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第5号 | |
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1日目の5――伝統茶院でくつろぎの一服の巻 | |
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■ インサドン[仁寺洞:Insadong] | |
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6時40分。エレベーターの待時間などを考慮して、待ち合わせの時間10分前に部屋を出る。 YMCAホテルの鍵は、アクリルの四角いスティック(棒)に鍵がついているという、昔なつかしいタイプのものだった。 エレベーターで1階に降りる。 若者たちであふれかえる入り口付近を見渡したが、それらしい人は見当らない。 わたしの第一声は何だったっけかな? ちょっと覚えていない。 メールでしかやりとりをしたことがなかったけど、ユンさんはわたしが想像していた通り、物静かな印象の、若々しい人だった(実際にお若いです)。やはり、行間から人格ってにじみ出るものなんだなあ。 特に「だめ」って言われなかったから紹介していいんだと思うんだけど、このユンさんとは、わたしのソウル旅日記などを読んで下さっているみなさんのことだからご存じかもしれないが、「まぐまぐ」から「韓国、何でもQ&A」というメールマガジンを発行していらっしゃるユン・ドクジュウさんのことである。 ユンさんのメールマガジンを読んで、わたしがメールを送ったのが知り合ったきっかけだった。 インサドン。ああ、確かにホテルから近かったはずだ。 そしてわたしはさっきから疑問でしょうがなかった、セブン・イレブンで袋をくれなかったことを訊(き)いてみた。 もう一度説明してもらうと、なんと韓国では今年の3月から、環境保護のために10平方メートル以上の店舗では使い捨てのビニール袋をタダでくれなくなったそうなのだ。 あー、そうだったんだ。 納得がいって、ちょっとホッとする。 しかしそれならそれで、レジにその旨のお知らせを出して置かないと、多くの外国人は戸惑うのではなかろうか? さて、道はネオンまばゆい路地へと入っていく。めちゃくちゃ下町、超地元Deepって感じだ。間口の狭い小さな居酒屋や食堂が、人ふたりがすれ違うのがようやっと、というような細い道に向かい合ってひしめきあっている。 本当にいいのかな、ここ通って、と思ってたら、バルルンと向こうからやってきた、配達途中のHONDAのカブみたいなバイクが、この狭い部分を無理矢理すりぬけて行った。 いくつか角を曲がってその細い路地を抜けると、今度は左右1車線ずつの、人の多いにぎやかな通りに出た。ここがインサドンのメインストリートだそうだ。 お店は焼き物を売っているところが多くて、薄い翡翠色をした陶器の湯呑みや花瓶などが、店先にずらりと並べられていた。その他にも、明るいマゼンダやイエロー、黄緑色などの色鮮やかな紙で作られた、うちわやレター・セット(letter set)も目に付く。和紙のような風合いを感じたが、ここは韓国なので当然名前は「韓紙」となる。 「近くに美術館もあるお土産屋さんがあるから行ってみましょうか」とユンさん。へー、そんな店があるんだ。 お店の名前はトンイン[通仁:Tong‐In]というそうな。1階はお土産やさんになっていて、きれいに陶器の器や工芸品が展示されている。 あっ! ほしいと思ってた湯呑み発見っ! 実は、去年の夏と今年の冬と2度中国に行ったくせに、中国では茶こし付きの湯呑みがついに手に入らなかったのだ(横浜の中華街で売っているが、あんな高いもの、絶対わたしは買わん←ケチ)。 日本にも蓋付きの湯呑みはあるけれど、蓋も陶器でできていて、さらに茶こしまでついているものはなかなか見つからない。 しかし、今回ソウルに行くことを決めた後、ガイドブックを見ていたら、韓国にも蓋付き、茶こし付きの湯呑みがお土産紹介のページに載っていたので、絶対買おうと決めていたのだ。 いったい、いくらくらいする物なんだろう、と値札を見る。 落ち着け、落ち着け。これはウォンだ。ゼロを一個とって考えろ。 思わず買いたくなったが、待て、初日にお土産を買ってどうする、と自分を戒める。他の店にもっと良いものがあったら、ここで買ったことを後悔するじゃないか。 他のものもざっと見てから、ギャラリー(gallery)を見に行くことにする。 閉店では仕方がない。あきらめて外に出る。
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■ チョントン・ダウォン[伝統茶院:Chont’ong‐dawon] | |
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ユンさんがふと、「伝統茶院に行きたいの?」とガイドブックを見ながら言う。え? と思ってガイドブックを見たら、地図に丸がついていた。 そうだ、伝統茶院は行ってみたかったので、地図に丸をつけておいたんだっけ。 「伝統茶院には美術館も併設されているんですよ」とユンさん。学生時代によく行っていたそうな。でも、「私、方向音痴なんです」と地図をじっくり見ていた。 確かにこの通りは、古いものと新しいものがごっちゃに混ざったような雰囲気だった。京都の清水などの観光地のように、本当に古いものもあれば、古い伝統的な形式を保ちながら、実は中は新しい、というようなところもある。 何度か道を確認するために立ち止まったけれど、迷うことなく伝統茶院に到着。看板にも漢字で「伝統茶院」と書いてある。 しかしユンさんが、「私が来ていた頃と全然違う・・・」とつぶやく。昔は美術館の奥にお茶を飲めるスペースがあったそうなのだ。 だが、いまでは美術館(無料)とお茶を飲める喫茶部分は別棟になってしまっていて、必ずしも展示を眺める必要はない。 まあ、何はともあれお茶を飲もうと、古い家屋を改造したらしいお店の中に入る。入り口のある側の壁は、地面から30cmくらいの所から天井までの大きなガラス窓になっていて、中庭を眺めながらお茶を飲める。わたしたちはその窓際の席に座った。 椅子に座ると、テーブルは膝くらいの高さで、大きな木の切り株をそのままテーブルにしているようだ。上にはガラスの天板がのっているのだが、テーブルと天板の間には、色とりどりの無数の紙片がびっしりとはさまっている。紙にはメッセージのようなものがハングルで書かれていて、この店を訪れたお客さんたちが、記念に残していっているらしい。 「何、飲みます?」とユンさんに訊かれたので、「冷たいものは何がありますか?」とたずねてみると、「じゃあ、スジョングァにしてみましょうか」との答え。 漢字では「水正果」と書く。だが、どんなお茶かまでは詳しく書いていない。 やがて店員さんが持ってきてくれたのは、日本の湯呑みよりもふたまわりは大きな器(うつわ)に注がれた茶色のお茶だった。底の方にプラムのような実が沈んでいて、表面には松の実が浮いている。 どんな味がするんだろう? まず飲んでみる。 「日本にもこういう飲み物ありますか?」とユンさん。わたしの知る限りでは、こういった冷たい飲み物はないけど食べ物はありますよ、と答えると、日本にもあるんだ、とうなずいていた。そして、この中に入っているのは英語でなんて言ったっけな・・・と考え込む。 ぐおーっと味を頼りに記憶を検索して、たどりついた答えは「シナモン」。ああ、そうだ、シナモンだー、とふたりで納得しあった。 スジョングァを飲みつつ、メールマガジンや本の話などをする(考えてみると、お互いMM編集者なのだ)。 韓国ではサマー・タイム(summer time)を導入しようとかいう話はないんですか? と訊いたら、ソウル・オリンピックのあった1988年頃に実施したことがあるとのこと。 それでも8時くらいにはだいぶ暗くなってきた。 だが、落ち着いた雰囲気を保つためか、できるだけ照明を抑えた店は、中も外もあいかわらず多くの人でにぎわっている。客の回転はゆっくりとしていて、みんな1杯のお茶で、かなり長い時間ねばるようだ。 一度腰を落ち着けたら、なかなか立ち上がる気になれなくなるほど、わたしには居心地の良い店だった。 おわり
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■ 今回の韓国MEMO ■ | |
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◆スジョングァ[水正果:sujonggwa] | |
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帰国後、手持ちの韓国語の辞書を引いてみたら、「スジョングァ」はちゃんと載っていました。 いわく、「煎じた生姜汁に砂糖かはちみつを入れ、干し柿・松子・肉桂を漬けた飲み物」とのこと。 肉桂(にっけい)はシナモンのことです。ニッキとも言います。松子(しょうし)は「まつぼっくり」の意味もありますが、この場合は「松の実」の意味でいいみたいです。 こうして原材料を見ると、なるほど、茶碗の底に沈んでいたのは干し柿だったんですね。確かにかなり甘味が強かったですが、シナモンの味によくあっていました。 英語だと、「SWEET CINNAMON PUNCH」と表記するようです(特に英語表記にきまりはないそうです)。
参考文献: ※お茶はまた別の機会に特集(?)します。
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■ 今回のおこづかい帳 ■ | |
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●今回の小計:W0 (※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)
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■ 編集後記 ■ | |
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インサドンは気に入って、この後何度も行きました。店先を眺めながら、ぶらぶら歩いているだけでおもしろいところです。 それでは、また次号でお会いしましょう。
★Special Thanks!★ 今回テキストを引用させていただいたユン・ドクジュウさんの「韓国、何でもQ&A」は、「まぐまぐ」から発行されています。(マガジンIDは「0000006657」です)
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1日目の1――出発っ! はじめてのおつかい、ならぬ | ||||||
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1日目の2――何ごとっ!? 地下鉄車内で大演説! の巻 | ||||||
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1日目の3――DDRでブチ切レ?/初めて見たソウルの巻 | ||||||
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1日目の4――やっぱ夏はこれでしょう♪/韓国産ビールの巻 | ||||||
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1日目の5――伝統茶院でくつろぎの一服の巻 | ||||||
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1日目の6――そりゃあ早すぎるんでないかい?/ソウルで映画を の巻 | ||||||
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