|
第42号 | |
|
6日目の6――最後のディナーはサムゲタン[参鶏湯]の巻 | |
|
| |
|
■ サムゲタン[参鶏湯] | |
|
YMCAホテルのずーっと裏手に、テファグァン[泰和館]・ギルというインサドン[仁寺洞]・ギルと交差する道がある。インサドン周辺をうろうろする時に、何度か通ったことがある道なのだが、この道沿いにイロクジョ[一億兆]という、弥勒菩薩だって余裕でこの世に降臨して来そうな名前の店があったのだ。 店が入っているビルの壁面には、屋上から「ポッサムキムチ販売中」みたいなことを日本語で書いてある大きなたれ幕が下がっていて、日本人の目にはすごく目立つ。 ふうん、サムゲタンって、W7,000(約753円)くらいで食べられるものなのか。 この店はホテルから近いし、機会があったら食べに来てみようかな、と思っていて、ついに今夜その時がやってきたというわけだ。 ガイドブックやら何やら、いらないものはすべて部屋に置いて身軽になって外に出る。 さて、インサドン・ギルに出てからテファグァン・ギルへ。イロクジョは・・・うん、開いてる、開いてる。 入り口をはいったすぐのフロアには、パーマ頭にジャケットを着て、バッグ1つを持った年配の女性が、食事もしていないのに、なぜかテーブルの1つに座を占めていた。 案の定、奥から出てきたエプロンをした女性がわたしに話かけようとしているにもかかわらず、そのおばちゃんはわたしを見るなり「上に行け!」というようなことを、身ぶりを交えて話しかける。 どうしたもんだろか? と悩んだが、あまりにもそのきっぱりとした物言いに負けて、わたしは奥にある階段を昇って2階にあがった。しかしそこには、がらーんとした何もない空間が広がっているだけだった。部屋の半分は電気がついておらず、隅には椅子やテーブルが積まれている。 ということは、あのおばちゃんはたったひとりで店に来たわたしを、団体客のひとりだと思ってここに来るように指示したのだろうか? 何はともあれ、こんなところで途方に暮れていてもしかたがない。下に降りる。すると、エプロンをした女性が、心配そうな目をしてわたしを待ち受けていた。 エプロンの女性に連れられて、奥の客席へ案内される。ここの席にどうぞとすすめられて椅子に座った途端、わたしは視界右斜め前方に例のおばちゃんを捕捉した。 しかしいまさら席を変えるのも面倒くさかったので、そのまま座りながらサムゲタンを注文する。その後は、今までのどの食堂とも同じく、すぐにキムチやカクテキ、水がやってくる。 店の中には、他に3組ほど客がいた(おばちゃん除く)。日本人のカップルと、韓国人の男性4人組、それに韓国人のカップル。 待つことしばし。やがて温かい料理のお決まりどおりに、じゅうじゅうと音をたてながらサムゲタンがやってきた。 さてサムゲタン。実は今回初めて実物を見た。びっくりした。 ところがどっこいサムゲタン、石でできた丼の中に、どーんとにわとりが一羽、透明なスープにひたって仰向けに入っているではないかっ!? にわとりと言ってもひな鶏なので、それほど大きくはないが、これ一羽全部食えというのか? と胃弱&小食のわたしはちょっと口元がひきつったが、まあ人生何事もイチからこつこつやろう、と思い直し、食べ始める。 にわとりは、姿かたちそのまま入っているので(頭はない)、それをチョッカラッ[箸]やスッカラッ[スプーン]で解体しつつ食す。思わず、ああ、これがあばらで、これが手羽先か、なんて確認してしまう。そして解体後の骨は空の小皿へ。 しかし、にわとりの中はそのままではなく、いろいろ詰め物がされているのだった。わたしが確認した限りでは、もち米、なつめ、高麗人参、栗。 そうして食べていると、突き刺さるような視線が右斜め前方から飛んできた。うう、見なくてもわかるぜ。絶対あのおばちゃんだ。 予想は的中で、おばちゃんはエプロンの女性を呼びつけると、わたしの方をちらちらと向きながら何事か言っている。エプロンの女性はうん、うんとうなずいた後、その指令を伝えるべくわたしの席へ。 エプロンの女性もわたしも、当然お互いの言っていることはわからないのだが、どうもわたしのサムゲタンの食べ方が違う、と女性が言いたいらしいことはわかった。そして塩の小皿を指さす。 自分の技術指導がうまく伝わって、おばちゃんもほっとしたようである。わたしも心の中で感謝する。 にわとりを解体しつつ食べたので、食べ終わるまでにけっこう時間がかかってしまったが、美味だったので文句なし。淡泊で、実にわたし好みな味だった。 もう一回くらい食べる機会があればよかったな。この味を知ったのが、最後の夜だったことが非常に残念である。 | |
|
■ 種(たね)? | |
|
この交差点はソウル滞在中よく使ったのだが、その角にはいつも夜になると食べ物の屋台が出ていた。 いつもはたいして気にせずに通り過ぎていたのだが、ふと、屋台からただよってくるいい匂いにひかれてそちらを見た。 そういやこのスイカの種みたいなの、ソウル中のあちこちでよく見るなあ。あれはいったい何なんだろう? そうしてそれをよく見ると、つやつやとした光沢を放つ茶色の種(?)の表面には、蛇腹(じゃばら)のような細い溝がいく筋も刻まれていた。それを見た瞬間に気付いた。 ああ、あれ、蚕(かいこ)だ。 中国でも食べるんだよね、蚕。以前わたしは中国国内を移動する時、中国東方航空の機内で、飲み物のおつまみとして蚕を出されたことがある。 ちなみにわたしは虫が大っ嫌いなので、そのおつまみは袋の中身も見ずに捨てた(すみません、食べ物を粗末にして)。その旅行の時のわたしの連れ(銀)は、中身を見てから捨てたそうな。 韓国のこの蚕のさなぎをゆでたものは、「ポンデギ」というと本に書いてあった。 シルク(絹)をつくる国って、どこでも蚕を食べるのかな? ということは、昔は日本でも食べたんだろうか?(いなごは聞きますが) こんなところに韓国と中国の共通点があるとは思わなかったので、「ほっほー、意外、意外」と心の中でつぶやいたのであった。 おわり
| |
|
■ 今回のおこづかい帳 ■ | |
|
●今回の小計:W7,000 (※レートは1999年7月当時、¥100=W930で計算しています)
| |
|
■ 編集後記 ■ | |
|
サムゲタンは名前はよく聞きますけれど、見たのも食べたのも初めてでした。にわとり(ひな鶏)が1羽まるまる入っているとは思いませんでしたよ。 ポンデギは、匂いがすごくいいんです(ちょっと青臭い感じもするが)。だから味もけっこういけるんでしょうね(実際おいしいそうです)。 それでは、また次号でお会いしましょう。
|
|
6日目の1――無計画・チョンノそぞろ歩きの巻 | ||||||
|
6日目の2――お土産探しにインサドンへの巻 | ||||||
|
6日目の3――お昼ご飯は草の香りに包まれて/プルヒャンギの巻 | ||||||
|
6日目の4――これは干菓子ではなかった/茶食(タシッ)の巻 | ||||||
|
6日目の5――ふたたび本屋はパラダイス!(3) の巻 | ||||||
|
6日目の6――最後のディナーはサムゲタン[参鶏湯]の巻 | ||||||
|
6日目の7――「五」は何の「五」? の巻 | ||||||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|