第9話   最大の山2
その時、私の中で「戦い」は始まった。
「このオヤジは、仲間を待っているのか?」
「金を持ってそうな客を乗せたら、合図で仲間が集まってくるんではないか?」
「俺の旅は、もうここで終わってしまうのか?」
・・・・そんな最悪の展開が、頭の中で次から次へと顔を出し、自分の弱さをせせら笑っているようでもあった。。。
ここでちょっと場所を変え、この話をしたい。
インドから帰国後、こんなことを言う人がいた。
「俺もそんなことをしてみたいけど、子供が学校行っているからね〜。」
もし、私に子供がいなかったら、
「俺には子供がいるからね〜。あんたは子供がいないからそんな事が出来るんだよ。」と言うだろう。
もし、その人に子供がいなくて、私が独身なら、
「俺は結婚しているから、あんたは独身だからそんな事が出来るんだよ。」と必ず言うだろう。
実際、3つとも言われたことがあるので、これは実話である。(それぞれは別の人物)
私は、ハッキリ言いたい。自分が出来ない理由を他人のせいにしてはいけない。
私なら、子供が小学生でもインドに連れて行った自信はある。。。
しかし、私が話したい事はそんなことではない。
なぜ私は連れて行けたのか、を極秘に教えたいのだ。。。ちょっとした発想の違いなのである。
「逆転の発想」というには、軽すぎるほどの秘伝である。
私はこれを、「神秘」の中から垣間見せてもらったのである。
私はある時、激震の日々の中にいた。
息をするのも苦しいほど、悲しく、辛い中にいた。
その時、「この俺がこれほど苦しんでる。生きてるから苦しんだ。
へ〜俺もここまで苦しむことがあるんだ〜。おもしれ〜。」と泣きながら笑っていた。
最悪の状態では、泣けばいいのか?笑えばいいのか?ほんと分からない状態になるもんだ。
そんな日々の中で、私の何かは爆発し、怒涛のシンクロが起こり始めた。。。
私の力の遠く及ばない大きな大きな何らかの力を感じた。
(今ではこれも自分の起こす業のひとつであると感じる。人間の持つ想像を絶する潜在意識の力とでも言おうか?
もちろん、プラス何かが働いている気もするが・・・・・。またいつか話そう。しかしこの時は・・・・)
何が・・・?誰が・・・・?・・・・・・・これはいったい・・・・・?
知識では、頭の中では前から分かっていたのだが、私は体験してしまったのだ。
腹の底に落ちてしまったのだ。私を見守っている何かがいる。何かが在る。。。???
そんな経験から私の発想は生まれた。
男なら家族を連れて行く場合、「家族は俺が守らなくてはいけない。」と気合も入るはずだ。当然だろう。
しかし自分の力が「10」なら、例えば子供を守る為に「4」、妻に「3」、自分自身に「3」の力で守ろうとするはずだ。
するとそこに力の分散が起こり、自分の弱さを痛感してしまう発想につながってしまう。
私は大きな力を知ってしまった。
私に「10」の力が働いているなら、子供にも、妻にも同じ大きな「10」の力が働いているはずだ。
更に子供にはそれ以上の力があるかもしれない。自分の倍以上かもしれない、とも感じた。
また更に、家族で同じ方向を目指すなら、
「10(自分)+10(妻)+20(子)+α(アルファー)」=∞(無限大)という図式まで浮かんできたのだ。
こういう心境になったもんだから、あっさり飛び立てた気がする。
インドへ来る前、パキスタンでクーデターが起こった時、
私が「信じた」というのも、この「大いなる力」を信じたのである。
ここで誤解しないで欲しい。私のいう「大いなる力」というのは、別に「神様」のことではない。
強いて言うならば、私自身に起こる「成長のためのプロセス」とでも言った方が近い気がする。
そうはかっこよく言ったものの、これでもか、これでもかと私に「挑戦状」は叩きつけられてきた。。。
・・・・・・ということで、舞台は「タクシーの中」に戻る。
そんな最悪の状況の中で私は、いつの間にかここに至るまでの出来事を振り返っていた。
そして、私はようやく我に帰り、「・・・・大丈夫だ。・・・・信じよう。・・・・・・信じた。」
とぐっとこぶしを握ることが出来たのだ。
「全ては順調だ。どんな事が起ころうとも私にとってはプラス以外の何者でもない。
死ぬことはない。死んでもただそれだけのことさ。」と何かが吹っ切れた。。。
たぶん時間にして、5分くらいであったであろう。
しかし私には1時間以上の時が流れていたようでもある。
そして私が「信じ切る」のを待ったかのように、運転手は何もなかったかのようにタバコを吸い終わると
車のエンジンをスタートさせ、出発したのだった。
ただ彼は、タバコを吸いたくて車を止めただけだったのだ。・・・・・・・笑ってしまう。。。。。
読者はこう考えるかもしれない。
「考えすぎだったね。何もなくて良かったね。」・・・・と・・・。
でも私は違うと思う。
もしこの時、私の中に芽生えた「恐怖心」を乗り越えなかったら、その時は何も起こらなかったかもしれない。
しかしそのひずみは、いつか私に現実のものとして襲いかかってきたであろう。
この時に「信じる」ことが出来たからこそ、ある一線を越える事が出来たからこそ、
後に起こる全てのことはスムーズに流れていったのだ。。。
PS.・・・・・が、「そう簡単に割り切られちゃ、人生面白くないでしょう〜」(大いなる力:談)
   「そうですよね。後から見るから見えるのであって、その時は必死ですからね〜」(マスター:談)
   「その後も色々あったんじゃないの〜?」(大いなる力)
   「おっしゃる通りでございます」(マスター)
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