第11回「ティンダル訳聖書、欽定訳聖書」

ウィクリフ訳聖書が出版されてから150年ほど経った宗教改革の時代、ウィクリフと同じイギリスのウィリアム・ティンダルが聖書をギリシャ語とヘブル語の原典から英語に翻訳しました。

しかし、当時のイギリスではまだ宗教改革が本格的に始まっておらず、当然のことながら、ティンダルの聖書翻訳は危険と苦難が隣り合わせの仕事でした。ティンダルはヨーロッパ中を逃亡しながら翻訳を続け、完成した原稿をドイツで印刷してイギリスに密輸しました。

この英訳聖書は全部で8000冊印刷されたと言われていますが、教会当局に発見され次第、没収され、燃やされてしまったため、現在では3冊しか残っていません。ティンダルは、この聖書翻訳の罪により捕らえられて、絞首の上で火刑に処せられました。

しかしティンダルの翻訳は非常に素晴らしく、その後も、ティンダル訳から注解部分を除いた本文だけの聖書が別な発行人により出版されたり、それに刺激を受けた人々によって、様々な英訳聖書が出版されるきっかけとなりました。

そして1611年、イギリス王ジェームズ1世の命により、イギリス国教会で使用するための正式な英訳聖書が刊行されたのです。これが現在でも英訳聖書の珠玉の古典として多くの人々に読まれている欽定訳聖書(キング・ジェームス・バージョン)です。ちなみに、この欽定訳はティンダル訳の影響を非常に強く受けていて、その8割もの箇所にティンダル訳聖書の翻訳文が採用されているとも言われています。


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