夢を
もどる

ところで、今朝、電話が入った。

明るく、弾んだ声だった。

「ニュース見ました? アメリカとイギリスが空爆しましたよ。

一気に株価が上がっています。 絶好のチャンスですよ。

石油も、軍需産業も、弱電も銀行もみんな上がっています。」 と

 

戦争がとってもうれしそうだった。

 

勝ち組は胸を張って、ベンツに乗って

パレードをするのだろう。

負け組は小さなラジオの音楽に 耳を傾け

粗末な夕食を取っているのだろう。

 

何が勝ち組で、

何が負け組なんだかなんて知らないけれど。

 

元、やくざの組員が

ニコニコしながら語る。

本当によかった。

おやっさんのところで板前の修業ができて、

いつか小さな店を出して

お袋に食べさせるのが夢ですね。

ずいぶんと親不孝してしまったし・・・。

 

一杯のお茶を愛して、

切腹して死んだ男は

負け組だったんだろう。

宿屋の2階でおっきな夢を見ながら、斬られて死んだ男も、

王の位を捨てて、衣1枚で死んでいった男も、

乞食をしながら、酔ってコオロギと寝ていた男も・・・。

みんな負け組で、地獄に堕ちたのだろう きっと。

 

 

人生は結果を出すことかも知れないけれど、

そう言うオレも、夢ばかりを見ていた。

そして、

夢を見ているうちに、

時が過ぎてしまった。

それで良かったのかどうか、

オレにはわからないけれど。

 

宝くじを買った

当たったら、あれも買える、

これも買える

当たったら、あれも出来る、

これもできる と、

もし、当たったら、、、、

 

でも、当たらなかった

今度も、

そう、また今度も 

当たらなかった

 

そして、そんな事を夢見ながら

時間だけが過ぎていった

それで良かったのかどうか

オレには わからないけれど

 

パチンコ屋にもいった。

少し儲かったこともあった。

スッカラカンになった事も

何度もあった。

とぼとぼ歩いて帰りながら

自分に言い訳を言った。

少しばかりのお金が欲しかったのだろう。

 

いつかはお金持ちになれると思った。

もしかしたら、少し有名人になれるかも知れないと。

そのために少し努力もしてみた。

ネクタイも締めてみた。

 

でも、ただのお人好しでしかなかった。

なんにも、残せなかったし、何もしてあげられなかった。

なんだか, にが笑いで 一時 夢が 醒める。

 

夢をみているうちに

時間だけが過ぎていった。

それで良かったのかどうか

オレにはわからないけれど

 

同じ道を歩いてると思った

同じ物を見てると思った

でも、そんなはずはないよね

いつの間にか君は

ずいぶんと離れたところを歩いていた

「おい」と声をかけると

「だいじょうぶ」と君は応える

 

「お〜い!」と呼んでみる

もう、なにも返らない

 

広い砂漠のように

実は道ではなく、

何処へでも歩いていけた

振り返っても何もなかった

目を細めても、何も見えなかった

ただひとり立ち止まると

絶え間ない風が

足跡さえも すぐに消して行った。

 

夢をみているうちに

時間だけが過ぎてゆく

オレはただ、それを眺めている。

それで良いのかどうか

オレには分からないけれど

 

古い煉瓦の壁を眺めていた

変色し、角が取れて、

苔さえ生えていた

どれだけの時間が流れたのだろう?

 

古い木造の家にいた

廊下の板には丁寧な 

つぎあて があった

よく見れば柱にも敷居にも 

つぎあて があり、

床板は木目や節が浮き上がり、

色は濃い灰色で、艶もなかった

 

気がつけば

そう言うオレの手も 

もう、すっかり艶を失い

腹は出て、髪は白くなり、

文庫本の字が

ずいぶんと読み難くなった

 

新しい檜の板が新築現場に運ばれ、

木の匂いを一杯に発散して 

床に張られた

その、なめらかな肌は 初々しく 

誇らしげに見えた

 

にもかかわらず、

オレは時間の経過に捕らわれている

古い煉瓦に染みついた空想の物語を

つぎあてされた廊下の板に見る

人の生きざまを

わびだの、寂だの、

そんなことは分からない

だが、時間が作ってくれた美しさも 確かにあるんだよね

 

古い煉瓦も つぎあてだらけの家も

老いてきた私の身体も

唯、唯、汚いだけかも知れないけれど

 

夢を見ているうちに 

時が過ぎてしまった

それでいいのかどうか 

オレには分からないけれど

 

桜が散って、

木々の若い芽が一斉に出そろった

生命の美しさよ

めぐる季節の美しさよ

 

もう、構えた銃をおろそうよ

「銃を持て!」と言ったのは誰?

ねえ、もう、銃をおろそうよ 

銃で得る利益は何?

 

君は赤が美しいと言った

オレは青の方が美しいと言った

どちらの色が美しいか、

たった、そんなことで

俺たちは銃を構え、策略を練っている

 

憎しみ合った日々

うたぐり続けた日々

 

汚れた日記はどんどん分厚くなって、

互いにこころを見失ってしまった日々

ほんとうに夢見ていたモノは

なんだったのだろう?

 

雨が大地をしっとりと濡らし、

木々を 雑草を 

豊かな緑に変えて行く

 

夢を見ているうちに

時は過ぎてしまった

それで良かったのかどうか

オレには分からないけれど

 

終わりはどこにあるのだろう?

もう、目の前に来ているのか?

それとも、まだ時間があるのか?

まあ、仕方がないことだけどね。

もう少し夢を見ていたいけれど・・。

 

夢は果てしなく遠いところに

あるような気もするし、

すぐ、目の前にあるような気もする。

 

あるいは、今が 夢以上に

すばらしモノなのか・・・?

 

まあいい、とにかく、

夢も酒も

いつかは醒めるものだから。

 

ただ、夢が酒と違うのは

夢は、棺の中まで持って行ける という事だろう。

 

ただ一つ、棺の中に持って行く夢。

 

生まれ変わって、

また、君に出会いたい。

 

夢を見ているうちに

時が過ぎてしまった。

それで良かったのかどうか

オレには分からないけれど。