビックリした〜。おれの友人のタナカにそっくりだったもんで・・・。
でもよく見るとちょっと違うけど・・・・・・・。うりふたつだね〜。これは奇跡だ!」
と一人盛り上がっている。
「お前は生き別れた兄弟がいるんじゃね〜か?」
「いや、いないけど・・・。」と私はにやけながら答えた。(何が出てくるんだ〜?)笑
「じゃ〜お前の魂の兄弟だ。間違いない。」とさらに盛り上がっている。
そして、「彼はすぐ近くに住んでんだけど、会いに行ってみね〜か?紹介するよ。」
とニコニコしている。
怪しいながらも、ほんとに私にそっくりな人がいるんだったら、会ってみたいな〜、
と素直に思った。
「分かった。じゃ〜今から会いに行ってみようか。決まりだ!」と
歩き始めようとした瞬間、彼は思い出したかのように続けた。
「その前に、今、俺腹へって動けね〜んだ。今すぐ連れていきたいんだが、
まず腹ごしらえして、行かね〜か?」
”そういうオチかよ”と私は噴き出してしまい、握手して彼と別れた。
(ホントに私そっくりな人がいた可能性0%)笑。
最後に、私にとってのグランプリ、「あんたが大将!」を紹介したい。
またもや歩いていると、声を掛けてくる男がいた。
(99%は下心たっぷりで、私にとってありがたい話しなど皆無。
よってほとんど無視を決め込むのだが・・・・・・。この時は・・・・・・)
この男、見ると赤ちゃん(らしき)ものを抱きかかえている。
何やら一生懸命言っている。
どうやら抱いている子供が死にかけているらしい。
ところがお金が無くて、病院にも連れて行けない(らしい)。
そして、1枚の紙切れを取り出した。
見ると、病院でかかる注射代、薬代が5行くらい箇条書きで書いてある。
病院で書いてもらったもの?らしい。
そして一つ一つに料金が記載してあり、合計300ルピー(約800円)になっていた。
”ほう、そうきたか。なかなか面白かったよ。”と相手にするつもりもなく、
立ち去ろうとして、男に笑顔を送ろうとした私は、あろうことか立ち止まってしまった。
男の目は、涙で溢れていた。
そして、「この子を助けて下さい。」と必死に訴えてくる。
その迫力に、ぐらっときた私は、”助けてやろう”と急に心が変わってしまった。
そして財布を取り出そうとした時、また心が一転した。
毛布で包まれた子供の顔が一瞬見えたのだ。
それは人形だった。
だが、男は迫真の演技で攻めてくる。
私はそれが嘘だと分かっていても、いいものを見せてもらったと感動し、
100ルピーを男に手渡した。
男は、「足りない」と文句を言いながらも、手を合わせ、再び涙を流した。
PS.今思えば、あれは人形ではなかったかもしれない?、と信じている。(笑)
9/5