『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月10日(土)記


 
第27号


4日目の4――やったね、タダだ!/国楽博物館の巻

1999年11月24日(水)発行

 

■ クガク・パンムルグァン
      [国楽博物館:Kugak‐pakmulgwan]

 
 芸術の殿堂の奥にクンニプ・クガクウォン[国立国楽院:Kukrip‐Kugak‐Won]があるはず、と思っていたのに、いざ奥へ来たら土手と工事現場があるだけで、クンニプ・クガクウォンはなかった。
 ええ? どうなってんの?
※Attention! クンニプ・クガクウォンのカタカナ表記は、韓国観光公社の『韓国の旅ガイド』(無料配布)によっています)

 すぐ近くに芸術の殿堂の地図があったので見てみると、クンニプ・クガクウォンはここよりももっと奥にあることになっていた。でも、道がないよ?

 ああ、どうしよう。せっかくここまで来たのに、伝統芸能の公演、見られないの? とひとり悲愴な思いにひたっていたのだが、実は芸術の殿堂を出てナンプ・ファンドノ[Nampu‐Hwandono]をさらに西に進めば、簡単にクンニプ・クガクウォンに行けるのだった(^ ^;)。

 まあ、とにかくこの時はそんなことは知らなかったので、どうしよう、どうしよう、ととまどう。
 もしかして、さっき見たにミュージック・ホール[Music Hall]ってのが本当はクンニプ・クガクウォンなのか? と思い中に入ってみたが、もちろんよくわからない。
 毎週土曜日に公演をやっているんなら、何かお知らせが出ているかも、とチラシを眺めたけどもちろんバツ。手がかりなし。

 困ったなあ、と椅子に座って天井の高いホール内を見回していたら、アクリルのケースに収まった、かなり大きな芸術の殿堂の立体模型があった。もしかして何かわかるかも、と子供にまじってのぞきこむ。

 これがオペラハウスで、これがミュージック・ホールで・・・と見ていくと、やはり芸術の殿堂の敷地最奥にクンニプ・クガクウォンの建物があるようだった。
 よし、もういっぺん行ってみよう、と勇んで外に出る。

 しかし、やはりクンニプ・クガクウォンらしき建物は見あたらないし、道もないし・・・と立ちすくんでいたら、ふらっと背後からやって来た若い男の人が、工事現場の脇へと姿を消した。え、そこに道があるの?

 あわてて後を追うと、確かにそこに道があった。男の人は、慣れた様子で先へと進んでいく。
 こりゃあ後についていくべきでしょ、と男の人の背中を追う。だが、角を曲がったのか何かで、すぐに見えなくなってしまう。早く行かなきゃ。

 ひー、こんなとこ歩いてて工事現場の人に見つかって怒られたらどうしよう、と思いつつ、男の人の姿を見失った所まで来ると、そこには工事現場でよく見かけるような、アルミ製の階段がかけられていた。これを昇っていったのか?

 いまさら引き返すのも面倒くさいし、怒られたら謝ればいいや、と思い切って昇っていくと、前方に男の人発見。そのまま後をついていくと、今度は普通のコンクリートでできた大きな階段があり、それをのぼると学校のような建物がついに姿を現した。おお、これがクンニプ・クガクウォンか。

 クンニプ・クガクウォンはいくつかの建物を「コ」の字型に配置してある。わたしが来た方向から見ると、左右と正面にそびえたつ形だ。

 ハングルで書かれた看板が出ている建物は3つあるが、このうちのどれが伝統芸能の公演をやっている建物なんだろう?

 とりあえず、建物の壁面に大きな垂れ幕がかかっている左手の建物に近づいて行ってみる。
 この時は垂れ幕に何と書いてあるかわからなかったが(ハングルばっかりだったので)、帰国後辞書で調べてみると、「土曜常設 国楽公演」と書かれていたのだった。
※Attention! クンニプ・クガクウォンのこの「土曜常設国楽公演」は、1999年内は12月18日までです)

  


国楽博物館。右側の垂れ幕に「土曜常設国楽公演」と書いてある

  

 建物の入り口は閉まっていたが、そのすぐわきに案内の看板が立っていた。英語で「何とかmuseum(博物館)」と書いてある。
※Attention! 実際には「Museum of Korean Traditional Music」と書かれていたようです)

 そうか、ここは博物館なのか・・・と思いつつさらに案内を読むと、料金の所が「Free」(無料)になっている。

 なにぃ、タダだとぅ? 貧乏人はそういうところを絶対見逃さないぜ。

 それじゃあ入ってみるかとドアを押して開けて中に入ると、すぐ右側に警備員の詰め所があった。小窓の向こうに座っていた年輩の警備員さんと目があったので、「中にはいっていい?」と目で訴えつつ建物内部を指さしたら、「どうぞ、どうぞ」とうなずいてくれた。お互い一言も発していないのに、意志が伝わるのがなんとなく笑える。
 それじゃあ遠慮なく、ともうひとつのドアも開け、博物館内に足を踏み入れた。

 入ってすぐのフロアは、上が3階までの吹き抜け、下は床が2メートルくらい掘り下げられていて、四方から階段で一番下の床までおりられるようになっている。階段が座席のように見えるので、まるで円形・・・じゃなくって、方形劇場みたいだ。

 その吹き抜けを取り囲む回廊部分には、太鼓やら編へんしょうやらの楽器が解説付きで展示されている。楽器の前には、ボタンを押すとその楽器の音を再現してくれる機械なんかも置いてあって、目だけではなく、耳でも楽しめるという趣向だ。

 順路を示す矢印にしたがって歩いていくと、韓国の伝統音楽(国楽)をいろいろなテーマで説明している部屋をめぐれるようになっている。
 簡単に書くと、

・第1室:歴史
・第2室:伝統音楽を収録したCDなどのコレクション
・第3室:伝統音楽や舞踊に関する経典
・第4室:さまざまな功績を残した演奏家たち
・第5室:世界の楽器と伝統音楽
・第6室:何かよくわからないけど伝統音楽に関するいろいろな物

がそれぞれ展示されていた。
※Web版Attention! 入り口に配布物を置いてあるスタンドがあるので、そこでパンフレットがもらえます。韓国語と英語のみ)

 展示室内の説明は、韓国語と時々英語があるくらいなので、あまりよくわからない。なので、ざっと展示品を眺める程度で通り過ぎる。

 第5室の世界の弦楽器コーナーには、日本を代表して三味線が飾られていたけど、皮は破れているわ糸巻きは折れているわでちょっと悲しい(-_-)。もうちょっと立派なの飾ってくれればいいのにー。ばちも木製だし。まあ、象牙は取引が禁止されているから、仕方ないか。

 回廊部分に展示されている楽器も見てまわる。こちらは英語の説明もあるし、漢字でも楽器の名前が書いてあるので、名前から楽器の由来が想像しやすく、韓国の楽器をあまり知らないわたしでも見ておもしろい(日本語の説明もちょっとあったかも)。

 太鼓は小さい物から大きな物までいろいろあったが、胴の色がそれぞれ赤・青・黄色の3色に塗り分けられていて、3個で1セット(一組)になっているものがいくつかあった。
 漢字を見てみると、太鼓の胴を赤く塗られたものは「路」、青は「雷」、黄色は「霊」という文字が必ず楽器の名前の前についているようである。ふむ。

  


これは確か竜鼓[ヨンゴ]だったと思う。
真ん中のマークは、地下鉄の乗換駅にも使われてるよね。

  

 中国でよく見るような、音階の違う鐘や、L字型の石板を上下2列にずらりと吊るした楽器もあった。
 ちなみに鐘だけでできたものは編鐘(韓国語でピョンジョン[P’yon‐jong])、石板だけでできたものは編磬(同ピョンギョン[P’yon‐gyong])いうそうな。
 説明を読むと、石版の材質はjade‐stoneとなっているから、翡翠(ひすい)混じりの大きな石なんだろうか? んー、なんとなくゴージャス。

  


編磬[ピョンギョン;P’yon‐gyong]
中国の故宮博物館の宝物館にもあったような。

  

 館内をひととおり見て満足。
 博物館を出ようとしたら、入り口の右側(外から入ってきた場合には左側)に韓国の伝統音楽(国楽)ばかりを収録したCDを売っている部屋があった。
 何か1枚くらい買っていこうかな、と思ったのだが、CDは壁の四方を埋め尽くすくらいにびっしりと並べられていて、とてもじゃないけどシロートのわたしに1枚だけ選び出すことなんてできなかった(^ ^;)ので買わなかった。
 値段はW8,000〜12,000(約860〜1,290円)前後でいろいろあったと思う。

 韓国語か英語がわからないとちょっとつらいものがあるが、韓国の伝統音楽に興味のある人には、来ればかなりおもしろい博物館だな、と思った。

おわり

    

 今回のMEMO  

サムルノリで使われる楽器

 
 次号、いよいよ伝統芸能の公演でサムルノリを聴くのですが、次号ではきっと楽器の説明をする余裕がないと思うので(たぶん)今のうちに。
 まあ、内容はたいしたことないです――って自分で言ってどうする。
 クンニプ・クガクウォンで買ってきた公演のパンフレット(英語版。日本語版なし)に載っていたので、それを日本語に訳してみました。なので、なんだかとても日本語がへたです(?)。むずかしいですね、翻訳って。
 それではサムルノリで使われる4つの打楽器についてどうぞ。
 


 


1.クェングァリ[Kkwaeng‐gwa‐ri]
  【一口メモ:小さな銅鑼、もしくは鉦(かね)】

 
 クェングァリは口のついた小さな平たい青銅製の銅鑼で、主に農楽(農民の音楽と舞踊)に用いられる。この楽器はプンムルノリ[プンムル=風物、ノリ=遊び]で使われる時には「クェングァリ」と呼ばれ、片方の端に節のついた木製のスティック(ばち)で楽器を打ち鳴らす。ふつう、クェングァリがプンムルノリでリード楽器として使われる場合には「サンソ」[sangso]と呼ばれる。

 


2.チン[Ching]
  【一口メモ:大きな銅鑼、もしくは鉦(かね)】

 
 チンは口のついた大きな平たい青銅製の銅鑼で、一般から軍隊まで幅広く使われている。この楽器はチョンミョ[宗廟:Chongmyo]の式典で使われる時には「テグム」[大金:taegum]、プンムルノリで使われる時には「チン」と呼ばれる。演奏する時には片手で持ち、木槌で打ち鳴らす。

 


3.プッ[Puk]
  【一口メモ:薄型の両面太鼓】

 
 両側に叩く面がある、木製の薄い樽型の太鼓のプッは、使う場合によっていろいろな物がある。プンムルノリで使われる時は「プンムル プッ」と呼ばれ、パンソリで使われる時には「ソリ プッ」と呼ばれ、「テチタ」(カタカナ表記不可能な音)[大吹打:taech'wit'a]で使われる時にはヨンゴ[yong'go]と呼ばれる。木製の胴の両側には皮が張られ、スティックは音を演出するために片面をたたくために使われる。

※チタ[吹打:ch'wit'a]=軍楽の意味。軍隊が行進する時の音楽と思えばいいらしい。

 


4.チャング[Chang-gu](別名「チャンゴ」[杖鼓:Chang‐go])
  【一口メモ:大きな鼓(つづみ)。能の大鼓(おおかわ)に近いと思う】

 
 この砂時計型の太鼓は、実質上すべての形式の韓国音楽で使われている。
 チャングは、コグリョ[高句麗]時代の古代の壁画とシルラ[新羅]時代の仏教寺院の鐘から描写されている。チャングはしばしば、そのくびれた胴に関連して「セヨゴ」[seyogo]と呼ばる。異なる大きさのチャングは、異なる種類の音楽で演奏される。チャングは主に、軽快かつ複雑な調子を演出する器楽曲作品の中で使われ、また民族歌謡やプンムルノリ、祭礼音楽の伴奏などにも使われる。

  

 今回のおこづかい帳  


今回はなし

今回の小計:W0
支払い総計:W105,100(約11,290円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 

 
 クガク・パンムルグァンリポートでした。いかがでしたでしょうか?
 ここは入場料無料ですけど、なかなか見所が多かったと思います。ほんと、韓国の伝統音楽に興味のある方にはおすすめですね。
 わたしも興味がないわけではないのですが、説明書きが読めなかったのがつらかったですねえ。でも、楽器を見るだけでもけっこうおもしろかったですよ。

 それではまた、次号でお会いしましょう。

  


  

4日目の1――音声ガイドとボケ&ツッコミ/国立民族博物館の巻

4日目の2――あれは何? あぶられた丸い和紙の巻

4日目の3――ソウルで仏像三昧/ガンダーラ展の巻

4日目の4――やったね、タダだ!/国楽博物館の巻

4日目の5――パーカッションのリズムに感動/伝統芸能鑑賞の巻

4日目の6――MISSION−「N」の巻

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