『ソウル7日間徒然日記』 1999年7月12日(月)記


 
第40号


6日目の4――これは干菓子ではなかった/茶食(タシッ)の巻

2000年2月15日(火)発行

 

■ チャンチュン・コンウォン[奨忠公園]近辺

 
 プルヒャンギを出た後、腹ごなしのために、来る時地下鉄駅出口から見たあの大きな噴水のある公園を散策してみることにする。
 道を渡って公園に近づくと、噴水の向こうに時代の古さを感じさせる壮麗な石橋がかかっているのが見えた。
 おお、あんな見事な橋があるなんて、ここは有名な公園なのかな?

 ガイドブックを見ると、この公園の名前はチャンチュン・コンウォン[奨忠公園]だった。
※Attention! 本によってはチャンチュンダン・コンウォン[奨忠壇公園]になってます)

 ただの公園ではなく、韓国のジャンヌ・ダルクといわれるユ・グァンスン[柳寛順]の像や、ハーグ万国平和会議で日本が大韓帝国の国権を奪った事実を訴えようとしたイ・ジュン[李儁]の像などが点在しているとのこと。

 ふうん、せっかくここまで来たんだから見ていくか、とくだんの橋を渡って公園内に入り探したのだが、公園は敷地の一部を工事中で、銅像のたぐいはいっさい見かけなかった。残念。
※Attention! ユ・グァンスンの像は、実際には奨忠公園の向こうにある奨忠野球場の、さらに向こうにあるそうです。奨忠公園にある、というよりは、南山公園の端っこにある、という方が正解のような気がする)

 とりあえず公園内を一周していくか、と思って奥に進むと、空を覆い尽くすほど生い茂った木が植えられているスペースがあり、ここのベンチにもチョンミョ[宗廟:Chong‐myo]同様、たくさんのおじいさんたちがずらーっとすずなりに座っていた。
 うーん、ホント、こっちのお年寄りは外で時間を過ごすのが好きだなあ(おばあさんはひとりもいなかったけど)。

 お年寄りたちはそれぞれ、相手を見つけては将棋や囲碁、花札に興じていた。
 空き地ではなんと、ゲートボールをしているおじいさんたちもいる。
 へえ、ゲートボールって日本のお年寄りだけがやっているスポーツじゃなかったんだ。知らなかった。

 この公園からは南山公園にあるソウル・タワーがよく見えた。
 ふむふむ、そういう位置関係になっているのか。

 公園の一番奥、フェンスの向こうに体育館のような建物がある。
 後で地図を見たら、同じ位置に東国大学校があったので、大学の体育館だったのだろう。

 公園の外に出て、公園外周に沿って歩く。すると、今度は右手の山の上にホテルが現れた。
 何ホテルだろう? と見上げると、シルラ[新羅]ホテルの文字が。
 ああ、これがあの有名な。

 貧乏人のわたしには縁のないホテルだが、以前ここに泊まった知人から、お土産にシルラ・ホテルの室内備品のひとつであるあかすりタオルをもらったことがある(笑)。
 いま考えてみても、安上がりな土産だ(なにせタダ)。

 こんな近くに見えるんだから、ホテルの中くらい見学しに行ってみるか? と思ったのだが、この時わたしが歩いていた道(奨忠壇キル)からホテルに行く道は見つからなかったのであきらめる。すっごく行きたかったわけじゃないから、まあいっか。 

 ちなみに帰国後に知ったのだが、現在シルラ・ホテルの迎賓館が建っているところには、かつては伊藤博文をまつった「春畝山博文寺」[チュンミョサン・パクムンサ]というお寺があったそうな。
 ひええ、そんな寺があったとは。それもソウル市内に。

 伊藤博文がアン・ジュングン[安重根]に暗殺されたのが1909年、春畝山博文寺は1932年に完成している。
 戦後日本軍が撤退し、空になった堂内には、一時期アン・ジュングンの位牌がまつられていたというから2度びっくりである。ホンマかいな?

 そんな歴史を持つシルラ・ホテルを背に、わたしは公園の噴水と橋(水標橋という名前だった)の写真を撮り、トンデイック[東大入口:Tongguk Univ]駅からチョンノ[鐘路:Chongno]へ戻った。

  


  

 

■ まずい?

 
 地下鉄3号線チョンノ・サンガ[鐘路3街:Chongno‐samga]駅で下車。地上に出て、一瞬自分の現在地を見失いながらも、さすがにソウル滞在6日目、すぐに方向感覚を取り戻し、ナグォン・サンガ[楽園商街:Nagwon‐sangga]方面へ。
 何が目的かというと、ナグォン・サンガの裏手にある伝統菓子のお店で生菓子を買うのだ。

 お店は・・・うん、開いてる、開いてる。うほほー、相変わらず店先には、かごにぎっしり詰められたお菓子がいっぱいある。ううん、目移りするなあ。どれを買おう。

 日本の「雷おこし」によく似た、お米でつくった揚げ菓子は、大きな篭に詰められた物しかないので持ち帰れないからパス。白と緑の餅菓子は、持って帰るまでに固くなりそうなのでこれもパス。
 やっぱりここは手堅く日持ちしそうなユミルグァ[油蜜果](別名:ヤックァ[薬果])を1パックと、こっちの干菓子(ひがし)みたいなお菓子を2パック買っていくか。

 ここで売っているユミルグァは、トンイン[通仁:T’tong‐in]で買ったもののように個包装ではなく、4個入りで1パックになっている。値段は1パックW1,000(約108円)。しかし、干菓子みたいなお菓子のほうは値段が出ていないのでわからない。

 一応、お店の女性に「オルマエヨ?」(いくらですか?)と訊いてみたが、例のごとく相手の言う値段を聞き取れなかったので、これだけあれば足りるだろう、とW10,000札を渡したら、W5,000返ってきた。
 ということは、干菓子みたいなのは1パックW2,000(約215円)なのか。高いものではないんだな。

 さてこの干菓子のようなお菓子。正式名称(?)はタシッ[茶食:ta‐sik]という。
 かたちは小さな円形で、直径は3cm、厚みは6mmほど。タシッパン[茶食板]という型で抜いているので、表面には花の模様やら幾何学模様やらがきれいに浮き出ている。
 形から言うと、干菓子というよりは小さな落雁(らくがん)という言い方のほうが近い。

 わたしが買ったものは、黒、緑、茶、黄色の4種類のタシッが合計20個入ったものだった。プラスチックのパックをホッチキスで留めただけという、えらく簡単な包装にもかかわらず、4か月も保存できると説明書きには書いてある。

 わたしは干菓子が好きなので、このタシッもそんな感じの味なのだろう、と見た目から勝手に想像し、いざ実食、と口に入れてひと噛みしたら、ガッと音がした。
 何だ、これ? かたいぞ。

 干菓子は和三盆(わさんぼん)という目の細かい砂糖でつくられたお菓子なので、口に入れるとほろりと崩れるわけなのだが、このタシッはどうやら違うらしい。
 まあ、かたいだけなら別に構わないんだけど、味が・・・ま・・・まずくないか、これ?

 タシッって何からできているんだろう、と調べたら、材料は色によって違い、黒いものは黒胡麻、緑色は抹茶、茶色は勝栗粉(?)、黄色は松の花粉を、それぞれ蜜で練ってつくられているそうな。
 むう。材料から判断するかぎりでは、まずいものでもなさそうなんだけど。

 しかし、いくつか食べたのだけど、どうしてもわたしの口には合わなかった。なんかまるで、蝋(ろう)でできた食品サンプルを食べているみたいなのだ。
 実際、もしかしてこれは食べ物なのではなく、本当は置き物なんじゃなかろうか、と疑ったのだが、賞味期限が書いてあるのだから、やはり食べ物であるらしい。

 うーん。見た目はおいしそうなのになあ。

 家族にも食べさせてみたが、1個食べた後、残りをずーっと放置しているところを見ると、どうやらやはり口に合わなかったようだ。

 このタシッだけがこういう味なのか、それとも他のタシッもまずいのか? 今のところ謎である。
 くそう、次こそはおいしいタシッをGetだぜっ!
※Attention! ユミルグァはおいしかったです)
  


    

 

■ 荷造り、他

 
 あれこれ買い物をすませてホテルに戻ったのが午後3時半。
 さすがにもうこれ以上は買い物しないだろう、と踏んで、荷造りを始める。
 もともと小さなスーツケースで来たので、お土産を詰め込むと中はかなりパンパンになる。これじゃあこっちで買ったシャンプーやリンスは持ち帰るのをあきらめなきゃダメそうだ。うう、持って帰りたかったのにー。

 ちなみに、チョンガッ[鍾閣:Chonggak]の地下商店街で店員の女性にすすめられて買った例のリンスは、確か名前を「セクシー・マイルド・リンス」(Sexy Mild Rinse)といったと思う。

 このリンス(とシャンプー)は、韓国でメグ・ライアン(Meg Ryan)をCMのキャラクターに起用して宣伝したそうなのだが、メグ・ライアン、うっかりどこぞでこのリンスを指して「変な名前でしょ?」と言ったものだから、メーカー側から非難を浴び、あわてて謝罪したそうである(名前が変かどうかは別にして、確かに自分が宣伝している商品をそんな風に言うのはよくない)。
 うーん、韓国でそんなことが起きているとは。

 日本の「のほほん茶」も、どこかで何か言われているかもしれん。
※Attention! 日本以外にお住まいの方へ:日本ではメグ・ライアンが、サントリーから出ている「のほほん茶」というへんちくりんな名前のお茶の宣伝をしているのです)

 とりあえずいったん荷造りを終え、ベッドでごろごろしながらTVを見つつ休憩。
 話には聞いていたが、本当にこちらは午前11時〜午後5時まで、韓国系のTV局の放送がない(在韓米軍放送:AFKNはやってる)。
 しかし、4時45分ごろにKBSをつけたら、「そろそろ放送始まるよ」というような画面が映し出されていた。

 そして5時5分前になると、韓国のあちらこちらの名所・旧跡、そして伝統芸能のシーンを集めた映像が、国歌とともにながれはじめた。
 うーん、なかなかきれい。

 そしてそれが終わると本放送が始まったわけだが、時刻はまだ5時。外は明るい。
 よっしゃ、もうちょっと外で遊んでくるか。

おわり  

  

 今回のおこづかい帳  

 
 地下鉄:W  500
伝統菓子:W5,000

今回の小計:W  5,500
支払い総計:W287,000(約30,860円)+34,591円

(※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)

 

 編集後記 

 
 いろいろリポートでした。だんだんテーマにまとまりがなくなってきましたね。タイトルも、もうほとんど無理矢理つけてます。

 今回はユ・グァンスンやらハーグ密使事件(韓国ではハーグ特使事件か?)を「今回の韓国語MEMO」で取り上げてみようと思ったのですが、手元にある資料には、あまり載っていませんでした。
 ハーグ密使事件にいたっては、事件の起きた年号しか載っていない本も多かったです。あの事件をきっかけに、日本は時の大韓帝国皇帝(コジョン[高宗])に退位をせまったわけですから、もうちょっととりあげてもよさそうなものなのですけどね。

 タシッ[茶食]の方はですね、ああいう味のものなのですかねえ(-_-)。
 今度またソウルに行ったら、別の店で買ってみたいと思います。

 そうそう、タシッパン[茶食板]はお土産屋さんで売ってました。別のお菓子を作るときにも使えそうなので、興味のあるかたは探してみてくださいね。

 それでは、また次号でお会いしましょう。

    


  

6日目の1――無計画・チョンノそぞろ歩きの巻

6日目の2――お土産探しにインサドンへの巻

6日目の3――お昼ご飯は草の香りに包まれて/プルヒャンギの巻

6日目の4――これは干菓子ではなかった/茶食(タシッ)の巻

6日目の5――ふたたび本屋はパラダイス!(3) の巻

6日目の6――最後のディナーはサムゲタン[参鶏湯]の巻

6日目の7――「五」は何の「五」? の巻

1日目

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