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美女の谷飲んだくれ紀行
〜エゲル〜
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旅に出る前から「ここだけは必ず行くぞ!」と決意していたエゲルの美女の谷。
ワインセラーが70軒以上も立ち並び、1杯20円程度で出来たてワインが試飲できるというのだ。ちなみに購入する場合は1リットル単位で200円くらいからあるらしい。
「に、にひゃくえ〜ん!!!!」
この感動モノの安さ。しかしワインを持って帰るのはあまりに重すぎる。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
いや、これはもう限界まで飲んだくれるしかない・・・・。
「さあて、美女の谷はどっちかな。」
ガイドブックに載っている地図のあいまいな矢印ではちゃんとした場所がわからない。
とはいえわずか3kmにタクシーを使う気にはとてもなれないケチな私(っていうかそれ以前にタクシーが走ってない!)。
と、町なかで案内板(美女の谷はこっちと書いてあり、矢印がある)を発見!
「これに従って行けばいいのかあ。こりゃ便利、便利」
そう思ったのもつかの間。わずか数百mで5叉路にぶつかったしまった。
ううう・・、すでにどっちへいったらいいのか分からない・・・・・。
ふと見れば、ちょうど角に雑貨屋があるではないか。
水(ワインで酔ってきたらこれを飲んで胃の中を薄めるつもり)を買いがてら、どっちへいけばいいのか聞いてみよう。
と思ったら店先に大きなエゲルの地図を発見。しっかり美女の谷の位置を確認し、さあレッツゴー。
墓場の横を抜け、住宅地を抜け、気が付くとどこからともなくワインの香りが漂ってくるような気がする(これってただの思いこみ?)。
と、突如として目の前に窪地が広がっているではないか。
「これだ〜!これにちがいない!」
わくわくしながら坂道を下っていく。
ゆるやかに円を描くように下る坂道の右側の山肌には早くも穴蔵がいくつも並んでいるのが見える。
「これがセラーだな。」
よく見ると入口の上や横になにやら番号が書かれているではないか。
どうやらこれがいわゆる屋号で、ひとつひとつが異なる農家のものらしい。
ちなみに坂にあるのは50番台のセラーだった。
しかし、この辺りのセラーは残念なことにほとんどが固く門を閉ざしている。
ちょっと季節はずれだったせいかなあ。。。。
と、のぞきこむこといくつめかでやっと開いているセラーを発見!
そっと覗くと巨大なワイン樽がいくつも並んでいるのが見える。
しかし入口に座っていたおじさんはそんな私を見ても「フン」という態度。
「もしや時期はずれで飲ませてくれるようなワインはないのだろうか...」
不安にかられ私が通り過ぎたとたん、うしろからおやじの大きなかけ声がしてきた。驚いて振り向いてみると何と彼は私のうしろを歩いていた初老のドイツ人らしき夫婦連れを自分のセラーに呼び込んでいるではないか。
「やられた!」
そう、私はこの童顔と貧乏そうな風体のせい(?)で相手にしてもらえなかっただけだったのだ。あわててとって返したが、時すでに遅し。
おやじも夫婦も姿はおろか声すら届かぬほど穴蔵の奥へ行ってしまっていた。
くっそぉ〜〜!!!!
がっくりしながらもさらに坂を下り、”谷”に降り立った私の前に広がっていたのは、いくつものレストランとみやげ物屋のテント、そして数台の観光バスだった。
「す、すごい…」
そう、ここはまさにワイン天国だ。歩いているだけで弱い人なら酔ってしまいそうなワインの香り。なぜか同じフレーズばかりくり返されるバイオリンの音色。そしてすっかり”できあがった”人々の陽気な歌声。右も左も大小さまざまのセラーが並んでいる。穴蔵タイプもあればレストランタイプもアリ。とにかくよりどりみどり、思わず目移りしてしまう。
「よお〜っし! とにかく限界まで飲むぞぉ〜」
(かなりやる気満点!しかし実はお酒は弱い私)
坂を下ってまず目に入ったのが5番のセラー。ところが入ろうとしたとたん、入口にいたおやじが怒り出した。
「そんなに怒ったって、何言ってるのかさっぱりわかんないよ。」
たじろぐ私、どなるおやじ。 どうやら今日はもう店じまいらしい。しかしいきなり怒ることないじゃないか。私もなんだかぷんぷんしてきた。どういう理由があったのかしらないが、このセラーでぜったいワインなんて買うもんか!
いきなり連続でため息のでるような対応をされ、意気消沈しつつもとにかく突き進む私。
そんな私に天使の微笑みを投げかけてくれたおばちゃん。その笑顔に誘われるまま、ついに13番のセラーへ突入。中では若者がチーズを片手に大宴会中。その脇をすりぬけるように奥のカウンターへ。1リットル400Ft(約160円)という安さに思わず心奪われるが、まずはとにかく試飲から。
「ビカヴェールを1杯おねがい!」
声をかけると、またたくまにコップにたっぷり注がれたワインの登場。
ちなみにどのセラーもビカヴェールを始め、ムシュコターイ、レアーニカなど幾種ものワインを扱っている。だから頼むときはきちんと好みのワインを指定しなければならないのだ。もちろん全種類してもいいが、これからセラーを回るというのに一軒で数杯飲んでいたらとてもとても体がもたない(なんてったって70軒。しかもどれが好みのセラーなのかは飲むまで分からないという怖さ。もちろん限界に挑戦してへたれている輩もそこらにうようよいる)。なお、この試飲、セラーによって有料の場合と無料の場合がある。有料といっても大きなグラスにめいいっぱい入って20円程度。水より安いじゃん!(何杯か試した結果、有料のところのほうが味がいいような気がした。これって気のせい???)
さて、このセラーのビカヴェールはどんなもんだろう。軽くて飲みやすい。でもこれってちょっと若すぎるんじゃないかなあ(などと通ぶってみる。よーするに私的にはイマイチということ)。香りもちょっと薄いかんじだし…。
よし!次だ!
といってもコップ1杯飲むのはけっこう大変。しかし先は長いのだ。がんばるぞ。
続いて48番へ。ここは商魂たくましい夫婦で営業中。
日本人の女の子ということでもの珍しさもあってか「これ飲めや。あれ飲めや」といろいろ勧められてしまう。
ついつい言われるままに飲んでしまう心弱きわたし…。
甘口のメディメとやや渋いケークフランコシュはいまひとつ。
「ここは1リットル300FTと安いしなあ。やっぱりそれなりってこと?」と思いつつ、続けてメルローを。ん?これはまあまあかな。いやいやしかしこの程度で満足してはいけないぞ。陽気なご主人にほかのお客さんが話しかけた隙をねらって、にっこり笑顔で退場。
さてここらですでに足もとがアヤシくなってきている。
やっぱワインだけ飲んでちゃいかんなあ。つまみが必要だよなあ。と思ったところにひまわりの種を売っているおばあちゃんを発見。
「これはおいしいんだろうか…」
のぞきこんだ私を"いいカモ"と判断したのか、ばあちゃんしきりに種を売りつけようとする。しかし値段はやや高め(小さい袋ひとつで100FT。ワインの値段を考えると非常に高い気がするゾ)。
「負けてなるものか」応戦体勢(つまり値切りにかかる)に入った私だが、このばあちゃん超頑固。15分くらい戦ったが・・・・・・・
負けた(言い値で購入)。とほほ。でも、この種意外においしい。
ぽりぽりぽりぽり。
まさにやめられないとまらない。ワインのつまみにかなりいいかも!
だんだん日が傾きかげんになってくると、右にも左にも”できあがった”人々が現れ始める。なかでも注目だったのが20代前半くらいの痩せ型まじめ風の若者1名(ひとりってことはドイツあたりからの旅行者か???)。
ふらふらふら〜と見るからに足取りがアヤシイ。
その彼がセラーからセラーへ移動して回る音楽隊3人組をつかまえておもむろに歌い始めた。これがまた超ド級音痴。しかし、音楽隊の方もかなりヘタ(それとも彼らも酔っぱらっているのか?)で、どっちもどっちで音が外れるのだ。さすが飲んだくれの天国。
ひと呼吸おいて、トイレも行って(50FT)、すっきりしたところで再び戦場へゴー!休憩後一発目は41番。そっとのぞいたら中ではなんとドイツ人のおじちゃんおばちゃんが大騒ぎ中。さりげな〜っく紛れ込んで、そっとワイン飲んで出て来ちゃおうって思ってたのに、気づいたら一緒に肩をくんで歌っていた(もちろん歌詞は適当に合わせている)私。ちなみに試したビカヴェールは渋み酸味ともにやや強め。オトナの味って感じかな。
続いて爽やかな風体のおにいちゃんに惹かれ36番へ。店内は閑散。こりゃまずいのか?と思って試したビカヴェールはなかなかどうしてあと味すっきり。せっかく日本から若い女の子(ホントは若くないが、勝手に誤解してくれてるようなのでそのままにしておくことにした)が来てくれたんだからと出してくれた93年モノがイケてる!ここらですでに限界の限界。おにいちゃんには「よかったら夜ディスコ行かない?」(この静かな町にもディスコなんてあるのか?)なんて声をかけてもらったけど、とてもじゃないがもうダウンです。歩けるうちに帰らなきゃ、さすがに野宿はやだもんね〜。
ふらふらになりながら坂道を上っていると、さっきは開いていなかったセラーのドアが開いている。思わず覗きこんでみると、おじさんが熱心にワインの出来を確認中。しかもこのセラー、お客サン用のカウンターやテーブルがない。
ということは純粋に"造る"ためのセラー?
そういえば入り口付近でももうヒンヤリとした風が漂ってくる。ずらりと並ぶ樽も圧巻。おもわずおじさんに
「写真撮らせてくださ〜い!」
おじさん快くOK。しっかり奥まで入りこんでパシャパシャ写真を撮らせてもらってしまった。話しを聞いてみるとおじさんがここで造ってるのはレストランと契約している特別のレアーニュカ(すっきりとした飲み口の白ワイン)なんだとか…。
「ちょっと味見してみるかい?」
わ〜い!もっちろん!!!
(さっきまでもう飲めないよ〜とわめいてたことはすっかり忘れている)
大きな樽から直接注いでもらい、冷え冷えをひとくち。
お、おいし〜い♪
今まで飲んできたものとはまたひと味ちがうおいしさ。キレがあって爽やか。
思わず「このワイン少し売っていただけませんか?」と口走ってしまったよ。(持って帰るは重くて大変だからやめようってきめてたはずなのに)
でも「これはもう全部」契約しているぶんだから売れないんだよ」って断られちゃった。くぅ〜残念。
とにかく最後にこのワインでしめくくれてホントに大満足!
しかしなぜ「美女」の谷って名前なんだろう????
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