富士見産婦人科病院事件問題

 医道審の答申を受け、どう判断し、どうしたか

【厚】三月二日に私どもの方から医道審議会の方に処分について諮問を致しまして、院長について免許取消し、その他の医師について医業停止停止二年が二人、六ヶ月が一人、戒告が一人ということで答申をいただきましてそれを踏まえて行政処分を行ったということでございます。
【交】私たちは医師全員が免許取消しを希望していたし、誰かに強制されてやったという話と違うと思うが、そこらへんのところが、結論とは違ってたなという風に思っているんですが。
【厚】全員取消しでないというところはそのとおりなんですけれども、そこは医道審議会の中でもかなりご議論いただいた所ではあるんですが、各医師の関与の程度ですとか、その病院における責任の重さ、そういうことを勘案して、このような結論になったということでございますので、そこは医道審議会の答申を尊重して、処分をしたということでございます。何をもとに行政処分をしたのかということは、医師側は正当な行為をしたと主張しているわけではございますけれど、私どもの方で民事裁判に出されたカルテ等をチェックしまして、任意の事情聴取なども行った結果、例えば院長は、理事長の検査の結果をもとに慎重な検討なく不要な手術、子宮と卵巣等の摘出をおこなったということが事実認定できたと、医師としての本来の役割を思えば厳重な処分を行うべきということになり、処分をおこなったということでございます。
【交】配布された「答申を行うに当たっての考え方」の中に、「慎重な検討なく子宮卵巣という・・」この文章だけ読むと慎重な検討なくして摘出した事だけが問題のように読み取れてしまうんですけれど、慎重な検討なくしておこなった手術の結果が、必要だったか不必要だったかとうことは、いわずもがなということなのか?
【厚】これはエッセンスを書いているんですけれども、「処分の事例」のところを見ていただきますと、「手術適用となるような病態ではなかったにもかかわらず、摘出する必要のない子宮・右付属器を摘出し・・・」ということですので、当然「慎重な検討なく」というところもそうなんですけど、結果として「摘出する必要のないものを摘出した」というところも事実認定をして処分をおこなったということです。
【交】それをしたのが、「たまたま」なのか、「故意」で行ったのかということなのか、その点についてはどうですか?
【厚】システムがどうかとか、病院としてというように、民事裁判ではいわれているわけでございますけれども、民事裁判は病院なり医師全体にどういう風に損害賠償を求めるかが民事裁判だと思うんですよね。
行政処分というのは、各医師がどんな悪い事をしたのか、各医師はこんな悪い事をしたんだから処分するというのが我々の役割でございますので。病院のシステムとしてどうなっていたのかという認定はしていないわけですけれど、少なくとも、院長についても四件認定しているわけですね、そういうことでは繰り返し行われていたということについても事実認定をしたということでございます。
【交】各医師が「こんなことをした」という「こんな」が問題で、不必要な手術を繰り返ししていたということは、単なるヤブ医者と同じレベルといわれても仕方がないことですよね。そうではなくて、システムというのは、病院としての責任であって、「医師の責任ではない」というけれども、各医師がただ、「まちがっちゃった、やっちゃった」というのと、各医師が承知していて、それに協力して不必要な手術をしていたというのは、全然重さが違うと思うんですよ。各医師がやった手術なんですから、各医師が故意でなければ、各医師が承知していなければできなかった事なんですから。今回はその辺の議論は避けたという事なんですか?
【厚】医師としてどのような医療行為をすべきかというのが、我々の処分の観点で。現存する資料でどのような事実認定が出来るかというようなことで事実認定をおこなって。当然それは繰り返されてますし、単なる一回こっきりの過失、ミスとは性格は違うというような議論はございまして、そういう考え方に基づいて、結果的には一番重い方は取消しでございますので、それは医師としての行為としては不適格、最も重い処分をという判断に至ったということでございます。
【交】まあ、千賀子に関してはね。
【厚】他の方は取消しではないわけですけれど、件数、関与の重さの違いだったり、責任の違いを勘案したと。
【交】故意が置き去りにされるとそういう議論になっている。たとえば故意の問題がないとしても、件数の問題からいっても、この九件を選び出したというのは、九件なら処分をするのに十分だろうということで九件になったのか、医療行為の不正を証明できる者が九件しかなかったのか?
【厚】それは両面あります。全部認定せずとも、明らかにこれは不当というものを出せば処分できるのではないかという意見もいただいておりましたし、片や最初の事案でもあるので事実認定に慎重であったというのはおっしゃるとおりだったと思います。六一件のうち九件しかやらなかったのは、明らかにこれであればというもの、カルテなり証拠書類を持ってしても明らかに言えるだろうと、頑張ればもっといけたかもしれないというのは正直ありますけど、最初の事例でもありますし、かなり議論して厳選してこの九件を選んだと。他のものを全然見ていないということではありません。全件カルテも全部見て事務局でも議論をして、この九件であろうという結論になった。
【交】向こうから提訴されたのに「九件しかないじゃないか」みたいな、そういう心配もあるんですけれど、九件を選んだときに、「これはだめ」というのは例えばなんですかね?民事では全員勝っているんですけれど。
【厚】民事判決文だけで、「民事判決に書いてありますから」と、行政訴訟の裁判で私どもが主張しても、「あんたらはどういう事実認定をしたんだ」といわれますんで、民事判決に書いてあるだけじゃなくて、カルテで、ここにこう書いてありますね、とか、コンサル用紙のやり取りを見ればここはおかしいですよねとか、手術記録を見れば例えばここは医学水準に照らせばこうですよねとか、あらゆる反論がきても耐え得るものと。他の五〇数件を否定しているのではありません。カルテなり、コンサル用紙なりの証拠から不正が認定できるものを選んだと。
【交】裁判を起こされても大丈夫といことで選んだと。北野千賀子からその裁判が起こされたわけですけれども、今日まで、どの程度のところまでいっているんですか?
程度のところまでいっているんですか?
【厚】こちらもかなり慎重にやりましたし、適切な処分を行ったと思っておりますので、それを主張していくと思っております。執行停止を向こうは求めている、そのところについて裁判所がまだ判断をしておりませんので、具体的に処分の適切性などについては今後の話になると思います。
まだ、準備書面とかを出す段階ではないです。
【交】次回期日は?
【厚】まだ決まっていないです。
【交】厚労大臣のコメント、「再教育制度を構築して医者を本当に教育する」と書いてありますがどんな事をやるの?
【厚】今まで取消しも医業停止もしましたが、医業停止は二年間で、「二年間たったらもどってきてもいいよ」というのがこれまでの処分だったんですけれど、二年間反省していればいいのかというときに、やっぱりやった事に対して悔い改めるような、そこを行政の責任でも二度と起こさないようなために、何らかのことをやるべきではないかと。医業の場に帰す以上はね、というのがそもそもの発想が再教育です。実際の中身はまさに今検討会を開いて、去年の一〇月から開いてまして、三月末には最終回をやって報告書をまとめようと思ってますけど、職業倫理面と医学面の二つの再教育。交通事故を起こして処分された人は医療技術の問題があって処分を受けているわけではないですから、そういう人は倫理面での教育、職業倫理という事の再教育。もうひとつは、医療事故なりで処分を受けた人は、医療技術について再び事故を繰り返さない為の再教育をしていこうと。同時に、たとえば5年間医業停止していたとなるとかなり医療の現場から遠ざかっているわけで、そういう人に対しても医療技術の再教育をしようと考えていまして、来年度モデル的に施行、できれば制度化して義務付けることを検討している。
【交】いま、北野医師は行政訴訟を起こしてるでしょ、「何でこんなもん受けなあかんねん」と。
【厚】再教育ですか?
【交】そう。
【厚】裁判中の人は確定するまでは出来ないんだとは思うんですが。確定すれば「する」ということなんでしょうが、再教育は取消しの人にはしませんから。医業停止だったら戻ってくるからしますけど。
【交】医業停止の事実はどうやって確認しているんですか?
【厚】医業をやっていない確認?そこは各都道府県さんにきちっと指導してくれとお願いをしているので、仮にやっていれば医師法違反ですから。
【交】 他の勤務医からは提訴はありますか?
【厚】ないです。