『上海6日間徒然日記』 1999年1月14日(木)記


第19号

4日目の1-雨の上海は目からウロコが落ちる? の巻

1999年3月23日 発行


■ 雨と上海とわたし

 朝。目覚ましが鳴ったので起きると、いつものように部屋の中が暗かった。 上海に来てからこちら、朝から天気が良かったことがない。

 またくもりか、と思ってカーテンを開けたら、なんと雨だった。
 しまった。傘を持ってこなかったぞ。

 今日の予定は漠然としていて、午後フェリーに乗る前に、豫園で小龍包でもまた食べるか、くらいに考えていたのだが・・・とりあえず傘を買わなきゃ。
 銀も傘を持ってきていないという。レインコートはある、というが、脱いだり着たり面倒だろう、ということで、やはり傘を買うことにした。

 傘ならローソンで買えばいいな、と思いながら、ホテルの部屋の窓から上海の街を見下ろす。さすがに雨の日だ、自転車はそう走っているまい、と思いきやとんでもない。自転車はがんがん走っている。
 当然みんな傘をさして、ではなく、レインコートを着て自転車に乗っているわけだが、そのレインコートの形がおもしろい。

 日本でレインコートといえば、普通のコートと同じく袖があり、前ボタンで閉じるタイプが多いが、上海で雨の日にも自転車に乗っている人たちが着ているレインコートは袖無しのポンチョタイプが多く、しかも前身頃が長くなっていて、自転車のハンドルと前カゴをポンチョですっぽりと覆えるようになっている。
 おお、これは便利。
 まず、荷物を乗せた前カゴが濡れないところがいいなあ。ハンドルを握った手が濡れないのもいい。シートもポンチョで覆ってしまうから、自転車に乗っているうちにシートに雨が染み込む心配もない。
 さすが自転車大国・中国のレインコートだ。合理的にできている。
 日本でも売ればけっこう人気かも、などと考えながら、灰色の空の下、赤や黄色の鮮やかなレインコートに覆われた自転車が行き過ぎるのを見つめる。

 さて、朝食後。
 ローソンに傘を買いに行こう、とホテルを出たところで発見したことがある。

 いつものようにドアマンが開けてくれるガラス扉を通って、雨の降りしきる街へ一歩出た時のことだ。
 妙に目の前がクリアーなことに、わたしも銀も気付いた。
 久しぶりに目のピントがあったような感じなのだ。

 いつもどこか白っぽく煙っていたような景色が、今日はすっきりはっきりくっきりしている。
 ああ、空気が雨に洗われて澄んでいるんだ。

 大気汚染がよく問題になる上海。初日は空気のいがらっぽさにまいったような記憶があるが、いつの間にやら気にならなくなっていた。
 しかし、今日雨が降って、空気が雨に洗われたことによって、そのことを改めて認識させられた。

 初めて肉眼で上海を見るような、あるいはようやく目の覚めたような不思議な気分。
 雨の降る上海は、初めてわたしたちが訪れる中国のもうひとつの街だった。


■ 錦江観光バスに乗る人々

 街中で突然雨に降られたら?
 もちろん日本ではコンビニに直行だ。500円も出せば透明なビニール傘が買えるだろう。

 そんな日本の常識をひっさげて、わたしと銀は大粒の雨が容赦なく降りしきる瑞金一路をローソン目指してひた走った。そしてようやく店内に駆け込んだものの・・・傘がないっ! えー、コンビニなのに?  日本のコンビニと酷似した品揃えに油断したわたしたちが甘かった。そうか、中国のコンビニには傘はないのか。
※Attention! 瑞金一路のローソンだけかもしれません。他の店は見なかったので、ちょっとわからないです)

 豫園で小龍包を食べるにしても、傘なしで歩き回るのはちょっとつらい。しかし、近くで傘を売っているところなんて、ちょっと見当がつかない。
 どうしようか、とちょっと迷ったがすぐにひらめいた。
 ツアーに付いていた乗り放題の観光バスに乗って、ヤオハンに行けばいいじゃん。

 確かツアーに付いていた錦江観光バスは、本来泊まる予定だった錦江飯店近くのバス停から出発し、人民広場、東方明珠、そしてヤオハンに停車するはず。
 まだ全然浦東地区には行ってないし、ちょうどいいから行ってみよう、ということになった。
 現在時刻は9時40分過ぎ。10時発のバスにまだ余裕で間に合う。よし、それで行こう。

 ところが、バスは実際には9時45分発だった。朝のあわただしい時間帯は、1時間おきではなく45分おきに出発するのだ。
 げげ、そんなとこまで注意して見ていなかったよー。
 バス停に到着したのは9時50分。すでに45分発のバスは行ってしまった後だった。ひえー、次の発車まで40分もある。
 しかし幸いなことに、次のバスはもうバス停に来ていた。雨の中を傘なしで歩き回るのは面倒くさい、と話はまとまり、おとなしくバスの中で次の発車を待つことにする。

 出発駅である錦江飯店前バス停では、わたしたち以外に乗客はいなかった。
 こんなにがらがらの車内で並んで座ることもなかろう、と前後2列に分かれて座を占める。
 客が少ないせいか、そんなのおかまいなしなのか、バスの運転手の趣味らしき中国ポップスが大音量で車内に流れている。最初は耳に痛いほどだったので、小さくしてくれ、と文句を言おうと思ったが、乗りたかったバスに乗り遅れたショックが強く、それどころではなかった。

 そして10時30分。定刻どおりにバスは出発した。
 どこぞの道から高架に入り、おととい苦労して歩いた道々をあっという間に通り過ぎていく。あ、「眞鍋」の看板が見える。ということは、黄浦江が近いということか。一方通行とかの制限のためか、バスはかなり遠回りして運行しているようだ。
 まずめざすのは人民広場。あれだけ苦労した上海博物館前近くのバス停にバスは停まった。むう。なんか腹立つな。

 乗ってくる客なんてほとんどいないだろう、と思っていたのだが、ところがどっこい、人民広場から大量の観光客が乗り込んできた。
 男性ばかり5〜6人ほどの団体が一組と、高校生くらいの息子さんを連れた親子3人が一組。大きな荷物をかかえた男女ペアが一組ほど。全員中国人だ。
 ふうん、このバス、外国人用というわけでなく、本当にただの巡回観光バスなんだな。

 男性ばかりの団体客は、こう言ってはなんだが、明らかに田舎から上海を観光に来た人々のようだった。ひとりの男性がいきなりビニール袋から果物のキウイを取出すと、連れの仲間に次々と手渡し、みんなでむしゃむしゃと食べ始めたのだ。
 ううん、日本の「はとバス」(東京では有名な定期観光バスです)でもこんなものかな? 公共の乗り物の中で物を食べる習慣のないわたしと銀は、目を丸くして見てしまったけど。

 その他にもこの男性の団体、車内にもかかわらず大声でわいわいと騒ぎ、その前の座席に座っていた親子3人連れの母親に、嫌そうな顔でにらまれていた(本当に嫌そうだった!)。まあ、楽しい気持ちはわかるけどね。

 一方の親子3人連れは、いずれもきちんとした服装をしていて、いかにも品の良いご家庭、といった雰囲気だった。
 驚くべきはそのご家族が話す普通語の発音で、このわたしにもはっきりと聞き取れるほど明瞭だったのだ。
 上海に来てからすっかり听力(ヒアリング能力)に自信をなくしていたわたしだが、なんだ、やっぱり聞き取れるんじゃん、とちょっとにんまりしてみたりして。
 でも結局、話す速度が速くて内容は全然わからなかった。ピンインは聞き取れるのに、意味が全然わからん。まだまだ勉強不足だ。

 やがてバスはトンネルをくぐって浦東へ。団体さんと親子連れは次の停車駅の東方明珠で降りた。ちなみに東方明珠の入場料は40〜90元(約560円〜1,260円)。なんで値段に開きがあるんだろう?
 東京の東京タワーは、料金が2段階制になっていて、最初の料金で途中の展望台まで、一番上の展望台まで行きたかったらさらに追加料金を払うようになっている。
 あれはなんか嫌だね。どうせ登るなら、たいていの人は一番上まで行きたいんだからさ、最初から一番上の展望台までの料金を取ってくれればいいのに。まるで一番上まで行かなかった人は、ケチか貧乏人みたいではないか。
 そういうわたしは、途中の展望台までしか行かなかったケチな貧乏人だけど(高校生の頃の話です)。

 午前11時15分くらい。ほぼ5分遅れで第一八佰伴バス停に到着。
 席を立とうとすると、銀が足元に気をつけろ、と言う。なんで? と足元を見ると、なんと通路にキウイの皮が散乱していた。そうか、あの男の人たち、キウイを食べる時に皮をむいて、それをバスの通路に捨てていたのか。それで、あのご婦人ににらまれていたわけね。納得。
 しかしなあ。バスの中にむいた果物の皮を捨てるかね、普通。

 バスを降りると、そこはヤオハンの向かい、タイムズスクエアだった。
 さて、これから傘を買うわけだが、わたしと銀のお決まりどおり、そうそう順調にことは運ばないのである。

 おわり

 

● 今回の教訓 ●

 雨の街には新しい発見がある

 

● 今回のおこずかい帳 ●

今回はなし

*今回の小計:0元
*支払い総計:475.6元+74,020円

(※レートは1999年1月で、1元=14円で計算しています)

 

■ 編集後記

 雨の上海の街リポートでした。
 外国で雨に降られるなんて久しぶりだなあ、と現地では思っていたのですが、よくよく考えるとそんなことは全然ありませんでした。1年ほど前に行ったサイパンでは12月にもかかわらず台風が来て、帰りの飛行機が飛ばなかったというアクシデントがありましたからね。雨が降っても街中を歩けただけ、上海の雨はやさしかったです。

 それではまた、明日お会いしましょう。

 


 4日目の1-雨の上海は目からウロコが落ちる? の巻

 4日目の2-ヤオハンでタイムスリップ・3枚伝票の巻

 4日目の3-長江をめざせ!/黄浦江遊覧フェリーの巻

 4日目の4-肉焼売はなぜ「肉」焼売というか、君は知っているか? の巻

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