『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月10日(土)記


 
第25号


4日目の2――あれは何? あぶられた丸い和紙の巻

1999年11月12日(金)発行

 

■ イェスレ・ジョンダンへの道

 
 クンニプ・ミンソク・パンムルグァン[国立民族博物館]を出たのがだいたいお昼ごろ。朝から降っていた雨は小降りに変わっていた。
 博物館近くの公衆電話から、ユンさんに電話する。昨日、ガンダーラ展をやっている場所を調べておいてくれるという約束をしていたからだ。

 電話をすると、ありがたいことに場所やら道順やらいろいろと詳しく調べていてくれた。感謝。
 話を聞くと、地下鉄3号線の南部バスターミナルという駅で降りて、5番出口から地上に出ればいいらしい。
 ガンダーラ展をやっているところの近くの音楽堂で、やはり毎週土曜日は5時から伝統芸能の公演をやっているそうなので、それも合わせて見に行くことにする。
 お礼を言って、電話を切る。

 さて、地下鉄3号線というと、ここからならキョンボックン[景福宮:Kyongbokkung]駅が近いので、歩いて駅まで移動する。

 キョンボックン駅は、かなり深くまで地下へ降りたような気がするが、途中階でだーっと長い通路がのびていたと思う。通路に美術館みたく絵を飾っている駅があるとガイドブックに書いてあったような覚えがあるが、もしかしたらこの駅のことだったのかな? 時間に余裕がないわけでもないのに、意味もなく先を急いでしまったので確認してこなかった。もったいない。

 券売機の前に行くと、博物館の見学を終えた中学生たちがわらわらと群がっていた。切符を買うのに一騒動らしい。
 あ、お札の両替機がある。ちょうど小銭を切らしていたので、1000ウォン札を500ウォン硬貨2枚にチェンジする。
 お札が使える券売機もあったが、お札が入らないで困っている女性がいた。それでは確かに窓口で買ったほうが早いか。

 まったく問題なく乗車。
 これから行くあたりの地図をガイドブックで確認すると・・・お、ユンさんが言ってた美術館などの複合センターってこれじゃん? と思われる施設が載っている。
 名前はなんと「芸術の殿堂」。

 「ひゃー、ごっつい名前だなー。もともとの韓国名は何なんだろう? もっといい日本語訳はなかったのかよ」と思っていたのだが、ここは韓国名でもそのまんま「芸術の殿堂」なのだった(^ ^;;)。
 何しろ、実際にそこへ行ってみたら、木目の美しい白木の板に、墨痕鮮やかな筆書きの文字で堂々と「芸術の殿堂」と漢字で書かれた建物があったのだ。
※Attention! 「の」に相当する助詞はハングルでした)

 そうか。日本人的には「殿堂」なんて言われちゃうと、なんかものすごく仰々しいイメージがあるが、こちらではそんなことはないのか。

 ちなみに韓国語では、イェスリ(イェスル・ウィのリエゾン)・ジョンダンもしくはイェスレ(イェスル・エのリエゾン)・ジョンダンと読む。
※Attention! 韓国語の「ウィ(○+―+|)」は、日本語の「〜の」にあたる助詞として働く場合は「エ」と読む、と日本で売られている韓国語の本の多くに書かれていますが、「ウィ」と読んでも間違いではないため、並記しました)

 南部バスターミナル駅到着。下車。5番出口へ向かう。
 地上へ出る階段をのぼる前に、壁に設置されている大きな地図で場所を確認。
 うわまいった、ハングルばかりだよ、と思わずくじけそうになったが、あったっ! Seoul Art Centerって英語で書いてある。
 間違いない、きっとここだ。

 ポンウンサ[奉恩寺:Pong‐unsa]の時のように道を間違えないように、メモに通りや建物の名前などをハングルで書き留める。
 何なに? 地下鉄出口を出たら、すぐ背後にある交差点を右に曲がってウミョンノ[牛眠路:Umyonno]っていう名前の通りに出て、ナンプ・ファンドノ[Nampu‐Hwandono]っていう道とぶち当たるT字路まで行ったら右に曲がって、しばらく歩けば左手に見えてくるんだな。

 よっしゃ、これだけ書いておけば迷わないだろう、と地上へ出る階段に向かう。そして、すでに雨のやんでいた地上に出て、すぐにふっと左手側を見たら、ちょうど工事中だったのか、交差点の角の区画に建物がまったくなく、地面が平らにならされていて、ずっと遠くまで見渡せる状態になっていた。そして無意識にその先へと視線を向けたわたしの目に、緑生い茂る丘陵地帯と、その懐に抱かれるようにして点在する大きな建物群がうつる。
 あ、あれがその芸術の殿堂じゃないか?
 うん、方向的にもあってる。間違いない。

 ラッキー、行く先が見えてるなら、絶対迷わないな、こりゃ。

 場所がわかって一安心。すぐ近くの交差点を曲がって、目的地を目指す。

  


   

 

■ 南部バスターミナル

 
 ウミョンノを歩いていると、やがて右手に灰色の大きな工場のような建物が見えてきた。大きなバスが出入りし、たくさんの人が大きな荷物を手に足早に歩いているんだから、これはもう駅名にもあった南部バスターミナルに間違いないだろう。

 わたしは普段、年に数えるほどしかバスに乗らないし、バスで長距離を移動することも滅多に、というよりほとんどないから、バスターミナルと聞いてもいまひとつぴんとこなかったのだけど、この南部バスターミナルは韓国南部に行く長距離バスが発着するところなのだった。
 なんだ、わたしはてっきりソウルの南の方にあるから「南部バスターミナル」かと思っていたよ。

 用もないし、興味もなかったのだが、偶然入り口から見えた中の雰囲気がおもしろそうだったので入ってみる。

 入ってすぐ左側には、キンパ[Kimpap](のり巻き)などの軽食を食べさせてくれる、小さなカウンターと2つくらいしかテーブルがないお店があった。お腹が空いていたので、思わず目を引かれる。
 奥に目を向けると、これが広いっ! だーっと奥まで通路がのびていて、バスの待合所というよりも、青果市場や魚市場みたいだ。

 建物内部は、右と左の両端に食べ物やお土産を売る店の他、もちろんバスの切符を売るカウンターがあり、中央にはターミナルらしくバスを待つ人が座る椅子が並べられていたり、キヨスクのようなお店もある。

 奥へ進んでいくにつれ、何やらいい匂いがする。思わず恍惚として匂いをかいでしまう。
 何の匂いだろう、と思っていたら、店先であぶっているスルメの匂いだった。んー、韓国らしい(?)。

 施設は全体的にちょっと古めだったが、逆に、いかにも「ああ、これから遠くへ行くんだな」という思わずわくわくしてしまうような、子供の頃に感じた懐かしい旅情が醸(かも)し出されていた。

 これから長距離を移動する人たちのために、先のキムパ屋の他にも、いろいろな食べ物屋さんがあった。
 ここで食べちゃおうか、とも思ったが、美術館に行けば何かあるだろ、と思い直し、南部バスターミナルを後にした。

  


  

 

■ 和紙?

 
 地図どおりに歩いて、ナンプ・ファンドノとウミョンノのT字路を右に曲がる。
 芸術の殿堂の建物が見えてきたものの、いくつも建物があるので、どの建物に行けばいいんだよ、と不安になったが、通り沿いの建物のひとつに、現在やっている催し物の垂れ幕をかけているものがあった。
 あ、仏像の絵が描かれた垂れ幕もある。
 ハングルでも英語でも「ガンダーラ展」と書いてあったが、あの絵を見れば間違えようもない。

  


これが芸術の殿堂の建物群。
左から2つ目はFAMEの垂れ幕。
木にかくれているのがガンダーラ展の垂れ幕

  

 じゃあ、この建物に行けばいいんだな、と目安がついたけれど・・・おーい、横断歩道がどこにもないぞー。
 さっきのT字路には横断歩道があったが、まさかあそこまで戻らなきゃいけないのかっ!? と一瞬あせったが、もちろん芸術の殿堂正面に地下道があるのだった。ほっ。

 でも、たぶんこの地下道もエレベーターが設置されていなかったと思う。車椅子とかで来る人はどうするんだろう? 車で来た時はいいけど、徒歩で来たら不便じゃなかろうか?

 そんなことを考えつつ階段を降りると、頭に手ぬぐいをかぶった、日本の行商のおばちゃんみたいなスタイルをした小さなおばあちゃんが、地下道の壁際にちょこんと座り、生成(きなり)色の表面がけばだった丸い和紙のようなものを売っていた。おばあちゃんの前には七輪(土でできた炭を使うこんろ)が置かれている。

 そういやあの和紙みたいなの、チョンノ[鍾路:Chongno]の屋台でもよく見るけどいったい何なんだろう、と思いつつ見ていたら、若い女性がおばあちゃんの前に立ち、1つちょうだいと言っている(らしい)。
 するとおばあちゃんはその和紙を七輪で軽くあぶると、紙に包んで女性に差し出した。女性はお金を払うと、それを食べながら歩き出す。
 え、あれ、食べ物なの?

 そこで思い出したのが、さっき南部バスターミナルで匂いをかいだスルメ。
 そうか、あれもスルメみたいなものなのか。

※Attention! 実際には、これはカワハギという魚を干した物だったようです)
※Thanks! Tamaさん、情報ありがとうございました)

 人が食べている物というのは、実においしそうに見える物で、かなり強く心惹かれたが、何となく気後れして買えなかった。
 うう、次回ソウルに行った時は食うぞ。

 地上に出て無事芸術の殿堂に到着。
 さあ、これからガンダーラ展だ。

おわり

  

 今回のおこづかい帳  


地下鉄:W500

今回の小計:地下鉄:W500
支払い総計:W93,100(約10,010円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

※「今回の韓国MEMO(韓国語)」はお休みです。

  

 編集後記 

 
 今回は街角雑感でした。
 丸いカワハギをチョンノで見かけた時は、「なんで食べ物の屋台で紙を売っているんだろう?」とずっと思っていました。バカですねえ。でも、食べ物だとはちっとも思いませんでした。
 ちなみにお味の方は、教えて下さったTamaさんによると、みりんが利いていて少々甘めだそうです。お酒のおつまみに合いそうですね(^ ^)。

 それではまた、次号でお会いしましょう。

  


  

4日目の1――音声ガイドとボケ&ツッコミ/国立民族博物館の巻

4日目の2――あれは何? あぶられた丸い和紙の巻

4日目の3――ソウルで仏像三昧/ガンダーラ展の巻

4日目の4――やったね、タダだ!/国楽博物館の巻

4日目の5――パーカッションのリズムに感動/伝統芸能鑑賞の巻

4日目の6――MISSION−「N」の巻

1日目

2日目

3日目

5日目

6日目

7日目

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