『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月8日(木)記


 
第8号


2日目の2――見どころ満載/国立中央博物館・前編の巻

1999年9月14日(火)発行

 

■ クンニプ・チュンアン・パンムルグァン[国立中央博物館]

 


国立中央博物館

 

 クンニプ・チュンアン・パンムルグァンは、わたしが使ったキョンボックン[景福宮:Kyongbokkung]の入り口のすぐ右側にあった。建物の入り口自体はクァンファムン[光化門:Kuanghwamun]の方にある。チケット売り場はどこかな、と見回しながら入り口にまわる。
 博物館の正面には「国立中央博物館」という漢字。うん、間違いない。ここだ。
 階段を上って建物内に入る。だが、「Ticket」と書かれた場所がない。どこで売ってるんだ?

 あれれ? と見回しているうちにふと気づくと、入り口のすぐ左側にあるカウンターに座っている女性がわたしのことを呼んでいるようだ。ふりむくと、「Ticketは外で売ってますよ」というようなことを言ってくれている。
 あ、外なんだ。気づかなかった。

 ありがとうと頭を下げて外に出ると、確かに階段のすぐ下に小さなブースがあった。ガードマンの詰め所かと思っていたが、ここがチケット売り場なのだった。料金表を見ると、大人はW700(約75円)。
 東京の上野の国立博物館は通常料金で400円だから、それに比べれば、ううん、良心的な値段だ。
 やはり、国立の博物館はこうあるべきだよな。

 「Adult one,please」と言ってチケットを買い、いざ中へ。先ほど声をかけてくれた女性に券をもぎってもらう。

 さて、音声ガイドってあるのかな? と、わたし以外は客のいないロビーを見回した。
 いつもは音声ガイドなんて借りないけど、今回はひとりだし、それに中国と違って漢字の説明書きなんてほとんどないだろうから、借りてみようと考えていたのだ。

 探してみると・・・ああ、すぐ目の前のカウンターでガイドの貸出しをやっています、という案内があった。ありがたいことに日本語版もある。料金はW3,000(約323円)。

 カウンターに近づいていくと、ちょうど日本語を話せる職員さんがいて、日本語で説明しながら貸出し手続きをしてくれた。
 「パスポートをお預かりさせていただきます」と言われてちょっとビビったが、まあ、そういうものなのだろう。しかし、外国で自分の身体からパスポートを離すのはそうそうないことなので、ちゃんと返してね、と心の中でつぶやきつつ渡す(もちろんちゃんと返してもらえました)。

 そしてパスポートと引き換えに手渡されたのは、コードレス電話の子機にそっくりで、手で持つ部分を10cmくらい長くしたようなもの。もちろん内側にはプッシュホンがついている。

 使い方は、展示のガラス窓の上の方に、数字が書いてある緑色のシールが貼ってあるから、説明を聞きたかったらその数字を入力すればよいのだそうな。
 ほっほー、音声ガイドなんて初めて借りるけど、けっこう面白そうだ。

 展示はどっちから見て回るんですか? とついでに聞いてみると、博物館に入って左側の入り口から順にまわっていけばよいとのこと。
 「Thank you」と言ってその場を離れる。まだ、韓国語は出てこない。

 


 

 

■ 博物館:2F


 ひんやりとエアコンの効いた展示室に入ったが、これまた誰もいない。人のいない博物館というのは、何やら寂し気、というかちょっと気味が悪いというか。
 まだ時間が早いから観光客は来ていないのかな。

 まあ、何にせよ展示を見る。博物館入り口からすぐのこのフロアは2Fに相当し、韓国の歴史をざーっと見せてくれる構成になっていた。

 まず最初は「ソンサ[先史]」という分類がされている歴史。日本で言うところの縄文・弥生時代みたいな年代だ。
 いわゆる何とか式土器、とか石でできた斧ややじりなどが展示されている。
 うーん、このあたりはどこの国でも同じだなあ。

 展示ウィンドウの中をのぞきこみながらだいぶ進み、はて、数字ってどこに書いてあるんだろう、と見上げたら、1〜3メートル位の距離で区切られたテーマごとの展示スペースの窓すべてに、緑色のシールが貼られていた。

 がーん。音声ガイドって、重要な展示物の所だけでやるのかと思っていたけど、そうじゃないんだ。ここの博物館では全部説明してくれるんだ。
※Attention! 他の博物館ではどうかはちょっとわからないです)

 あわててふりだしに戻って、説明を聞く。音声ガイドがこんな細やかなものとは知らなかった。

 ちなみにこの音声ガイドの声、女性だったのだが、Native並みの流暢な日本語を話していた。とても聞きやすい。

 歴史はこのあと、ワンサングク[原三国]、コグリョ[高句麗]、ペクチェ[百済]、カヤ[加耶]、シルラ「新羅」、トンイル・シルラ[統一新羅]と続いていくのだが、ここで気付いたのが、音声ガイドでは区分されている時代名も、きちんと韓国語読みで説明しているということ。

 そうか。ここは韓国なんだから、それで当然なんだよね。

 ただ、わたしはたまたま旅行前に、固有名詞には日本語読みと韓国語読みの両方のふりがなをふった本を読んでいたから、「ああ、なるほど」とうなずけたけど、多くの日本人は「え?」と一瞬とまどうのではないだろうか?
 なぜなら、わたしが学生の頃は、歴史の授業で「高句麗、百済、新羅」を、それぞれ「こうくり、くだら、しらぎ」と読む、と習ったからだ。

 確かに日本語ではそう読む。決して間違いではない。
 だが、韓国に来るならば、例え日本語のガイドブックに漢字で書いてあっても、固有名詞の類(たぐい)に関しては、できる限り韓国語読みで覚えておいたほうがいいな、と思った。
 中国はそもそも漢字表記があるので、読みをおぼえて行かなくてもそれほど不便を感じない。しかし、漢字表記の少ない(ほとんどない)この国では、その国の言葉での読み方を覚えていく必要性を、この時特に強く感じた。
※Attention! 韓国に限らず、どこの国でも上記のことは同じです)

 それはさておき、展示。
 とにかく広いっ! の一言に尽きる。

 しかも、特に2階のこの展示室は、一度見始めると、ほとんど座って休憩できる場所がないので(記憶では1か所のみ)、最後の方はひーひー言いながら見ていた。
 ざーっと眺めるだけならきっと問題ないんだろうけど、せっかく音声ガイドで説明があるんだから、全部聞かなきゃ気が済まないという、この貧乏性の性格が災いしたんだと思う。

 2階の展示はトンイル・シルラの時代までで終わり。
 展示室出口近くの椅子に、疲れたー、と座り込む。
 だいたい1時間半ちょっとくらい、展示を見て回っていたのではないだろうか。疲れるはずである。

 内容の方は、韓国、中国、日本が、たがいにどんな影響を与えあってきたかがよくわかるような説明がけっこうあった。古墳の再現コーナーなんかもあって面白かったな。

 気に入ったのは、銀にオレンジ色の瑪瑙(メノウ)がはまった馬具。麒麟などの神獣の模様が描かれていたと思う。色の組合せがしぶくていい。

 東洋のお決まり、十二支像もあった。
 「The Twelve Zodiac Figuar」か・・・ま、その通りだわな。

 その他、意外にも骨つぼを発見。えー、韓国なのに?
 展示をよく見ると、トンイル・シルラ時代のものが多い。音声ガイドの説明を聞くと、仏教への理解が深まったのをきっかけに、火葬が一時期流行った(?)そうな。ふーん、そうなんだ。
 その後は儒教が勢力をのばし、土葬に戻っていったそうである。
※Attention! 仏教の伝来は、コグリョが372年、ペクチェが384年。シルラにおいてはは400年代半ばですが、公認されたのは527年[一説では528年]だそうです。また、日本には538年に、ペクチェの聖王[聖明王]によってはじめて伝えられました)

 それにしても疲れた。このままではうっかり帰りたくなってしまいそうだ。
 順々にすべてを見ていたら身体がもたない、と思い、ひとまず見たいものだけ先に見てしまう戦術に切り替える。

 展示案内を見ると、1階はまるまる焼き物のフロア。地下はいくつかのテーマごとに分かれていて、わたしが一番見たかった仏教美術の展示はそこにある(ちはるは仏教美術フリーク)。
 よし、地下から見ていくか、とすっかり椅子に根をはりそうだった腰をあげ、階段を降りる。

 だが、1階の階段近くの踊り場で、飲み物の自動販売機と、休憩用のソファを見つける。もう少しだけ休もう。

 飲み物は缶ではなく紙コップ式のもので、コカコーラのファンタ・グレープがW300(約32円)。
 便利だなー、自販機があるって。

 ちなみにソウルでは、地下道やら建物の中やら、あちらこちらで飲み物の自動販売機は見かけた。YMCAのフロントがあるロビーには、ビールの自動販売機まであった。
 わたしの基準では、自動販売機のある国は治安がいい、ということになるので、そうか、ソウルは安全なんだな、とふと思う。
※Attention! 実際、わたしが過ごした7日間の感触では、日本並みに治安がよかったです)

 一息ついて、立ち上がる。さて、お待ちかね、仏教美術の展示見学だ。

おわり

 

 今回のMEMO  

韓国の時代区分・王朝名


 今回、本文中でも触れていますが、韓国の地名とか時代名は、なるべく韓国語で覚えていったほうがよい、ということで。
 実際わたしは、直前に読んだ本に載っていたので、時代区分の方はなんとか覚えていましたが、地名に関しては「?」でした。「××にある△△遺跡は・・・」となると、もう「???」です(^ ^;)。
 地名は多すぎるのでカバーできませんが、まあ時代名くらいなら調べられましたので、博物館見学の参考にしてみてください。
 なお、同時代に存在した王朝もありますので、罫線で区切りました。

 また、ほんとはもっと古朝鮮とか衛氏朝鮮とかの時代名もあるようなのですけど、博物館見学では必要なかったので省略しました。

 


ソンサ[先史:Sonsa]

※石器や土器を作っていた時代


ワンサングク[原三国:Wansamguk]

※別名、サマン[三韓:Samhan]時代のこと(中国の書籍にはこの名前で載ってる)。
 三韓とは、マハン[馬韓]、チナン[辰韓]、ピョナン[弁韓]のこと。

 


コグリョ[高句麗:Koguryo]
     (紀元前37[伝]〜668) 

ペクチェ[百済:Pekche]
     (紀元前18[伝]〜660) 

カヤ[加耶:Kaya]
     (?〜?) 

シルラ[新羅:Silra]
     (紀元前57[伝]〜トンイル・シルラへ継続) 

※コグリョ、ペクチェ、シルラの三つで「三国時代」という。

 


トンイル・シルラ[統一新羅:Tongil‐Silra]
     (676〜935) 

パルヘ[渤海:Palhe]
     (698〜926:228年間)

 


コリョ[高麗:Koryo]
     (918〜1392:475年間)

 


チョソン[朝鮮:Choson]
     (1392〜1910:519年間)
※1897年に大韓帝国と改称

 


 

参考文献:(参考にした文章が多い順)
・『韓国の歴史』(国定韓国高等学校歴史教科書)
  チョ・チャンスン(チョ昌淳)、ソン・ヨノク(宋連玉)=訳 明石書店
・『韓国の歴史』
  キム・ヤンキ(金両基)=監修 カン・ドクサン(姜徳相)、チョン・ソンミョ(鄭早苗)、中山清隆=編  河出書房出版
・『知っておきたい韓国朝鮮』 歴史教育者協議会=編集 青木書店
 

 

 今回のおこづかい帳  

 
国立中央博物館:W  700
  音声ガイド:W3,000

今回の小計:W3,700
支払い総計:W15,100(約1,624円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 

 
 クンニプ・チュンアン・パンムルグァン[国立中央博物館]リポートでした。
 当初、1号にまとめる予定だったんですけど、あんまりにも長くなり過ぎたので、前後編にわけました。
 実際、テキストが長くなっただけあって、見どころが多かったですね。ひとつひとつじっくり見ていたら、まる1日は余裕でかかったでしょう。興味のある方は、余裕をもって予定を組んだほうがいいかも。

 音声ガイドは初めて試しましたが、非常に便利でよかったです。
 日本語の説明書きも、ちょっとはあったのですが、ほとんどが韓国語と英語でしたので、ひとりで見学する際にはぜひ借りるといいですね。ひとりだと、連れとあーだ、こーだ推測しあうこともできませんから。
 そうそう、その場合には、パスポートをお忘れなく。ホテルの貸し金庫に預けている人は、必ずひきとってから行きましょう。

 それでは、また次号でお会いしましょう。

 


2日目の1――貧乏人は今回の旅行でも歩いてます/
                    歩け、歩け! ソウル!! の巻

2日目の2――見どころ満載/国立中央博物館・前編の巻

2日目の3――キムパで休憩/国立中央博物館・後編の巻

2日目の4――いろいろ気付かぬにぶい自分を反省/クァンファムン前にて、の巻

2日目の5――そこにはいまでも花が手向けられていた/キョンボックンの巻

2日目の6――チャジャンミョンとはなんぞや?/ソウル、そぞろ歩きの巻

2日目の7――本屋はパラダイス! Part2/本屋さんめぐりの巻

2日目の8――韓国料理が目白押し/白花酒幕の巻

2日目の9――白花酒幕で夜は更けて/日韓話題あれこれの巻

2日目の10――オープン・カフェでパッビンスの巻

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