『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月7日(水)記


 
第4号


1日目の4――やっぱ夏はこれでしょう♪/韓国産ビールの巻

1999年9月2日(木)発行

 

■ セブン・イレブン


 部屋の中の設備を一通り点検し、荷物を片付けたらもう6時近くになっていた。いかん。そろそろユンさんに電話しなきゃ。

 今回の旅行では、わたしはさんざんひとり旅、ひとり旅と言ってきたが、実はソウルに韓国人のメールフレンドがいるのだった。
 で、この度わたしがソウルを訪れることになったので、それでは会いましょうと約束していたのだ。

 日本国内ではメールで知り合った人たちと何度かオフ会をしたことのあるわたしだが、外国では初の経験である。けっこうドキドキしながら、部屋の電話のプッシュホンを押す。日本の「ルルルルル」とは違う、韓国独特の「ツー、ツー」という呼び出し音を聞いて待つことしばし。やがて「ヨボセヨ(もしもし)?」の声。ああ、つながった。よかったー。

 なんて話しかけよう、と瞬間悩んだのだが、ちはる、もういきなり日本語で「こんにちは」と切り出す。さいわいユンさんもすぐにわたしとわかってくれたらしく、6時50分にホテル前で待ち合わせの約束をして、電話をいったん切る。

 さて、時間に目安がついたところで、外に飲み物でも買いに行くか。
 ちなみにYMCAホテルの部屋には、冷蔵庫はあったが中は空っぼだった。まあ、こんな安いホテルに泊まって、高い飲み物を飲む人なんて、普通いないだろう。いっそまったくない方が、潔くて気持ちいい。

 貴重品の入ったバッグを持って部屋を出て、エレベーターを待つ。
 エレベーター・ホールには大きな曇りガラスのはまった窓がある。下の方が少しだけ開いていたのでのぞきこむと、ごちゃごちゃとした、いかにも繁華街裏の下町、といった風情の街並が見える。

 エレベーターを待つ間、ハングル読解練習にいそしむ。
 「ソ……ファ……キ」。子音のKは語中にあるとG音に変わるから(※今日の韓国語参照)「ソファギ」かな? こりゃあ、そのすぐ下に消火器がおいてあるから、間違いなく消火器の韓国語読みだろう。
 ふうん。感触としては、日本語の音読みとけっこう近いものあるんだなあ。

 エレベーターの扉の上の方には小さな棚が作り付けられており、赤く塗ったボーリングのピンが2本置いてある。
 む。これは何かのテレビで見たことがあるぞ。火の中に手で投げ込むタイプの消火器ではなかっただろうか?
 日本にもあるんだったかな? ちょっと覚えていない。

 ところでこのYMCAホテル、7Fのエレベーターホール前に「自遠方」という名前がついた会議室がある。
 「ズー ユエンファン[zi yuanfang]か・・・」と最初見た時は読んだだけで、特に気にも留めず見流してしまったが、しかしよく考えてみれば「有朋自遠方来、不亦楽乎」[朋有り遠方自(よ)り来たる、亦(ま)た楽しからずや]という『論語』の一番最初の一節なのだった。
 さすが、儒教の国らしいネーミングである。
※Attention! 「ズー ユエンファン」は中国語読みです。韓国語では「チャウォンバン」と読むそうです)

 1階に降りて、ホテルのすぐ下にあったセブン・イレブンに行ってみる。
 さあ、韓国で初のコンビニ探険だ、と思ってわくわくして行ったのだけれど・・・せ、狭い。東京の都心のオフィス街のすき間にあるようなコンビニよりも狭いぞ、ここ。何しろ、通路に人がふたりいたら、すれ違うことができないのだ。仕方ないからゆずった方が通路を後戻りする、という有様で、残念ながらゆっくり商品を眺めることができなかった。
※Attention! ここのセブン・イレブンは特に狭かったようです。他のお店はそんなことありませんでした)

 それでも、外国に来たらまずこれでしょう、ということで缶ビールを2本入手。OB Lager(オービー・ラガー)とHITE(ハイト)という韓国銘柄の350ml缶である。双方ともにW1,600(約172円)。
 日本の一般的な缶ビールは、コンビニで220円で売っているから、だいたい4分の3位の値段か。

 


右がOB Lager、左がHITE

 

 中国の青島(チンタオ)ビールなんかは、わたしにはビール自体の味が薄めで甘い感じがするけど(あれはあれで好きだが)、このOBとHITEは味がしっかりしていて、いかにも麦とHOPのお酒、という感じでなかなかおいしい。まあ、ふたつの味の違いがわかるほど、わたしは酒飲みじゃないけど。

 ソフトドリンクも買わなきゃ、と飲み物の棚を見回すと、左下の方にジルロ[真露]のビンを大量に発見。
 あ、これ、映画「カンウォンド[江原道:Kanhwondo]の力」の中でさんざんっぱら出てきたジルロのビンだ。

 今年の5月末くらいから2週間ほど、東京・渋谷のある映画館で、「韓国新世代映画祭 ’99」というのが開催されたのだが(大阪でもやってた)、そこで見た映画の一本が「カンウォンドの力」だった。
 物語は、ふたりの男女のこころの葛藤を、前半後半に分けてそれぞれひとりずつ描き出すという文芸作品的な内容で、普段娯楽映画しか見ていないわたしにはちょっと難しかった(^ ^;)。

 しかし、この映画を見るまでわたしは知らなかったが、カンウォンドのソラクサン[雪岳山:Solaksan]やオデサン[五台山:Odesan]、カンヌン[江陵:Kangnung]は、韓国東北部最大の景勝地なのだそうで、確かに映画を見ていると、内容そっちのけで「行ってみたいっ!」と思わせる美しい風景の連続だった。

 特に海沿いの街(カンヌンかな?)の店で、海を見ながら刺身を食べるシーンなんぞは、日本人にはたまらなく魅力的なのではなかろうか?

 とまあ、映画の内容とは直接関係のないことにばかりについ目が行ってしまったのだけれど(つまらなかったわけではない)、このビンのジルロもそのひとつだった(HITEもよく出てきた)。
 大きさは、日本で売られているハンディ・サイズのビールビン(ほぼ350ml)くらいだろうか。ビンの色は緑で、種類が違うのか、中身が白っぽく見えるものと黒っぽく見えるものがある。

 ジルロって、本場ではいくらなんだろう、と思って見ると、W950となっている。
 950ウォンというと・・・ええっ!? 日本円でだいたい100円くらいじゃん(正確には約102円)。
 うっそー、なんで? ビールよりだんぜん安いよ。
 日本とは酒税のかかる率が違うのか?
※Attention! 後でユンさんに聞きましたが、韓国では焼酎の方が安いのは当たり前だそうです。ちなみに、アルコール度数25%のジルロは、うちの近所のコンビニで、375mlビンで460円、700mlのビンで837円でした。ソウルの4倍くらいの値段ですね(^ ^;)。アルコール度数の違いとかあるのかな?)

 軽いショックを受けつつも、その他にポカリスエットの500mlペットボトル(W1,200:約129円)、モリナガのカフェ・ラテに形も味もよく似ているコーヒー(W1,000:約108円)を購入。
 ポカリの500mlもカフェ・ラテも、日本のコンビニで買うと130円くらいだから、ビールは日本よりもかなり割安な感じがするけど、その他はそうでもない。

 飲み物ばかり4本を手に抱えてレジに行く。中国と違って、久々にまったく言葉の通じない国での買い物である。数字はレジに表示されるからよいとしても、何かあったらどうしよう、と緊張しながらカウンターに品物を置く。
 合計W5,400(約580円)。韓国では日本の消費税のように、レジで加算される税金はないので、商品の個々の値段を合計した通りだ。

 お金を払い終えておつりももらって、ほっとしたのも束の間、どういうわけか品物を袋に入れてくれない。
 え、何で? すぐそこにいる買い物を終えた女性は、袋に入れてもらってたじゃん。

 レジの若い男性が、どうやら韓国語で袋をくれない理由を説明してくれているようなのだが、もちろんわかるはずもない。まあ、何か理由があるらしいのはわかるので、あきらめて手持ちのバッグに入れて店を出る。
 大きなカバンで近くから来ていたからいいようなものの、手ぶらで遠くから来ていたら、めちゃくちゃ困るんじゃないかなあ、これ。
※Attention! この件の理由は、あとでユンさんに聞きました。次号で説明します)

 何となく割り切れない気持ちを抱きつつも部屋に戻る。

 初めての、しかもツアーでなくやって来た言葉の通じない国。
 こりゃあ、なかなか大変かも、とこの時ふと思った。

                                おわり

 

 今回の韓国語  

語頭と語中で発音が変わる子音


 ハングルの子音で、アルファベットで[k、t、p、ch]と表されるものに関しては、語頭では清音、語中では濁音(のような感じの音)で発音されます。
 対応としては、アルファベットで書くと、[k→g、t→d、p→b、ch→j]となります。

 例えば、今回本文中にも出てきた韓国の地名の「江原道:カンウォンド」の「カン」と、ソウル市内を流れている有名な川「漢江:ハンガン」の「ガン」は、読みは違いますが、実際にハングルを見ると、同じ文字で表記されています(基本的に同じ漢字=同じハングル)。

 また、日本では一般に「ビビンバ」と呼ばれている韓国の混ぜご飯は、ハングルを1音ずつアルファベット表記すると[pi‐pim‐pap]となり、3文字すべて同じ子音が使われています。
 でも、[p]は語中で[b]となる、ということを思い出しながら読むと、[pi‐bim‐bap]と変化することになります。だから、ハングルを多少読めるようになった今では、「ピビンバ」と呼んだほうが正しいのかなあ、なんて思ったりします(たまにそういう表記をしているお店もある)。

 語頭と語中で読み方が違うなんて面倒臭いなあ、と初めて知った時は思いましたが、考えてみれば日本語でも同じようなことはやっているんですよね。

 例えば[k]でいうと、「瓦(かわら)」という言葉は語中にくると、「鬼瓦(おにがわら)」、「軒丸瓦(のきまるがわら)」に、「靴(くつ)」も「革靴(かわぐつ)」、「長靴(ながぐつ)」になったりします。

 また、韓国語で[p]で始まる言葉は、日本語では[h(f)]で始まることが多いので、そうやって考えてみると「袋(ふくろ)」という言葉も、「福袋(ふくぶくろ)」や「紙袋(かみぶくろ」になるし、「塀(へい)」も「板塀(いたべい)」、「土塀(どべい)」となります。

 もう、無意識レベルで濁音にしてしまっているんですね。

 そうそう、うっかり濁音なんて書いてしまいましたが、韓国語に濁音はないそうです。日本人としては難しいですよね。逆に、韓国人の方が濁音を発音するのは難しいようです。

 ちなみに中国語にも、正確には日本語で言うところの濁音はないそうです。難しい(というより面倒臭い)ので、わたしなんかは濁音で発音してしまいますが。まあ、通じれば何でもOKでしょう(と逃げる。だから上達しないのか? え? そんなこと関係ない? そのほうが悲しいのでは・・・(T_T))。

※このコーナーは不定期です。

 

 今回のおこづかい帳  


    HITE:W1,600
OB Lager:W1,600
 ポカリスエット:W1,200
    コーヒー:W1,000

今回の小計:W5000
支払い総計:W6,000(約645円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 


 はい、今回はセブン・イレブン飲み物特集(?)でした。
 しかしそれにしても、あのジルロの安さには驚きました。
 昔、初めて成田空港の免税店で国産ウィスキーが半値とかで売られているのを見た時にも、「ああ、日本の酒って半分以上が税金でできているんだ」と感じましたが(特に酒税がまだ高い頃だった)、今回久々にそれをまた感じましたね。
 まあ、いまではお酒の安売りの店が増えましたので、免税店で買うよりも国内の量販店で買った方が安くなりましたけど。

 それではまた次号でお会いしましょう。

 


1日目の1――出発っ! はじめてのおつかい、ならぬ
                    はじめての海外ひとり旅の巻

1日目の2――何ごとっ!? 地下鉄車内で大演説! の巻

1日目の3――DDRでブチ切レ?/初めて見たソウルの巻

1日目の4――やっぱ夏はこれでしょう♪/韓国産ビールの巻

1日目の5――伝統茶院でくつろぎの一服の巻

1日目の6――そりゃあ早すぎるんでないかい?/ソウルで映画を の巻

2日目

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