『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月9日(金)記


 
第22号


3日目の6――石焼きピビンバはスッカラッで混ぜるべしっの巻

1999年11月2日(火)発行

 

■ テレビ

 
 ロッテデパートからホテルへ戻ると、すでに5時近かった。とりあえずユンさんに電話してみる。
 すると、なんとユンさんは急に締切りが月曜日になってしまった仕事があって(この日は金曜日)、突然忙しくなってしまったという。でも、今日会わないと、もうわたしのソウル滞在中には会えそうにない、ということなので、時間をやりくりして会ってもらえることなった。感謝。

 7時にホテルの玄関で待ち合わせることにして、わたしはしばらく休憩。
 わたしのソウル滞在中、この時間帯には、在韓米軍向け放送(AFKN)でクイズ番組をやっていた。アルファベットが1文字ずつ書かれたパネルが全部裏返しになっていて、クイズの回答者が指定したアルファベットごとにめくっていくと、徐々に英語の単語やフレーズ[phrase]が明らかになっていくので、これをいかに早く当てるかを競うのである。
 単語もフレーズも簡単なものなので、わたしのような英語が苦手な人間にもわかりやすくておもしろい。なごむ。

 でも、確かアルファベットには、ある一定量の文章中における出現率というのが調べられているはずで、だから「t」は頻出するとか、「q」はあまり出てこないとか(適当です)あるんだけど、このクイズ回答者たちはそんなのおかまいなしなのか、絶対出てこなそうなアルファベットを叫んで下さる。思わずツッコミを入れたくなる。
※Attention! 日本語のひらがなでも、出現率は調べられてると思います。暗号解読に役に立つから)

 しかし、今時こんなクイズ番組で、雨あられのように賞金がもらえる企画があるなんてすごいなあ。日本じゃ景気が悪くなってからめっきり見なくなったような気がするけど。

 そんなクイズ番組を見た後、少し寝る。

   


  

 

■ ミョンドン[明洞:Myongdong]散策

 
 7時頃、ホテルの1階へ降りる。7時10分頃、ユンさん到着。ちょうど通勤ラッシュで道が混んでいたらしい。うう、ご足労おかけしますう。

 雨はやんでいるし、今日はそんなに暑くないので、ミョンドンまで歩いていくことにする。
 道すがら、ロッテデパートやミョンドン・ソンダン[明洞聖堂:Myong‐dong・songdang]に行った話をする。
 ミョンドン・ソンダンに入れなかった(というか、わたしがビビって入らなかった)話をしたら、「そんなことはないはず」ということで、ユンさんに連れていってもらうことにした。

 ミョンドン・ソンダンの前の坂は、相変わらず工事中だったけど全然かまわずのぼって行ってOKだった。なんだ、よかったのか。
 考えてみれば、ここは観光施設じゃないんだから、いつでも信者の人が入れるように、開けとかなきゃいけないんだよね。
 どうもわたしには、宗教観連施設はお金を払わなければ入れない(勝手に入ると怒られる)という先入観があるらしい。まあ、日本はお寺も教会も入場料を取るところが多いから仕方ないか。

 教会は正面右側のドアが開いていて、そこから中に入れた。ちょうど礼拝中だったので、邪魔にならぬよう一番後ろの隅っこから教会内部を見学する。
 カトリックだから、頭にベールをかけた女性などがいる。しかし、さすがに時代を反映していて、その下はTシャツにGパンだったり。

 教会内の、頭をたれてお説教を聞いている人たちの姿はまばらだった。空いてるなあ、と思ったが、よくよく考えれば、ふつう教会で礼拝があるのは日曜日。だけど今日は金曜日だ。
 後でユンさんに聞いたら、日曜日に礼拝に来られない人のために、木曜日や金曜日にも礼拝をしてくれるのだそうな。代わりの日にやってくれるなんて、選挙の不在者投票みたいだな。

 また、どうしても都合があって、代わりの日にも行けず日曜日の礼拝を休んでしまった人のためにも、きちんと救済措置があるのだそう。何をすればいいんだっけ・・・ちょっと思い出せないな(反省文を何回か書く、とかだったろうか? 免罪符みたい、と思った記憶がある)。
 とにかく、忙しい現代人のニーズ[needs]に合わせて、いろいろオプションが用意されているのであった。

 礼拝も終わりに近いのだろう。みんなで一斉に、「アーメン[Amen]」ではなく「アーメ」と唱えていたのが印象的だった。

 教会から出た後、「正面からなら見えたんだけど」とユンさん。
 何が? と一瞬思ったが、そっか、キリスト像か。礼拝の様子や建物内部の意匠に気を取られていて、キリスト像を見ることすら思いつかなかった。
 もしかして、一番大切なものを見落としてしまったんとちゃう? うう、もったいない。

 ミョンドンにも中華街があるのだという。連れていってもらう。
 場所はミョンドンの西の方、中国の大使館があるあたりである。
 中国と言っても、確かここにあったのは台湾の大使館だったと思う。なので、ここは横浜の中華街同様、台湾系の中華街ということになる。
 でも、ミョンドンは日本で言えば銀座のような所だから、地価が高いので、いまではほとんどのお店が引っ越してしまったそうだ。実際、お店の数は少ない。本屋さんとお菓子屋さん(おいしいお菓子がたくさんあるそうな)、それに数件の食堂があるだけ。
 街全体も明るい照明の看板が少ないせいか、他の地区よりやや暗く、さびれた雰囲気が漂っていた。真遺憾(残念である:中国語)。

 お菓子屋さんがあったのにちなんで、月餅(日本語で「げっぺい」)の話になる。
 ここのお菓子屋さんで売っている月餅も、すごくひとつが大きいそうだ。
 そういやあ、横浜の中華街で売っている月餅も、一回では食べきれないほど大きいなあ。日本のお菓子屋さん(井村屋とか山崎とか)が作っている月餅だけが、日本人向けに小さく作っているんだろうか?
※Attention! 中国で外国人のお土産用に、1か月くらい保存がきく真空パック入りの小さいのが売っているが、あれは邪道だ)

 さて、夕食を食べようということで、ミョンドンでも一番明るい地区辺りへと移動する。
 もう、とにかく明るい。人が多い。
 若い人が多いせいか、イメージとしては銀座というよりも渋谷だ。

 ユンさんが「あれ、豚カツ屋さん」とお店を指さす。豚カツかあ。こっちじゃ流行ってるのかな?
 また、日本式のラーメン屋もある。
 なんでも、韓国のラーメンはインスタント・ラーメン(「乾燥させた油あげ麺」を使っているタイプ)が一般的なので、日本のように「生の麺」を使っている場合は、「日本式ラーメン」とか「生ラーメン」とわざわざ呼ぶそうなのだ。
 「乾燥油あげ麺」だけでなく、「生麺」で作るタイプのインスタント・ラーメンもある日本に住んでいる身としては、へー、生の麺で作ったラーメンはめずらしいんだ、という感じである。

 よく東南アジアの国に行くと、地元の食堂でラーメンをたのんだら、いわゆる普通のインスタント・ラーメンで作ったものが出てきて、日本人が「この店では客にインスタント・ラーメンを食わせる気か? ふざけんなっ!」と腹をたてて店の人と喧嘩になる、なーんて話を聞くけど、韓国で「日本式ラーメン」を出している店以外でそれをやったら反則なんだな、とふと思う。

 あ、ショーウィンドウの向こうでキムパを作っている人たちがいる。実演して見せているわけか。

 日本でも、いかにもお寿司屋さんといった雰囲気の、和服のような白衣(?)に白い帽子かぶった年輩の女性が、店内でお寿司を作っている姿がよく見られるが、この店では、明るい色の服にエプロンをした化粧ばりばりの若い女性たちが、椅子に座っておしゃべりしながら作っていた。
 なんかもう、味だけでなく、イメージも日本の巻き寿司と全然違うな。
 このキムパを作っている様子を見せている店は、ミョンドンの同じ通り沿いに何軒かあったと思う。

 あちこち歩き回った後、昨日わたしが言っていた、石焼きピビンバを食べよう、ということでお店に入る。
 どこのお店かは覚えていないが、麺料理やご飯料理などのしっかりした食事の種類が豊富な、若い人の多いお店だった。日本でいうと、何に相当するだろう。品揃えの感覚でいえば、東京近辺にはよくある「めしや丼」に近いだろうか?(実際にあるメニューの内容は、もちろん全然違う)

 しかし、席はカウンターではなく、普通のボックス席。向かい合わせに席に着くと、ユンさんがぱぱぱと注文を済ます。やがて店員さんが、赤い磨りガラスのような質感のプラスチックの大きなコップに入ったお冷やと、白菜のキムチを持ってきてくれる。
 箸はどこだ? と探したら、ユンさんが上面にガラスがはまった箱の中から、ステンレスの箸を出してくれた。あ、そこにあったのか。ついうっかりいつものくせで、割り箸を探してた。

 そういえば帰国後、友達みんなに「キムチ食べた?」と訊かれたような気がするが、そりゃあもう食べた。だって、こちらから言わずとも、料理を注文すれば必ず付け合わせとして出て来るんだもん。
 わかりやすく(?)言うならば、韓国におけるキムチは、日本の回転寿司の「ガリ」、カレー屋の「福神漬け」と同じで、無料で出てきて当たり前の物らしい。

 お昼は何を食べました? という話になる。
 「コンビニで買ったもので簡単に済ませました」と答えたら、「せっかく旅行に来たのに、それじゃもったいないでしょう」と言われる。
 むーん、そうなんだよねえ。

 日本にいる時は、わたしは仕事でもプライベートでもひとりで食事することが多い。だから、ひとりで店に入って食事することはなれているので、何てことはない。
 でも、韓国の人ってひとりで食事する習慣がないから、ひとりでご飯を食べてると、変な目で見られてしまうらしい。いくらわたしでも、なかなかその中で食事をするっていうのは勇気がいるなあ。

 だけど、もしメールマガジンを書くことになった時に(この時はまだ書くかどうかはっきり決めていなかった)、食べ物の話が少ないと寂しいんだよね。『上海』の時はそれでも小吃があったので、自分的にはそれほどでもなかったけど・・・

 そんなこんな話をしているうちに、石焼きピビンバ[トルソッピビンバ]が到着。
 うおお、黒い厚手の器に盛られた料理が、じゅうじゅう音をたてているぞ。
 日本と違って、韓国じゃ食器を手に持って食べない、という習慣をよく耳にするが、これじゃ持ちたくったって持てないよ。

 さて料理の方は、いろいろな野菜やらお肉やらがのっていて、「わあ、彩りがきれい」と思った記憶はある。が、詳しくは覚えてないな。写真でも撮っておけばよかった。
 お箸が入っていた箱の中から、こんどはスプーンを取出し、ピビンバをよく混ぜる。具と色合いが均一になるまでよく混ぜる。
 味の方は言うまでもない(^ ^)。
 やっぱりあたたかいご飯料理はいいのう。おこげまであるなんて、うう、泣かせるぜ。

 こんなに日本人の口に合う料理が多い国だもんねえ。
 前回の『上海』から帰って来た時に思ったのは、外国でもっと地元のレストランに行こう、ということだった。
 今回は、その課題を克服しなきゃいけないのかなあ、と漠然と思った。

 

おわり

  

 今回のMEMO  

チョッカラッとスッカラッ[chos‐ka‐rak,sut‐ka‐rak]

 
 いままでわたしはずっと、お箸だのスプーンだの言っておりましたが(別にそれは間違っていないんだけど)、料理の本を読んだら、ちゃんと韓国語で載っていました。
 お料理の名前を韓国語で言うなら、それを食べるために使う食器の名前も、韓国語で言えた方がなんとなくいいですよね。
 で、韓国語で何と言うかというと、

お  箸=チョッカラッ
スプーン=スッカラッ

になるそうです。

 英語でお箸はチョップスティック[chopsticks]、スプーンはそのままスプーン[spoon]ですが、出だしの「チョ」と「ス」は一緒なんじゃのう、などと思うと覚えやすいでしょうか?
※Attention! 「箸」という漢字自体、音読みで「ちょ」と読むらしいですけど→だって、ATOK8の漢字変換で出てくるんだもん)

 トルソッピビンバ[石焼きピビンバ]はスッカラッで、チャジャンミョン[ジャージャー麺]はチョッカラッで、しっかり混ぜてから食べましょう(^ ^)。

 

参考文献:
・『とっておきの韓国・朝鮮料理』
  ジョン・キョンファ=監修、平松洋子=文・構成  マガジンハウス
・『ポータブル韓日辞典』  民衆書林編集局=編  三修社

※このコーナーは不定期です

  

 今回のおこづかい帳  


今回はなし(ごちですm(_ _)m)

今回の小計:W0
支払い総計:W69,600(約7,484円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 

 
 ミョンドンあれこれリポートでした。
 中華街はきっとどこの国にでもあるだろう、とは思っていましたが、やはりソウルにもあったのですね。横浜の中華街を見慣れた者には、ちょっとさびれた感じがしたのが残念でしたが。

 石焼きピビンバは、実は日本で食べたことがなかったので、これが初めてでした。
 おいしかったですねえ。ソウル滞在中、結局あれこれ食べたのですが、石焼きピビンバが一番おいしかったような気がします。やっぱ、日本人はあったかい米だよ(!?)。

 それではまた、次号でお会いしましょう。

  


  

3日目の1――地下鉄2号線で大ショックの巻

3日目の2――雨に降られて奉恩寺参りの巻

3日目の3――団地を眺めてフェリー乗り場への巻

3日目の4――ついに謎が明かされるっ!?/演説おじさんの正体の巻

3日目の5――地下食品売り場めぐりは楽し/ロッテデパートの巻

3日目の6――石焼きピビンバはスッカラッで混ぜるべしっの巻

3日目の7――キャンディは国境を越えたのに、
             わたしは国際電話がかけられないっ!? の巻

1日目

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