●:=: Angkor 5 days :=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=:=○

     ア ン コ ー ル 5 日 間 ★ 徒 然 日 記

 第8号 2日目の3――バイヨン寺院は目をこらして見るべし の巻

                        発行責任者 ちはる
                        2001.8.28  発行
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§--< Attention! >-------------------------------------------------§
▼この日記は、ちはるが実際にアンコール・ワットのある町、シェムリアッ
 プでつけていた日記をもとに、加筆、修正、再構成したものです。
▼もしかしたら文中に、不適当な発言、あるいは間違った記述があるかもし
 れません。その場合はどうぞ容赦なくご指摘ください。ただし、旅の折々
 で胸の内に生じた感情については、あえてそのまま書いている場合もあり
 ます。どうぞご了承ください。
§------------------------------------------------------------------§

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《2001年5月28日−3》

■ バイヨン寺院へ

 アンコール・トム[Angkor Thom]の南大門を見学した後、次は車に乗ってバ
イヨン[Bayon]寺院に向かうという。

 車は南大門近くの空き地(といっても周囲は空き地だらけだが)に停めてあっ
た。そのすぐ近くには木造の外枠に椰子の葉で屋根をふいたほったて小屋のよう
なお土産屋さんの屋台が並んでいる。

 それを見た瞬間、イヤな予感がしたが、予感はずばり的中した。
 わたしたちの姿を見たとたん、お土産屋さんのセールス攻撃が始まったのだ。

 小さな子供だけでなく大人たちも手に手に商品を持って、わーっとこちらへ
向かってくる。
 ひえー、勘弁してくれ。わたしゃこういうの苦手なんだ。

 こういう時、中国でもそうだったが、現地ガイドの人が助けてくれることは
まずない。こちらも心得ているので、さっさと車に乗り込む。そうすればたい
ていそれ以上追いかけられることはない。中国では1度だけ、観光バスにまで
乗り込んできた人がいて、大騒ぎになったことがあるが。

 車が走りだし、お土産攻撃から遠ざかることができてほっとする。
 こういう情況を楽しめる人もいるようだが、わたしは楽しむどころか、いつ
までたっても慣れることすらできない。
 ふう、疲れる。

 南大門からバイヨン寺院までは1本道である。道の左右には相変わらず背の
高い木の森が続いていたが、ふと見たらサルが数匹かいた。
 へえ、野生のサルもいるのか。

 アンコール遺跡郡では色々な動物を見たが、サルは林の中でよく見かけた。
 さすがにサルも暑いらしく、水溜まりで水浴びをして遊んでいた。

 1本道をしばらく行くと、目の前の突き当たりに、巨大な奇岩が立ち並んで
いるような、黒っぽい小さな山のようなものが現われた。まるで、中国の石林
や秩父の昇仙峡を小さく箱庭にしたような眺めだ。

 おお〜、これがバイヨン寺院か。

 バイヨン寺院はアンコール・トムの中心をなす建物で、シェムリアップ
[Siem Reap]の町から来る途中に見たアンコール小児病院の上に乗っている
頭像の人物、ジャヤヴァルマン7世の建造である。

 ▼‥‥‥‥‥‥‥‥‥《バイヨン寺院周辺概略図》‥‥‥‥‥‥‥‥‥▼

                              北
           ┌―┐ ||↑北大門へ        ↑
           | | ||             ┼
           | | ||             |
           | | ||
     王のテラス→| | |└―――――――――――
           | | |┌―――――――――――
           | | ||     →勝利の門へ
           | | ||
     象のテラス→| | ||
           | | ||
           └―┘ ||
     ┌――┐      ||
     |┌┐|←バプオン ||
     |└┘|      ||
     └――┘      ||
            ┌――┘└――┐
    ←西大門へ   |┌――――┐|  →死者の門へ
    ――――――――┘|バイヨン|└――――――――
    ――――――――┐| 寺院 |┌――――――――
            |└――――┘|↑ 
            └――┐┌――┘↑
               || →→
               ||↑
               ||↑ちはるたちの進路
               ||↑
          南大門へ↓||↑

 ※アンコール・トムには5つの門がある。

 ▲‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥▲

 車はバイヨン寺院に行き当たると右折し、バイヨン寺院の東側に出で車をと
めた。そして車をとめたところには、今度は大きな象が4頭いた。
 おー、象だ象だ。

 動物園で象を見てもちっともおもしろくないが、森の木陰に立つ象は、見る
となんとなくわくわくするから不思議。
 背中にじゅうたんなどをかけられ、乗客を待っているようだった。

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■ バイヨン寺院

 さて、9時22分、バイヨン寺院観光開始。
 バイヨン寺院は東を向いて建っている。

 その東へと続く道を指して、「これは『死者の門』に通じる道」とKさんは
言った。そして「勝利の門」は王のテラスへ続いているそうだ。

 戦争で死んだ人はバイヨン寺院へ、生き残って勝利した人は王のテラスへ。
 うむ、よくできている。

 バイヨン寺院に近付くとお線香のにおいがした。ああ、形は全然違うが、ア
ジアの寺だな、と思う。

 実際、お供えされているお線香は中国産だそうな。後で見てみたら、ホント
に中国でよく見るマゼンダ色の柄の長いお線香だった。

 バイヨン寺院は、建物自体は石だけでできている。そのせいか、とっても硬
質な感じがする。
 正面から入っていくと、足元は横長の大きな石を使った石畳になっている。
もっとも、風雨にさらされて表面はなめらかでなく、かなりでこぼこしていた。

 寺院というが、ずいぶんオープンというか、ストーン・ヘンジのような巨石
を並べただけの遺跡みたいな感じだな、と思っていたが、これは寺院の外周を
とりまく回廊の屋根がすべて落ちて、柱と壁しか残らなかったかららしい。
 ああ、なるほど。屋根がないから建物って感じがしないんだな。

 柱には赤い塗料が残っていて、昔は赤く塗られていたのかな? と思わされ
た。

 Kさんに案内されてレリーフを見てまわる。
 バイヨン寺院の第1回廊のレリーフは、上段・中段・下段と上から下へ3つ
の層に分かれていて、それぞれ遠景、中景、近景をあらわしているそうな。

 まず見たのは、第1回廊東壁のレリーフ。
 チャンパ軍(現ベトナム)との戦いにおけるクメール軍(現カンボジア)の
行進の様子が彫りこまれている。
 これは、1177年にアンコールの都が一時チャンパに占領され、その後
1181年に王都を奪還した時の戦争の様子を描いているとのこと。

 歩いて行進する人、象に乗っている人。リヤカーのようなものをひいている
のは、戦争に行く兵士についていく家族だそうな。へえ、家族同行で戦争か。

 ほほう、と思って見ていると、兵士の中に時代劇の中に出てくる中国人のよ
うに髪をひとまとめにくくっている人々がいる。「これは中国人」とKさんが
言う。
 昔のカンボジアは中国と仲が良かったので、戦争の時に中国人が援軍として
来てくれたのだそうな。

 ふうん、そんな大昔から交流があったのか。まあ、地続きだもんな。

 第1回廊南壁には、1段櫂座という底の浅いオールで漕ぐ舟に乗ったクメー
ル軍とチャンパ軍の戦闘シーンが描かれている。
 舟から落ちた人は、ワニに食われてしまっていた。
 ふうん、カンボジア、ワニがいるのか。
 川の中の生き物としては、その他にカメや各種魚が彫り込まれていた。

 「レリーフの中で、耳が大きな福耳をしているのはカンボジア人、そうでな
いのは外国人。普通の耳でひとつに髪を結っているのは中国人」とKさんが見
分け方を教えてくれる。
 その言葉どおり、チャンパ軍の兵士は福耳でなく、普通の耳だった。

 また、大昔から中国人はカンボジアで商売もしていたそうで、あるレリーフ
部分を指して、「これは中国人が経営するレストランのレリーフ。中国人は商
売上手だから、今でもカンボジアでもうかっているレストランは、たいてい華
僑が経営しています」とKさんが言っていた。ホントか?

 その他見たもので印象に残っているのは、下段に描かれた庶民の生活のレ
リーフ。酒壷からストローでお酒を飲む様子とか、出産、闘鶏、闘犬、投網、
天秤、相撲、将棋など。魚を焼いたり猪を煮たり、それを一緒に食べる様子も
レリーフになっていた。
 また、このバイヨン寺院を造る様子も描かれていたと思う。寺院を造る人の
汗を拭く人や、バナナの葉の傘をさしかける人がいた。

 南門にある階段をのぼって第2回廊に行く。
 途中、すごく天井の高い建物があった。湿気がこもるのか、南大門の時のよ
うに水がくさったような匂いがする。

 この建物内にはレリーフはあまりないらしく、ほとんど素通り。だが、壁を
見ると仏像はないが仏がんがある。どうも後世に入ってきた異教徒に破壊され
たらしい。

 ああ、どこに行っても時代が違っても、こういうことってあるんだな、とこ
の時はまだ記憶に新しかったバーミヤンの磨崖仏破壊を思い出しながら考える。

 すごく急な階段をのぼってさらに上へ。さすがに急すぎるので、板で補助階
段が造られていたりした。

 そしてのぼったところが、バイヨン寺院の一番高いところ。大きな岩のよう
な塔が林立し、まるで迷宮のようになっていて見通しは悪い。

 「たくさん菩薩の顔があります」とKさんに周囲を指差しながら言われてい
まさら気付いたのだが、おおっ、なんじゃ、こりゃ?

 よく目をこらして周囲を見渡すと、いままで表面がでこぼこした巨大な奇岩
みたいだと思っていたものは、すべて彫刻をほどこされた塔であり、その頂上
部分四方には、南大門でも見た巨大な菩薩の尊顔が彫刻されているではないかっ!

 わー、すげー。
 観世音菩薩の顔・顔・顔。

 菩薩の顔がぐるりと周囲から覆いかぶさってくるようなこの場所は、まるで
別世界のようである。

 なるほど、バイヨン寺院は須弥山を模しているというが、それもうなずける
ような光景だ。

 この後はしばらく自由時間。マダムとふたり、聳え立つ塔の間を縫うように
して歩く。
 いくつかの塔の中では線香がたかれていて、占い師のような老婆がいた。
 手招きされたけど、ボラれたりしたらこわいので行かなかった。

 菩薩の尊顔以外にも、ガルーダやデヴァター(女神)、アプサラなどのレ
リーフなどもある。

 そういや、日本人には「アプサラ」ではなく「飛天」とか「天女」とか説明
されていたかな?

 しかし、敦煌の飛天もそうだが、飛天は飛天であり女性ではない。
 敦煌の莫高窟で飛天を見て、「えー、女性じゃないんですか?」とものすご
くがっかりしていた男性がいたのを何となく思い出す。

 他の塔では、オレンジ色の衣を着たお坊さんがくつろいでいた。
 はて、カンボジアの僧侶の修行は厳しいと聞いたが、こんなところをほっつ
き歩いてていいのだろうか?

 わたしたちも塔の中に腰をかけて一休み。

 暗い塔の中から、窓に四角く切り取られた外を見ると、光の中で観世音菩薩
は目を閉じて白く微笑んでいた。

                               おわり

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■ 編集後記

 はい、バイヨン寺院リポートでした。

 ここは、アンコール・ワットの次くらいに有名なところでしょうか?
 いま思い直すと、第1回廊の西壁と北壁のレリーフは見ていないんですね。
 第2回廊もそれほど詳しくレリーフを見た記憶があまりないです。

 まあ、ここはそんなに詳しく見ずとも、菩薩の尊顔に囲まれて一時の別世界
を味わえればいいのかな?
 
 でも、本文中には書きませんでしたが、すごく暑かったような気がするな〜
 暑さのあまり、違う意味で別世界に行かないように(笑)。

 それではまた次号でお会いしましょう。

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