医療事故


医療ミス多発にどう対処するのか

【厚】医療ミス多発の所ですが、健康政策局総務課でございます。「どう対処しようとしているか、ヒヤリ・ハット研究班をつくる必要があるのではないか」というご指摘ですが、厚生省の基本的なスタンスとして、前に言ったかもしれませんけれど、2つある。一つは、それぞれの医療関係者、医療従事者が気を付けていただくようにとりあえず指導するということ。もう一つは、人間なんでどうしてもミスをしてしまう。ミスを犯したとしてもそれが事故に繋がらないというように、周りのシステムを整備しましょうと、この2点が基本的な考え方になっております。そういう考え方で、前もご説明をしたと思いますが、東海大学で経腸栄養剤を輸液の所へつないでしまったという誤接続のミスがありましたけれど、そういう場合そもそも繋がらないようにしたいということで、繋ぐコネクターの形を工夫して輸液の静脈に入れるものと、口から入れるとか経腸栄養剤と繋がらないようにしてしまう。こういう形だという規格はもうできて通知させていただいて、それを造っているという状態です。そういった工夫をしております。
 それから、医療関係者−−−日本医師会とか病院協会、看護協会、その他団体にお集まりいただいて三月と今年の九月にも「現状、今どういう取り組みをしていますか」というお伺いをして情報交換をした上で今後も気を付けてくださいということをお願いしております。それからヒヤリ・ハットについてですが、もちろん各医療機関において自分のところでどういうものが多発しているのかというのを調べていただいてそれを分析してそれをなくすにはどうしたらよいかということを検討していただくのは当然なんですが、それだけでなくて、全国的に一般的にどういうことに気を付けたら良いかということも国としてやるべきだろうということで、一三年度の概算要求で全国的にそういう例を集めて分析を行って、どういうことをするのかという対策を立てる。その結果がどう現れるかというのも経時的に追っていくということをやろうとしております。それが一番についてのお答えでございます。

医療ミスは厚生省が把握すべきではないか

【厚】「警察への届け出だけでなく厚生省が把握しておく必要があるのではないか」ということなのですが、先ほど申しましたように、各医療機関で必ず責任者たる病院長に報告が行くようにということは有効であろうかと思うんですけれど、厚生省に対してということになると、そもそも厚生省に捜査権限がないものですから警察みたいにこれこれの書類を出せと強制するということはできないです。強制権限のないところで出せとお願いしても、非常に好意的というか、自ら反省して今後気を付けようと思ってますと言うところだけが馬鹿正直に出してきて、他の所は処分なんかされたらかなわんということで隠すというふうな方向に逆に走ってしまって、分析すべき情報が集めにくくなってしまうんじゃないかという懸念があります。それと、そもそも患者さんのために最終的になるにしても、いちいち患者さんのプライバシーが暴かれるわけで、そういうことができるかという議論があったりとか。「事故というのは何なんですか」と言う話になったり−−−例えばこのあいだの琉球大学でありましたテオドールの一〇倍量投与という、あれも患者さんが亡くなったとかだったら「事故に決まっているだろう」とはっきり言うことになるのですが、一〇倍量投与で頻脈が出たのですがそれ以外に症状がなく、血中濃度が倍になった。倍になることは確かに危険ではありますけれど、そんなに命のどうこうという話ではないんで「それでも事故なんですか」という話になってしまったり。Aという胃薬を出すのを間違えてBという同じ効能の胃薬を出す場合、これは事故でしょうか? 事故でないとおっしゃる方もいらっしゃるわけなんですよ。患者さんに危害が全然ないんだから。事故だとおっしゃる人もいるのは否定する気は無いですが、それは必ずしもコンセンサスは得られていないのです。
 実際この問題は国会でも議論が何回かあって、「そういう問題があります」ということを申し上げると「それは理解する。ただ、今後情報を集めて分析していくように努力せよ」というようなことを言われて、それでこういった取り組みを行おうとしているわけです。そういう問題があるということと、あと、特定機能病院については「院内でちゃんと分析をしなさい」とお願いしているわけですが、特定機能病院という高度な医療を行うところだと分かり切ったところだからこそ現実に言えることで、二〇床の病院と一〇〇〇床の病院も一律にというのはなかなか難しいだろうと思っています。“強制”というと反発するところもあるので、情報提供を信用するということを主に考えております。
【交】一番については「これからこういう形で取り組むんだ」というお話だから、それは今後の様子を見ないと何とも言えないかもしれませんが、2番については、「強制的な捜査権がないんだ」とおっしゃるが、薬害にしたって少なくとも届け出をさせるというルールを作っているわけですね、薬事法で。だから、医療のミスについても、少なくとも捜査の話より前の段階で届け出させるということは考えられるわけですね。
【厚】議論するための届け出というのは‥‥。あくまでも現在は医師法上の規定で、異常事態の届け出義務があるからなんですね。ですから、医療事故ということで、亡くなってもいないのに−−−異常事態でもないのに届け出るという義務は今は本当はないのですよ。今、医療機関が自主的にやっているわけですよ。
【交】だからつくれば良いんだ、根拠をきちっと。いろんな事がずっと起こっているわけでしょう、現実に。だから、それについての届け出というものをさせないとまずいでしょう。なんで厚生省にそれを届け出るシステムができないのか。全体としてどこが問題になっているかということを把握するところがないと、たまたま今回ずっと起こっているから集めるような努力をやられているかもしれませんが、根拠になっている法律が無いじゃないですか。
【厚】そもそも「厚生省に届け出をしてもらうというのは何のためにやるか」ということなんですよ。何を目的でとおっしゃっているのですか?
【交】それは当然「同じようなミスを起こさせないように」というのが目的ですから。
【厚】おっしゃるとおりです。で、同じようなミスを起こさせないようにということで、実際分析することについては必要性を感じていて、全国的なシステムを作ろうとしているわけですね。
【交】:それを法律にしてくださいということ。どういう位置づけのものなんですか、これは?
【厚】どういう位置づけにするかというのは、まだそこまで固まってないですが、報告してもらうようなシステムを作るというのはほぼ確定していて、それが法律なのか、省令なのか、何になるかわかりませんが、省の内部に「医療安全対策検討会議」という会議をつくって検討をやっているわけですよ。
【交】この前そういうお話でした。
【厚】で、今、医薬安全課でも一部走り出しているところでもありますけれど、そういうものをつくって分析しようとしているわけです。そのためには当然情報を収集するシステムが必要なので、「いきなり全部」というのはなかなか難しいので、まずは特定機能病院と、国立病院と、あとまだちょっとわからないですけれど他の病院(院内でインシデントの報告システムが出来ているようなところ)でも収集しようとりあえずは考えてます。常に経時的に情報を収集するシステムをつくろうとしているわけです。情報収集して分析をした結果を「こういうことに気を付けてください」というようにお願いする方が、それぞれの医療機関にあった対応をとってもらえるのじゃないかと。
【交】リスクマネージャのことなんですけれど、今ほとんどの病院でリスクマネージャは看護婦〜婦長クラスの人などがなっていることが多いのですよ。看護婦のことに関してはそこで把握できると思うのですけれど、医者がやっている問題を看護婦のリスクマネージャができるのかという問題がでると思うのですね。そこら辺はどう考えてます?
【厚】看護婦さんにもやってもらってますけれど、看護婦さんだけではないと思う。特に特定機能病院の話で申しますと、だいたい各科の看護部門が別になっていて、看護部門のリスクマネージャは看護婦さん。全体の診療科に関するものについてはドクターというようにだいたいはなっているのですよ。特定機能病院については、全体のリスクマネージャの表を提出してもらって、だいたい拝見したのですけれど。
【交】名前だけ提出しているのではないですか?
【厚】そこは徹底していく必要があるかと思いますが。特定機能病院については、特定機能病院長の会議を9月に併せて行っていて、各々の病院でどういう対策をしているのかを意見交換をして、事故を起こした特定機能病院についてはどういう対策をしましたという報告をやってもらってます。これも、今後の結果を見ていただきたいと思うのですけれど。
【交】報告というのを、法律の根拠をきちっとしてやるというようにしないと。
【厚】そうですね。これはいい加減にできませんので、ちゃんと形を作って。
【交】予算要求で、「幅広い者を委員に」と書いておられますが、どういう方をお考えなのですか? 被害者の推薦する人を入れてくれるわけ?
【厚】そこまでは実は詰まっておりません。これは事例を分析してどうすれば防げるかということを検討していく場所ですので、被害者代表の方があらゆる被害例についてわかっておられればいいのですけれど、必ずしもそうでもないですよね。ご意見を聴くような場を設けるとかいうのは、可能性はあります。そこまでは固まってませんけれど、「会議を置いて具体的に分析をするんだ」というところまで固まっている。医療従事者だけで固めるということはありません。
【交】自分の失敗でも届けられるようなシステムをどう考えているんですか?
【厚】それはなかなか難しい質問ですけれど、今のところ考えていますのは、名前とかがでるとやっぱり隠したくなりますよね。報告者の名前を伏せるとか、患者さんの年齢も必要がなければ落とすとか、そういうことで、できるだけ個別のケースを特定できないように、でも事故の特性はわかるように集めてはどうかというふうに考えております。まず集めて分析することが必要だと思っています。
【交】陣痛促進剤でも、厚生省の把握している事故例と被害者団体の把握している事故例と天と地の差がある。そういうのを生かさずに、やったつもりになっても。患者自身が届け出ればそれも受理できるような機能を必ず入れてほしい。突き合わせができるようなものでないと。
【厚】突き合わせが出来るようにというのは、個別のケースが特定できないとできないから、それは難しいのですよ。お気持ちはわかるんですよ。それをやると今度は医療機関の方が怖がって出してこないようになりますよ。
【交】でも、本当のことがわかっているのは被害者なんですよ。
【厚】そこは、何のために収集するのかということをご確認させていただいたところで−−−お気持ちは本当にわかるんですけれど、今目標にしているのは個別のケースを明らかにすることでなくて、「全体として事故を減らすために何をすればいいのか」というのをまず分析しなくてはいけないということなんですよ。
【交】患者から何かあったときは厚生省に申し込めばどうにかなる というシステムが一つなければいけない。
【厚】法律的な話になるとまた嫌われるのですけれど、医療機関の所管が都道府県なんですよ。都道府県で相談窓口を設けておられるところが結構たくさんあって、無料弁護士相談の窓口も置いておりますので。厚生省の強制ということは、今はやっておりません。地方分権が進んでますので、そちらは都道府県でやってもらうと‥‥。
【交】リストはあるのですか?
【厚】リストはありません。それは厚生省に言わなくても県に問い合わせていただければわかることですので。それがまさに地方分権ですので。そういう意味で厚生省は進んでいると自負しておるのですけれども。
【交】もう少しこちらの方の姿勢を強めてもらいたい。情報収集をいくら進めても、罰則も何もないと。個別の問題については刑事罰にならなかったら全然だめなんだというのではないと思うのですね。刑事罰にならないケースなんていっぱいありますから、その事をどうするのか諮問しなければしょうがないでしょう。
【厚】おっしゃることはよくわかります。
【交】そこらへん、連携を取ってほしいんだ。全く違うことをやっているわけでないんだから。
【厚】連携を取っていくことにします。
【交】じゃ、そういうことで。