控訴審判決をどう評価するか
【厚】医事課試験免許室、宇都です。厚生労働省として、判決が出たという結論についての事実は認識していますが、内容の評価として正式にお答えできるものはありませんし、民事上の判決について、ある程度の行政処分をするとの方針について、出たときには説明責任が出てくるかも知れませんが、まだその方針が決まってない段階で、厚生労働省としての見解はお答えするということができません。
【交】処分を検討する過程において、これをどの程度重視してもらえるかというのが気になったので、こういう聞き方をしたんですけど、結局、一審と同じものが重ねて出て、理路整然と富士見病院全体のシステム化された乱診乱療をわかりやすく裁いてますよね。医師処分の議論の段階で考慮していただけるという風に思って読んでくれるかどうか。
【厚】当然考慮するに当たって、我々にはこの判決しかないので、行政処分に当たっては重要な位置づけを占めることになると思います。後は、申し立ててくれた方々は、他の件も含めてたくさんくれていますが、実際には行政処分するかどうかも含めて、まだ検討されていませんが、その検討内容というのは、法的には第三者になってしまいますので、私ども行政庁として、被害者の方々の気持ちも当然ですが、一方で一人の個人を不利益処分にするというのを第三者に、当人も含めてなんですけれども、安易な発言はできない。
【交】そういう議論というのはどこの場所でされているのですか。
【厚】ご存知かもしれませんが、七月一日に医師資質向上対策室、名前だけ聞くと医師向上となっていますので、当面は行政処分の関係ですね。これを室で議論していくと。当然医事課の中に置いて、今まで通り医事課で変わりないのですが。
【交】全体のどういうものが処分の対象になるかということも、ここでやるというのですか。
【厚】ここで議論をし、最終的決定は医道審で決めていくということになります。
【交】このスタッフ五名と書いてありますが。
【厚】五名とあるのは間違いで一〇名です。これは全員厚生労働省の職員です
【交】木村光江さんというのはその一〇人に入っているわけではない。
【厚】行政が検討する一方で、学者の意見を聞くというので、木村光江先生も刑法学というか法学部の先生なのですが、あと何人か研究者を募っていただいて、こういう民事事件を行政処分する場合の問題点、あるいはこういう場合はできるのではないか、研究していただこうと。
【交】厚生科学研究というのではなくて?
【厚】厚生科学研究です。
【厚】次にリピーター医師の定義ですが、厚生労働省が、まだ定義づけというのも行っていませんし、行えるかどうか今の時点では厳しいところがあるという認識をもっております。報道と皆さんのご主張を聞いていれば、繰り返し医療事故を起こし、改善が見られず、さらに医療事故を起こす、そういう医師だと認識しております。患者さんと先生との間で、インフォームドコンセントが働いていれば、事故がおきたときも、信頼関係が出来上がっていれば、民事とかにはなかなか行かないですよね。そういう中で、軽微的あるいは、お互い信頼関係の中で納得し合えるもの、そういうのを繰り返すのをリピーター医師とするかというと、そういうのは適切ではないと思うので、定義というのは非常に厳しい。
【交】将来的には、難しいということですか?そういう言葉は使わないということね。
【厚】いわゆるリピーター医師の定義付けとは今現在もこれからの方向として定義づけるのもむずかしい。
【交】確かに医療事故の概念整理といいますか、そういう議論も医師資質向上対策室で議論するということですね。
【厚】当然そこまで議論し、ご承知かもしれませんが、三〇日の医道審議会が決定しまして、そこで検討していただきたいと。対策室および木村先生にお願いしている研究報告、医道審議会の先生の意見で、決めていきたいと。
【交】かなり時間がかかりそうだね。
【厚】一つ一つすんなりつまずかずに意見をまとめるのはなかなか難しい。ただ、昨年一二月にやっていくという意見をまとめた審議会は、厚生大臣の諮問機関、まだ諮問はしてないですけれど、そこの意見というのは尊重すべきで、その意見をおろそかにすることはありません。
【交】実際に患者さんの家族なり、ご本人なりと医療機関と直接話し合いをして一定の支払いをするとか、つまり、裁判という形式をとらないで個別に交渉するというのもあるわけですが、こういうものを対象に入れるかどうか。
【厚】当然、リピーター医師といっているわけではなくて、医道審議会が昨年一二月では、刑事事件とならなかった医療過誤といっているので、示談とかは当然入ると。ただし、少なくとも示談書だけでは、難しい部分があると思う。捜査権のない私どもが、医療機関がどこまで過失なり悪質度なりを認定できるのか、それが難しいようであれば、示談とかまでは体制が整うまでは手をつけないとか含めて、対策室や医道審議会で議論していくことになる。
【交】そうすると情報収集の仕方も絡んでくるし、被害者自身も訴えることができますよというルールもきちんとしないと全国できちっと自動的にあがってくる話ではないでしょうから、そのシステムをどうするかというのがありますよね。
【厚】当然、把握方法もありますし、把握方法がしっかりしていなくても、把握しているものを処分するという。
北野千賀子は諮問されないのか
【宇都】一審の民事判決で、繰り返し不必要な手術を行ったことについては、医道審議会には正式な諮問はされていない。ただ、付け加えさせてもらうと医道審議会で議論はしていただいています。ただ、諮問、答申という手続きは特に行われていない。
【交】もしなった場合、法的には一人の人が二度処分されますけれど、別件なのでそれは問題ないですか。
【厚】前の件があって、それとは別の件で処分するときにはもう一度諮問しなければならない。
【交】医道審全体で数が減っていますよね。一〇人が九人に。これからはこれでいくのですか。
【厚】いまのところはこれで。
【交】その中で医者っていうのは。
【厚】臼田さんは歯医者さん、片山さんは医師、鎌田さんは法律の先生、民法のほう。岩井さんは刑法。見城さんは学識経験者、マスコミ経験のある識者。坪井さん・赫さんはドクター、堀田さんは法律、山路さんは一般的な識者というか経済医学とかをやっているがドクターではない。
【交】じょうずだね。
【厚】医道審議会は実はこのメンバーというのは他の審議会に比べて位が高いというか、審議会の再編成が平成一三年にあって、医道審議会は残っているわけですからね。あまり好ましくないとは思っているのでしょうが、医師会長、歯科医師会長、トップが入る。行政処分では職域団体のトップが入るべきだという考え方を持っていますので。
処分の基準作りはどこまで進んでいるか
【厚】「基準」という言葉は私どもまだ使ってないです。「基準」という言葉が、このケースはこれってわかってしまうようなイメージを持ってしまうもんですから、医療事故やいわゆるリピーター医師、そういうものに綺麗な定義づけができない以上、基準というのは難しいと思っています。
【交】文章に将来なるんですかねえ。
【厚】文章で線が引けるようなものにはなんないでしょうけれど、最終的に「考え方」がまとまれば当然文章にしていかないと、処分されるほうは納得いかないでしょうから。
【交】処分をするときの基準がいろいろあるわけですか?
【厚】その基準は、現在刑事事件でも持ってないです。
【交】医師免許の剥奪処分も、内容によっては永久に剥奪というのがないといけないと思うんですよ。ところが、永久に剥奪というのはないような感じがするんですね。条件によって復活できる。
【厚】法の作りはそうなっています。現実問題としては、いわゆる再免許のことだと思うのですが、再免許の申請があって即ち与えるかというと、それはやはり判断、裁量が任されているので、与えないとすることによって、ずっと取り消しで再免許を与えないという人もおりますし、どちらかというとそっちが多い。
【交】実際にあるんですか。
【厚】再免許の方は不利益処分ではないのでなかなか公にはできないんですが、ここ近年は、取り消しをしている以上ちょっとやそっとで、再免許を与えるべきではないという考えを持っておりますし、再免許の申請があれば審議会にも諮らなければならないし、審議会も同様な基本的考えを持っております。
【交】そのことで訴訟を医者に起こされても勝てるんですか。
【厚】やはり個別に審議しますから、内容によりけりです。実はこの「欠格条項」、いわゆる罰金以上の刑、医事に関する不正だけでなくて病気の類も、欠格条項に入っています。いわゆる犯罪を犯した人の場合には、再免許を与えた例もあります。
検察庁の不起訴処分は「不必要な手術をした事実がないから」ではない
【厚】北野千賀子医師の場合、当時の厚生省では一度結論を出しているというのがあって、
【交】一度結論、というのは良くわからないんですけれど。
【厚】それは傷害のほうです。
【交】「しない」と出してるんですか。
【厚】そのとき「処分しない」という言い方はしていませんが、「諮問をしない」と。
【交】いつですかそれは。
【厚】一審判決が出て医道審議会を二度ぐらい開いていますが、
【交】そのときのことを言っているわけ?諮問はしてないけれど、「諮問はしない」という結論を出したんだと言いたいわけね。
【厚】諮問しないというのは、「諮問をしない」という結論をだした。
【交】処分をしないという結論を出したと?
【厚】はい。一回出した結論で、その後の事情が北野千賀子先生にあってみれば、今回の高裁判決でまた更なる認定が出されていますが、この高裁判決は北野千賀子さんには関係のない判決ですので、そこのところで一度出した結論を私どもが対応をどうするかという問題もきっと、北野千賀子さんの部分で言えばきっと出てくると。
【交】「諮問をしない」ということが、法的に根拠があるんですか。
【厚】法的根拠というか、厚生省が一回出した結論ですよね。一般的には新たな事実が出てこなければ、一回決定したことを何にも事実がないのに、決定を取り消すことは通常ありえない。
【交】高裁判決で、控訴人にはなっていないけれども、富士見病院の医療全体としては、更に事実を補強している。
【厚】そういうのもあるので、今の段階では、どうするかはいえませんが、ただし、一方で一度決定したという事実もあるということを・・・。ご理解ください。
【交】新たな事実として高裁判決を活かして欲しいということです。
【厚】その当時の判断として、そういう、不起訴決定をしたときはそういう経緯があったわけです。
【交】「考え方」が出る前の話ですよね。
【厚】そうです。それはあくまで過去の経緯がありました。そして、それとは別に刑事事件とならなかった医療過誤について、昨年一二月に「考え方」をまとめたと。で、その考えで言えば、この不起訴なんていうのはぜんぜん関係ないですよと、なので、そういう意味では対象になってきます。ただし、経緯があるので、北野さんとほかの四人とは流れが一箇所違いますので、私どもとしてはもう一個クリアというか、検討課題になってしますという意識を持ってます。なので、刑事が不起訴だったから、今回やらないという意味ではないです。