『上海6日間徒然日記』 1999年1月12日(火)記


第6号

2日目の1―なぜお前は首を掻いている?/上海博物館の巻

1999年2月17日 発行


■ 朝食

 午前7時15分起床。カーテンの向こうが暗い。天気が悪いのか?
 カーテンを開けたらくもりだった。外国で天気が悪いなんて、わたしにしては珍しい。

 着替えてホテルの41階に向かう。今回の旅行はビュッフェスタイルの朝食付きで(今回のツアーを選んだ理由のひとつ)、その場所が41階にあるレストランなのだ。展望レストランとは聞いているが、どんな所なんだろう?

 期待に胸を弾ませ、朝食用のチケットを持ち、エレベーターで41階へ。
 入り口にチャイナドレス姿の女性が立っている。禁煙席を希望した後、席へ案内される。
 おお、さすが41階。眺めがいい。
 円形のレストラン(建物自体が円形である)の中央は、ぐるっと壁になっていて、その壁に沿ってビュッフェスタイルの食事がずらりと並んでおり、窓側が客席になっている。どの席からも、眺めが楽しめるというわけだ。わたしたちの部屋も30階で眺めはいいが、このレストランの方が窓が広いので見晴らしがいい。
 客はあまりいない。わたしたちが来たのは8時くらいだったが、もうみんな食事を終えてしまったのか、あるいはホテルに客自体がいないのか。

 わたしがコーヒー、銀が紅茶をもらった後、さっそくビュッフェへ。
 ビュッフェの内容は普通のコンチネンタル。
 主食としては、オートミールにコーンフレーク、クロワッサン(「羊角包」と書いてあった。なるほど)などのパン各種。さらにお粥に油条([youtiao :ヨウティアオ]。小麦粉を練って細くのばしてから油で揚げたもの。ようするに揚げパンですな。ちぎってお粥に入れて食べたりするそうです)。
 その他にも、スクランブル・エッグにベーコンやソーセージのソテー。羊肉のベーコンみたいなのもあったな。さすがに野菜は中国物で、チンゲンサイなど青菜の炒め物がある。生野菜が見当らないな・・・(端っこの方にあって、この時は気付かなかった)。

 生野菜といえば、思い出すのが3年前の夏に行った北京・西安・敦煌の旅行の時のこと。8日間中国にいて、口にできた生野菜はひとつもなかった。きゅうりはカシューナッツとともに炒められ、レタスは当然のように炒飯の具に。 トマトにいたってはラーメンの具としてスープの中に浮いていた。
 もちろん、どの料理もおいしかったけどね。でも・・・うう、どれほど生野菜に飢えたことか(T_T)。
 唯一のなぐさめが西瓜で、これは文句なくおいしかった。
 まあ、中国ではあまり生食の習慣がないそうなので、仕方ないんだけど。
 ちなみに、胃弱のわたしはすっかり油負けしておなかを壊した。8日間、毎食中華だったんだよね。あれは、中華のおいしさを堪能するうれしさをすでにはるかに通り越していてつらかった。稀な体験ではあると思うけど。

 さてビュッフェ。生野菜がないならフルーツはどうだ、と思ったが、西瓜以外に生のフルーツはなかった(缶詰ものはあった)。残念。しかし、プルーンのレモン煮を発見。満足。
 せいろに入った小ぶりの包子も発見。中は濃い緑の野菜まん。うん、これはおいしい。やはり土地の物はよい。
 オレンジとグレープフルーツのジュースもあったが、残念なことに100%ではなかった。昨日ローソンに行った時に気付いたのだが、どうも上海ではフルーツの100%ジュースは高いらしい。オレンジの100%ジュースが、500mlで12.2元(約168円)した。わたしが普段買っているのが、1リットルで168円(都内、ダイエーにて調査)だから、上海の方が2倍近く値段が高いことになる。オレンジの市場がまだまだせまいのかな? なんて元商品取引経験者は思う。
 飲むヨーグルトもあった。試す。すごく濃い。サワークリームじゃないだろうな。ううん、わからない。

 さて、話は少し前に戻って、いろいろ料理をお皿にとった後、ふたたび席に着いた時にわかったのだが、壁は止まっているのに床が動いている! テーブルクロスと壁がこすれている!
 そうか、回転レストランか。そんな話を、昨日ガイドの朱さんがしていたような。
 しかし、回転レストランって、床だけがまわるものなんだ。わたしは日本でも、たぶん行ったことがないと思う。覚えがないから。だから、回転レストランは、床も壁も全部回るものかと考えていた。
 ひえー、自分がまわってるのがわかって気持ち悪い。
 後日、別のお客さんが話していたが、このレストランは1時間で一回転するとのこと。
 あと4回、ここで食事をする。しばらくは楽しめそうだ。


■ 上海博物館への道

 今日の予定は、ツアーに付いていた上海滞在中乗り放題の観光バス(錦江観光バス。今回このツアーを選んだ理由のひとつ)を使って、まず上海の主な観光スポットをぐるりと回ってバスの中から眺め、「豫園」でいったん下車。豫園をぶらぶら見た後、小龍包を食べる。その後、またバスに乗って人民広場まで行き、その近くにある「上海博物館」を見学する。以上である。

 やることが少ないように思えるかもしれないが、個人でまわるならこれくらいがちょうどいい、というのはすでに北京で学んでいる。嫌になるくらい、道に迷うんだ、わたしと銀は。

 しかし、食事を終えて部屋に戻ったら、すでに午前8時52分。これから出掛ける準備をしていたら、花園飯店前から9時に出るバスにはちょっと間に合いそうにない。
 ということで、急遽予定変更。地下鉄で「人民広場駅」まで行って、歩いて博物館に行くことにする。個人旅行ならではの気楽さである。

 無事、人民広場駅に到着。なるべく南寄りの改札を出ると、すぐそこに広い道があって、右手に大きな建物が見える。某「地球の歩き方」で地図を確認。うん、確かに博物館は駅に近い。広い、そのきれいな道を建物に向かって歩き始める。
 本当にそこはきれいに整備された道で、車線も多い。わたしたちが歩いている歩道とは反対側の左手には、公園のような広場があり、噴水もある。さらにその向こうには円形の建物があり、上海ドームを昨日見たわたしたちは、「あれは何だろう? やっぱり体育館かな?」なんて推測する。

 しばらく歩いて、建物にたどりついたのだが、博物館かと思っていたその立派な建物には、「人民政府なんとか」という看板がかかっていた。あれ? 違うんだ。
 しかし、その向こうにも白い大きな建物がある。あれが博物館だろう、と目星をつけて同じ道をさらに歩いて行ったのだが、その建物は工事中で、しかも「上海大劇場」というたれ幕が。
 これ以上この道を先に行ってしまうと、どう考えてみても歩きすぎだ。
 しまった。いきなり迷子だ。

 道に迷った時の鉄則、ふりだしに戻る。駅に着いて地図を確認。そしたらなんと、さっきまでずっと左手に見ていた円形の建物が博物館だったのだ。まぬけ〜。
 本当は西蔵中路から行かなければいけないのに、わたしたちは駅からすぐ見えた建物につられて、間違えて人民大道へ行ってしまったのだ。
 ふう。先が思いやられる。


■ 上海博物館

 上海博物館にようやく到着。入り口前には、大きな石膏のような素材でできた狛犬(麒麟とかの神獣の類か?)みたいな像がずらりと並んでいる。みんな、なぜかユーモラスな形。ディズニーのアニメのなかに出てくる恐竜や怪獣みたいだ。中には後ろ足で首を掻いているやつもいる。なんなんじゃ、これは。ディズニーの「ムーラン(花木蘭)」の影響か?

 

 

 博物館内に入ると広々としたロビーがある。カウンターでひとり20元のチケットを買ってゲートの中へ入ると、建物の中央が広場のようになっていて、さらに天井は4階までの吹き抜けになっている。展示室は、この吹き抜けのまわりの回廊に沿って、テーマ別に設けられているというわけだ。
 さっそく青銅器ばかりを集めた展示室に入る。展示室内の第一印象は、サンシャインの古代オリエント博物館みたいな感じ。展示物のほうはと言うと・・おお、すごい。見やすくレイアウトされているし、照明の明るさも申し分ない。 青銅器の時代ごとの模様の解説もあって、ひとつひとつじっくり見ていたらキリがないくらいだ。

 なぜ、こんなことで感動しているかというと、いままでわたしが見てきた中国の博物館(故宮博物館、碑林博物館、敦煌博物館など)というのは、どれも古い建物を利用しているので仕方がないのだけれど、だいたい照明が暗い、あるいは照明そのものがなくて、展示物がよく見えなかったり、ショーケースのガラスの質が悪かったり、ほこりっぽかったり、指紋だらけだったりと、あまりよい印象が残っていないのだ。
 わたしの少ない経験の中では、ここがわたしの中国で初めての現代的な設備が整った博物館ということになる。

 よっしゃ、これは腰をすえて、全館くまなくじっくり見るぞ、なんて最初は思っていたのだが、ガイドブックに載っているように、本当にこの上海博物館は広かった。普段は机の前に座ってばかりの仕事をしているわたしは、最初の青銅器の展示室だけで疲れてしまったほどだ。
※Attention! ちなみに、博物館内にカフェがあって、見学の途中で休憩できるのだが、コーヒー1杯が30元[日本円で約420円]。残念ながら、わたしと銀の中国における物価感では、速攻却下な値段だった)。

 これでは、とても全部見るのは無理、ということで、見たい所だけを見ることにする。わたしと銀は、陶器と書にはそれほど興味がないので(大好きな方、すみません。わたしは書をやっている知人になぜ見て来なかった、とさんざん責められました)2階と3階を省き、1階と4階にある展示室を重点的に見ることにした。


ちなみにこれはちはるが一番気に入った清朝の家具。
こんな写真しかとってこなかった。

 一番よかったのは・・・ううん、甲乙つけがたいけど、やっぱり中国古代彫塑館かな。仏教美術関連のものも多かったし(もともとわたしと銀は仏教美術フリーク)。あんまり何があったかはよく覚えていないけど。
 次点は中国古代玉器館。いやー、ここはよかった。玉を使っていろいろな物が作られているわけなんだけど、とりわけ動物や昆虫をモチーフにしたものがいい。玉で作られた蝉なんて、その単純化されたデザインといい、磨き上げられた玉の表面の質感といい、今の世のどこぞの宝石店で売ってても、全然おかしくないくらい見事なもので、わたしは思わず持ち帰りたくなったくらいだ。
 土産屋でレプリカが売ってたら絶対買おう、と思って探したのだが、結局なかった。残念。

 一番おもしろかったのは、これは文句なく中国歴代銭幣館(^o^)(やっぱり貧乏人ですねえ。もらえるわけでもないのに喜んじゃう)。
 名前は忘れてしまったが、貝のお金(何とか貝)から始まって、色々な時代の、色々な国のお金がところせましと展示されている。ただし、説明書きの国の名前は全部漢字表記で、中にはわからない国のもあったが、よく見ると、金貨に刻まれている王様の名前や肖像から、どこの国のお金がわかることもあった(このあたりは銀が詳しい)。

 そういえば、ちょっと前に日本で話題になった、日本最古のお金かもしれない(確定だったっけ?)という「富本銭」。これの鋳造途中の、プラモデルの部品みたいに軸の両側から枝をのばしてくっついている形のものを、ニュースの映像とかで見たが、これとまったく同じ物がこの展示室内にあった(富本銭ではないけど)。
 後で思い返して、なるほど、お金を作る技術も中国から入ってきたんだなあなどと思った。

 ああ、それと、忘れちゃいけないのが、博物館の入り口にあった後ろ足で首を掻いている神獣の像。
 実はなんとあいつは、観音さまや十二神将に混ざって、きちんと彫塑館に展示されていたのである(もっとずっと小さなサイズだったけど)。
 そう、やつは紛うことなき、由緒正しい形の像だったのだ。無知とはおそろしいものである。

「お前、ほんとは偉かったんだねえ」
 博物館を出る時、何とはなしに、首掻き狛犬に話しかけたわたしたちであった。

 おわり

 

● 今回の教訓 ●

 人も物も、見かけで判断してはならない
 (ごめんね、首掻き狛犬。バカにして)

 

● 今回のおこずかい帳 ●

       地下鉄: 2元
     上海博物館:20元
銭幣館のパンフレット:25元

*今回の小計:47元
*支払い総計:106.6元+74,020円

(※レートは1999年1月で、1元=14円で計算しています)

 

■ 編集後記

 上海博物館リポートはいかがでしたでしょうか?
 本文でも触れましたが、本当に広いところです。青銅期の展示室は、一番最初に見た所でもあったので、ひとつひとつじっくり見ていたら、それだけで1時間かかってしまいました。
 日程に余裕があって、隅から隅まで見たい、という人は、1日まるまる予定を取るか、3時間ずつ2日に分けて来るとかするといいかもしれません。トイレもきれいだし、休憩できるベンチもあるし、ゆっくりはできますね。ケチらなければ、コーヒーも30元で飲めるし。

 あと、本文中では触れませんでしたが、この博物館のパンフレットは、各展示室ごとに本が分かれているので、自分がほしい展示室のものだけ買うことができます。それに、ミュージアム・ショップ(Museum Shop)というのでしょうか? そこは外からも入れるようなので、買い物だけしたい、という人にはお薦めかも。絵はがきや、おもしろそうな本がいっぱい売っています。
 たいへん体力がいりましたが、とても楽しい博物館見学でした。
 それではまた、次号でお会いしましょう。

 


 2日目の1-なぜお前は首を掻いている?/上海博物館の巻

 2日目の2-豫園で小龍包は果たして日本人のノルマか? の巻

 2日目の3-これはパクり?/珈琲館・眞鍋の巻

 2日目の4-コンビニはオアシス、本屋はパラダイス! の巻

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