第8話   決断
首になるようなヘマをやらかした訳ではない。リストラにあった訳でもない。
また、「有休願い出すくらいなら、辞表を出せ!」と言われるようなチンケな会社ではなかった。
その証拠に、私は毎年もらえる15日以上ある有給休暇を年度末前の2月には、毎年使い切って
いたほどである。イギリスに行く為に有休願いを出そうとしているのは、まだ6月中旬であったので
たっぷりと有給休暇は残っていた。
では、なぜ退職願をだすことになったのか?
今回は遠回りせずに率直に書いていこう。
第5話で、国際的な空手の道場という話をしたが、そこにつながる。
先生は何年かごとにカナダの道場に遊びに行く。そこで今年は一緒に行かないか?と誘われた
のである。私の目の前には、広大なカナダの大自然が広がった。
また、カナダで道場を開いている人は、レストラン兼ロッジみたいなものを経営していて、食べる
ものから、寝るとこまで全て面倒をみてくれるというのである。
だから、往復の航空券だけ準備すればよかった。
また先生は2週間ほどで帰国するが、なんだったら好きなだけカナダに居てもいい、と言われた。
おまけに家族を連れて行ってもいい、とまで言われた。
それまで私はこの会社に6年以上勤めていたが、1度たりとも辞めたいと思ったことはなかった。
そして、この時初めて辞めようかな?という選択肢があることに気付いた。
もちろん、色々な感情、考えが巡ってくる。
辞めてカナダに行ったはいいが、帰ってきてからこの不況の中、仕事は見つけられるだろうか?
こんな安定した会社を辞めて、勿体無くないのか?
お前は何のために行くのか?
少々の貯えはあったが、何ヶ月も働かずに、家族3人生きていくだけのお金はない。
しかし、私の中で大きく、そして何よりも力を持った言葉はこんな感じであった。
”人生の中で自分がやりたい、行きたいと本気で思うことが、何度あると思う?
そのチャンスは何度ある?
ところが、世の中には数え切れないほどの仕事と会社があるんだよ。何が怖いんだ。
自分の心は1つしかないんだよ?今やりたいことは、今しかできないんだよ!”
勝手に自分の中で自問自答していることなんだが、つらかった。すごい葛藤があった。
しかし、私の心は決まった!
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