『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月8日(木)記


 
第13号


2日目の7――本屋はパラダイス! Part2/本屋さんめぐりの巻

1999年10月1日(金)発行

 

※今号のタイトルがなぜPart2かというと、『上海6日間★徒然日記』の
1日目の5でも同じタイトルを使っているからです。

 

■ ヨンプン・ムンゴ[永豊文庫]
       (YOUNGPOONG BOOK STORE)

 
 ホテルの部屋に戻って冷たいコーヒーを飲み、くつろぐ。疲れていたので少し寝る。

 5時頃目が覚めたので、室内の電話からユンさんにTel。6時半にホテルの下で待ち合わせる約束をする。
 その後は日記を書いたり本を読んだりしていたら、あっというまに時間になった。10分前にエレベーターで降りたが、やはりユンさんはすでに来ていた。早めに降りてきてよかった。

 こんにちはー、などひととおりあいさつを交わした後、ユンさんが「本屋さんに行きましょうか?」と言ってくれる。ああ、わたしが本を買いに行きたいって言ってたの、覚えててくれたんだ。
 「うん、行きたい」と答えると、ユンさんはYMCAホテルのすぐ近くにある、地下鉄チョンガ[鍾閣:Chonggak]駅にも通じる地下街へと降りていった。本屋さんには地下街から直接入れるそうなのだ。

 この時わたしは「チョンノ・ソジョク[鍾路書籍]」という本屋さんに連れて行ってもらったのかと勝手に思っていたが、ホテルに帰って紙袋をよく見たら、ハングルで「ヨンプン・ムンゴ[永豊文庫]」と書いてあった。ガイドブックにも載っている有名店で、夜9時までやっているそうな。

 さて、ヨンプン・ムンゴ。回転ドアをくぐって入る。おお、人が多い。本もぎっしりつまってるなあ。
 さすがに地下にある本屋さんなので、天井はあまり高くない。面積はどうだったんだろう? けっこう広かったと思うんだけど、地下ゆえの柱や書棚にじゃまされて、見通しがちょっと悪かった。天井から書籍の分類を示した案内板が下がっていたと思うけど、ハングルのみだったような。

 どんな本があるんだろう、と手近にあった本を見てみると、どうも子供向けの絵本のようだった。きみどり色や紫色の着ぐるみ(着るぬいぐるみ)でできた、猿だか人間だか宇宙人だかよくわからない生きもの4人(?)組の写真が表紙になっている。
 「これ、日本でも有名でしょう?」とユンさんがその絵本をさしていう。むむ? わたしは見たことないが。
 「イギリスのBBC放送が作成している、こども向け番組なんだけどなあ」とユンさん。うーん、そう言われても見たことないなあ。

 ――と思っていたら、帰国後、偶然テレビで見た。
 関東ではテレビ東京が平日朝7時から放送していて(月・火のみ)、番組の名前は「テレタビーズ」。
 ひょえー、ぜーんぜん知らなかった。

 しかしこのテレタビーズ、韓国では大人気なのだろうか? セルロイド製の人形やら何やら、かなりのキャラクターグッズを露店で売っているのをわたしは見た。

 日本でも気をつけて見ていると、さりげなく携帯電話のストラップなんぞでキャラクターグッズが売っている。
 日本でも流行っているのかな? それともこれから流行るんだろうか。謎。

 ま、それはおいといて本。

 ようやっとハングルが読める程度の人間が、韓国語の本なんぞ買ってどないするんじゃ、とお思いの方も多いだろうが、実はわたしが好きな作家さん(田中芳樹先生です)の本が韓国語に翻訳されて売っている、と聞いていたので、ぜひそれを買って帰りたかったのだ。
 『上海』で一緒だった銀(ぎん)もやはり同じ作家さんのファンなので、まあ読めないだろうけどお土産にはよかろう、と思ったのである。
(※ちなみに本のタイトルは『創竜伝』。韓国語の翻訳は、ユンさんが手掛けてらっしゃいます)

 で、本を探すわけだが、もうこれは全然わたしの力では無理だった。なぜなら、ずらーっと並んだ本の背表紙はすべてハングル、ハングル、ハングル! なのだ。
 ひーん。さすがにこれだけあると、もう読むのもおっくうだよう(T_T)。

 しかし、残念ながらこの本屋さんには目当ての本はなかった。もうひとつの本屋さんにはあるはずだから、そちらにも行こう、ということになったのだが、その前にCDを下の階に見に行く。

 そう、韓国では日本よりもCDが安い、と聞いていたので、これは買って帰らにゃあ、と思っていたのだ。
 ちなみに狙っていたのは、フェイ・ウォン[王菲](中国語)とディズニー映画のサントラ(英語)(^ ^;)。いずれも韓国語でないところが、ちょっと寂しいところではある。

 エスカレーターを降りると、そこがCD売場だった。ここは若い人が多く来るせいか、確か音楽の分類に英語表記もあった。
 CDももちろん売っていたのだけれど、日本と決定的に違うのは、音楽の記録媒体として、テープ(普通のテープ。DATではない)もかなりの率を占めていることだった。話には聞いていたけれど、本当なんだなあ。

 そういえば記録媒体といえば、ユンさんに聞いたが、韓国ではMOはあまり使われていないそうだ。どちらかというとCD―R(CD―RW)が主流とのこと。ふうん、そんなところでも違うんだな。

 ゲームの方も、Play StationやDream Castのような、ゲーム専用機は主流でないらしい。「ゲームもコンピューターでやりますよ」と言っていた。
 ということは、「BIO HAZARD」(バイオハザード)もコンピューターでやるんだろうか?
※Attention! 韓国にも「バイオハザード」があることは、アメリカに留学していた友人の韓国人クラスメートが、海賊版で持っていたことでチェック済み)

 それはさておきCDを物色。
 ディズニー映画のサントラ(Sound Trackの略)は、まだ持ってなかった「ムーラン(木蘭)」を発見。よっしゃ、Getじゃ――と思って買ったのだが、これが甘かった。

 というのも、わたしはいつも日本では、ディズニーのサントラは直輸入版しか買っていなかったので気がつかなかったのだが、こども向けに現地の言葉で吹き替えたサントラというのも、この世には存在するのだった。

 そんなわけで、いまわたしの手元には、日本ではかなりめずらしいと思われる、韓国語版「ムーラン」がある(笑)。
 ま、いっか。韓国語のヒアリングの練習に、きっと役に立つじゃろ。

 フェイ・ウォンの方は、わたしは菲迷(迷:「ファン」という意味の中国語。ただのファンよりも強い意味があると思う)というほどではなく、中国語の練習になればいいな、くらいなので、ベスト版のようなものを1枚買う(友人に貸し出し中。タイトル忘れた)。
 「唱遊」も売ってたけど、さすがにこれは日本で買っていたので、眺めるだけにとどめる。

 ふっとCDを眺めていたら、映画「覇王別姫」のサントラも売ってた。お、安いじゃん、と思って思わず手が伸びる。

 なんだかんだ悩みながら、上記の3枚を買い込んだ。
 どれがどれの値段だかわからなくなってしまったんだけど、レシートを見ると、W9,300(約1,000円)、W11,300(約1,215円)、W11,900(約1,280円)だった。
 3枚でしめてW32,500(約3,500円)なり。安いかな? どんなもんだろ?

 かなり充実した買い物を終え、外へ出る。
 

 


 

 

■ キョボ・ムンゴ[教保文庫]
         (KYOBO BOOK CENTER)

 
 ユンさんとチョンノ[鍾路:Chongno]を歩きながら、今日はどこへ行った報告をする。
 「あちこち歩きまわったけど、午後はくもってて日差しを直接あびなかったので楽でしたよ」とわたしが言うと、ユンさんが、「ソウルは東京みたいに蒸し暑くないしね」と言う。
 うーん、そうかな? けっこう汗かいたけどな。
※Attention! ユンさんの言葉は、日本に帰ってから初めて実感することになりました。また後日書きます)

 まだソウルに来て2日目だけど、けっこう気候は似ているな、と思う。暑さも似たような感じだし。
 「でも、ソウルは冬が寒いんですよね?」と聞いたら、「そう、冬はマイナス15度くらいまで下がるよ」とのお答え。うう、温暖な千葉育ちのわたしには想像できん。

 まあ、ユンさんはそういう街に育ったので、寒さにはけっこう強いらしい(でも、スキーは寒いから嫌いって言ってた)。
 だから東京に留学している頃、冬になると、あの程度の寒さで日本人が厚着をしているのが不思議だったそうだ。
 「東京では、私は冬でも薄手のジャンパーだけで大丈夫だった」とのこと。
 ちはる、思わず冬のソウルには来るまい、などと思う(冗談ですよ)。

 しかし上には上がいるもので、ユンさんも驚いたのが北京からの留学生。なんと、冬でもTシャツ1枚でOKだったそうな(^ ^;)。
 ちはる、冬の北京に行くのは、ソウルに行く以上に覚悟が必要だな、などと思う(冗談だってば)。

 やがて道はあのイ・スンシン[李舜臣]将軍像のあるセジョンノ[世宋路:Sejongno]の交差点が近くなってくる。
 と思っていると、ユンさんが右側にあるビルの手前にある階段を昇っていく。ああ、ここ、朝も見たビルじゃん。オフィス・ビルかと思ったので、入りにくい印象だったけど、そっか、入っていいのか。

 階段を昇りきると、ビルの入り口が見えた。学生っぽい若い人たちが大勢、ひっきりなしに出入りしている。
 通路を抜けて、今度は階段を降りて、本屋さんがあるフロアに出ると・・・おお、広い。すっごい広い。
 なんじゃ、こりゃあ。店のど真ん中に設けられた通路の、その突き当たりがマジで見えないぞ(本当にこの時は見えなかった)。
 ひゃー、こんな広い所から、本を探しださなきゃいけないのか。わたしひとりで来ていたら、これはちょっと途方に暮れていたかも。

 しかし、この広さに戸惑うのはわたしのような外国人だけでなく、地元の人もそうであるようで、階段を降りて店内に入ると、右側に店内の案内所が設けられていた。カウンターには店内の地図が置いてあって、誰でも自由に持っていっていいようになっている。
 本の分類は韓国語だけでなく、英語でも表記されていた(わたしは6日目にもひとりで来たので、その時もらった)。便利。

 今回はさいわい、ユンさんに連れてきてもらっていたので、迷うことなく目的の本の場所へ連れて行ってもらう。韓国語に翻訳された、日本を含む外国の書籍が並べられている場所なので、見慣れた本がけっこうある。

 驚いたことに、『源氏物語』があった(タイトルは漢字だった)。日本人でも全部読んだことのある人なんてあんまりいないのに。韓国人にはどうなんだろう、おもしろいのかな? 読む人なんているのかな? まあ、読む人がいるから出版されているんだろうけど。

 ――ってなことを考えながら見ていたら、ユンさんが、「『源氏物語』、読んだことありますか?」と訊いてきた。
 わたしは、新潮文庫から出ている田辺聖子さんの現代語訳だったら、何度も繰り返し読んでいるので(持ってるから)「ありますよ」と答えたが、ユンさんは「私は最後まで読めなかった」と言っていた。

 まあ、それはそうだと思う。「すっごくおもしろいよ」ってほど、物語に起伏がないし。わたしの友人たちだって、『源氏物語』を最後まで読んだことのあるやつはひとりもいない。
 わたしも田辺聖子さんの現代語訳だからこそ、最後まで読めたのであって、与謝野晶子の訳だったら、とてもじゃないけど最後まで読めないと思うもん。

 ちなみにこの韓国語訳された『源氏物語』、誰(日本人)の現代語訳を翻訳したんだろう、と思って中を見てみたが、名前が見つからなかった。
 ということは、まさか原文を直接韓国語に翻訳したのだろうか?

 ひー、だとしたらおそれいる。
 わたしだって原文は、高校の古文の授業でしか読んだことないぞ。

 その他にも、中国の古典がけっこうな数あった。
 「これ、『三国志』」とタイトルをハングルで書いてある本を、ユンさんが指さした。ん? なんか見たことのある表紙のデザインだなあ、と思ったら、なんと北方謙三さんの『三国志』だった。
 日本人が書いた中国の古典を韓国人が読むのか・・・なんか不思議。
※Attention! 日本には、イ・ハギンさん(故人)という韓国人の方が原作した『三国志』のマンガがありますので(講談社から『蒼天航路』というタイトルで出てる)、日本では韓国人が書いた中国の古典を日本人が読んでますけど)

 あれこれと本を眺めながらも、自分のほしかった本が売っている場所に到着。自分用と銀用に2冊購入。大きさは、日本の新書版よりも少し大きいくらい。1冊W4,000(約430円)。

 そして、手に取って中を見て驚いたのは、本が左綴じの横書きだったことだ。
 日本じゃ小説は、一般に縦書きしかない。
 ハングルは縦に書いても横に書いてもいい文字のはずだけど・・・そっか、韓国も横書きなんだ(中国でも横書きの小説をよく見る)。

 日本じゃ縦書きの本なんてあたりまえだけど、これってけっこう技術的には難しい。わたしはそっち方面(印刷・出版関連)のソフトも会社で取り扱っているのでわかるのだが、これがいろいろと面倒くさいのだ。
 もっとも、文字を縦書きする言語が少ないせいもあるから、しかたないんだろうけど。

 まあ、だからといって、韓国の印刷・出版系ソフトの開発が日本よりも遅れているってわけではない。ただ単に、時代の変化によって、横書きの文章が好まれているってだけかもしれないしね。

 でも、小説が横書きなのかあ・・・なんかショック。

 ちなみに本の内容の方は、人名は日本語読みのままなのに、タイトルは漢字を韓国語読みしたハングルになっていた。ふうん、そういうものなのか。

 会計を済ませた後、店内をぐるりと一周してみる。
 いろいろな本があったけど、中でも目をひいたのが女性向けの雑誌。透明なビニール袋に入っているのだが、本と一緒に大量の化粧品が入っている。
 どうやら「おまけ」らしいんだけど、あれじゃあ本よりもおまけの化粧品の方が高いのではなかろうか?
 そんなことをユンさんに言ったら、「競争が激しいんですよ」とのこと。
 なるほど、おまけで読者をひきつけようという魂胆なのか。納得。

 その他にもこのフロアには、CD屋と文房具屋も入っていた。

 広さとしては結局、新宿東口の紀ノ国屋(7階建てだったかな?)を、平面にずらーっと並べたくらいだと思う。
 一回じゃとても店内を把握しきれないので、後でまた絶対来ようと思った。

 

おわり

 

 

 今回のおこづかい帳  

 
CD3枚:W32,500
 本2冊:W 8,000

今回の小計:W40,500
支払い総計:W62,500(約6,720円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 

 
 本屋さん特集でした。いかがでしたでしょうか?

 ホントは小説だけではなくマンガもほしかったんですけど、ユンさんに聞いたところ、韓国では日本のように、本屋さんで普通にマンガを売っていないそうなのです(実際本屋では全然見なかった。他ではちょっと見た)。
 マンガの方が、韓国語の勉強もしやすそうだからいいなー、と思っていたので、ちょっと残念でした。
 ま、それでも目当ての本が手に入りましたのでよかったです(^ ^)。

 キョボ・ムンゴは、後日(6日目)ひとりで行って来ましたので、また後ほど詳しいリポートをお届けする予定です。

 それでは、また次号でお会いしましょう。

 


2日目の1――貧乏人は今回の旅行でも歩いてます/
                    歩け、歩け! ソウル!! の巻

2日目の2――見どころ満載/国立中央博物館・前編の巻

2日目の3――キムパで休憩/国立中央博物館・後編の巻

2日目の4――いろいろ気付かぬにぶい自分を反省/クァンファムン前にて、の巻

2日目の5――そこにはいまでも花が手向けられていた/キョンボックンの巻

2日目の6――チャジャンミョンとはなんぞや?/ソウル、そぞろ歩きの巻

2日目の7――本屋はパラダイス! Part2/本屋さんめぐりの巻

2日目の8――韓国料理が目白押し/白花酒幕の巻

2日目の9――白花酒幕で夜は更けて/日韓話題あれこれの巻

2日目の10――オープン・カフェでパッビンスの巻

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