医療事故届出の第三者機関の構想は?
【厚】(資料渡す) 本日いただいた中に若干誤解があるので、質問書に沿ってと言うよりはこちらから今お配りした資料を説明させていただいて、その中に質問の答えが含まれることになりますので、それでご了承いただければと思います。
一枚目は、診療行為に関連した死亡についての調査分析のモデル事業ということで、この四月から私ども総務課の医療安全推進室で行う事業についての概念図です。これがご指摘いただいている医療事故の原因究明を行うモデル事業になります。
二枚目からは医療事故情報の収集分析体制の整備と書いておりますけれど、医療事故等事案の報告制度という形で昨年の10月から私どものところで始めた報告制度になります。これが日本医療評価機構で収集分析、情報提供を行ってもらっているというものになります。そもそもこの報告制度と、最初に言ったモデル事業は全く別のものなのです。
三枚目以降の事故事例の報告制度となっているところを説明させてもらいます。ここは、昨年の一〇月から始まったのですが、目的としては、二ページ目に書いてありますように、医療に係る事故事例を収集分析して医療現場にフィードバックすることによって再発防止をできるシステムを構築することが最大の目的になっています。
それが予算成立しているために、医療事故情報を第三者機関において収集分析するということで私どもの医療安全対策検討会議という有識者会議がありますが、その下に平成14〜15年度にかけて事故事例報告について検討していただいた会議がありました。その中で報告する範囲とか誰がどのように報告するかとか、義務化するのか自主的な報告にするべきなのかとかいう議論がされた結果、現段階では一部の医療機関に限って義務化するという結論がでたという検討会議を受けて、これを昨年一〇月から始めたということになりました。その概要がその次のページです。
義務化したのは現在のところ、大学病院の本院にあたるいわゆる特定機能病院、国立病院、独立行政法人国立病院機構となりましたが、国立のハンセン病医療療養所、国立高度医療専門センター、いわゆるナショナルセンターと言っている病院の計二七九施設に義務づけられました。収集は第三者機関になる日本医療評価機構が行います。
その方法ですが、四枚目に書いてある再発防止ということが最大の目的で、その結果を広く公表するということを前提にしておりますので、報告がより出やすいようにということもありますし、それが罰則に繋がるものでないという、全く切り分けるという発想で行っているものなので、匿名化した情報を集めることにしています。患者さんや医療機関が特定できないという方法で集めるという形にしています。
その内容を専門家が分析した上で数ヶ月ごとに公表し、専門の情報については提供も行うということにしています。
報告する範囲についてが五枚目に簡単に書かれていますが、三点あり、明らかに誤った医療行為や管理上の問題により患者が死亡、もしくは患者に障害が残った例、あるいは濃厚な治療処置を要した事例。もう一つが、明らかに誤った行為とは認めれれないが、医療行為や管理上の問題により患者が死亡、もしくは患者に障害が残った例 等。そのほかに警鐘的な意義が大きいと医療機関が考える事例ということです。褥瘡とか新生児が連れ去られたりした事例もこの三番に該当するということで、具体的なことを報告書に示しています。
このような事例を報告して下さいということをお伝えして、体制として最後のページに簡単に図式化しています。真ん中に約二八〇の医療機関があり、左側の日本医療評価機構に報告をして、その中で分析し、それを厚労省に報告をするという流れになって、その結果を国民に広く情報提供する。
先週、日本医療評価機構が中間報告をし、三月一八日の新聞の記事になったかと思うのですが。報告数が公表されました。一〇月から半年弱の間に四一二件の報告がありました。一医療機関について一.五件位の報告があったという、件数についての公表がされたところです。詳細な分析結果については四月中旬に公表する予定になっておりまして、今分析を進めているところです。というのが報告制度です。
次に、すべての医療機関にも届出を義務化させるのかですが、、今言った約二八〇の医療機関以外の医療機関に対しても任意の参加を呼びかけています。現在のところ、義務化した病院と同じ位の数の医療機関が自主的に参加登録をしていて、全部で五〇〇以上の医療機関が参加登録して下さっているという状況です。今のところ任意での参加を呼びかけているという状況で、今後全ての医療機関に義務化するということについては、今のところ予定はありません。
【交】新聞では義務化を増やすようなことを言っていたが。
【厚】記者の個人的希望的観測があったかと思います。
資料の一枚目に戻りますが、診療行為に関した死亡の調査分析ですが、これは医師法二一条による届け出も濃厚に関わってくる問題ではあるのですが、そもそも医療機関側でも死因を特定できない死亡、医療過誤が考えられる死亡等があって、それについて全て二一条に基づいて警察に届け出る必要があるのかどうか医療機関が疑問に思ったり、患者遺族が疑問に思った事例についても第三者の調査機関に解剖検視を依頼して、その中で第三者が死因を究明するという事業なんです。基本的には医療機関が第三者機関に調査依頼をするという流れになっています。患者遺族が希望する場合は、医療機関に調査して欲しいと言っていただいて、医療機関が第三者機関に調査を依頼するという流れになっているので、患者遺族が直接第三者機関に依頼という流れがまだできていないというのが、今後の課題としてはあります。
事業ですので、モデル地域を五カ所ほど決め、その中で専門家を派遣して行う調査の実施と死体解剖を実施して結果報告を作成する業務を行う機関を設けます。そこで分析調査を行い、その結果を「中央」と書いていますが、評価委員会の形で有識者(医師、法律家、行政、場合によっては警察官)、さまざまな専門家で構成する評価委員会運営委員会において、詳細に分析して、医療機関の中で起きた事例を第三者が評価する。最終評価報告をモデル地域に戻してその結果を医療機関にフィードバックするという流れになっています。
これを五年間のモデル事業の形で実施して、その間に異常死の二一条による届け出の方法とか、そことの整合性・棲み分け。あるいは訴訟が始まることもあり得ますのでこの報告書が裁判の資料として提出を求められる可能性もあるが、その時に今のところは匿名性を確保したい。再発防止を目的にしているという相反する目的があるので、バランスや守秘義務の掛け具合とか、様々な問題が今やる前から判っている。そこをモデル事業で実施ながら検討していく。現在の段階では広尾病院の最高裁判決によって全ての医療事故に関連した死亡についても二一条に基づいて異常死として届け出るべきとの解釈が判決として出されたという状況にはなっていますが、そのあたりのことも考えていく必要があると認識しています。非常に根が深い問題ですし難しい課題です。やっとではありますがそこに手を付け始めた段階です。
【交】モデル事業という形で予算が付いているのですか?
【厚】「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」として、一億二百万円。単年度の額なので、ほぼこの規模で五年間やるということです。
【交】患者からの直接の被害申し出が入っていないのが問題かもしれませんね。大阪の例で、産婦人科での死産を病院側が報告していない。なぜしなかったかというと、病院側が医療事故とは見ていないわけです。医療事故と見なければ法律で届け出なくても良いとおっしゃる。その意識がない。あっても、事故として報告すると自分が不利になるから報告しない。被害を出したところに話をしたくないという気持ちの家族も結構いる。大学などではすぐ「解剖しましょうか」という。でも、被害を起こされたと思っている上に、「原因がわかりますから解剖を」と言われても、そもそも信用できないから家族が拒否する。患者家族が結果報告を最終的に受ける。調査のいろんな段階で出る資料を全て報告されるのですか?
【厚】そこも含めて今検討しているところです。
【交】これをなぜ医療機関経由で家族に渡さないといけないの? 第三者機関から医療機関と家族に同時に渡されてしかるべきだ。
【厚】最初に説明したとおり、今始めるモデル事業の流れをこのように設定したので、そこは次の段階で、そもそも医療機関に依頼しないと渡せない。患者の家族と第三者機関に接点がない。そこは今後課題になってくると想定している。
【交】最初から問題になるということが判っていて、どうしてそういうルートを作らなかったのですか?
【厚】個人の能力の限界といいますか…。もう一つ、モデル事業ということで予算に限界がありますので事例数が限られてくる。患者遺族に広げた場合、当然断らなければいけない事例も出てくると予想されるので、医療機関が調査依頼をするという姿勢を作る道、そこから始めるのがモデル事業の今のスタイルになっています。
【交】大学では病理解剖の実績を積まないといけないことになっている。抵抗はないのか。
【厚】モデル事業を検討している中で、この一九学会とその下位学会ともすでに意見交換会を行いながら、病理医と法医が対立はしているのですが一緒に話し合う場が既に始まっているので、その中で調整しながら、死因が判らない事例についてお互いに協力しながら解剖していくということについて共通認識を今図ってもらっているところです。
【交】四月からスタートですね。モデル地域も決まっているわけですね?
【厚】基本的にほぼ確定です。ベースがあるところから始めた方がよいだろうということで、監察医制度が既にある地域。東京都と、神戸市、名古屋市、横浜市、大阪府の五カ所です。
【交】この地域の医療機関には「こういう形でモデル事業をやる」という連絡が行くわけですね?
【厚】事業の実施主体は厚労省にあって、第三者機関が学会主体で作っていくということになる。地域の医療機関への情報提供は第三者機関からしていただくということになります。
モデル地域で主体となるのはほとんどは大学病院です。学会の役員のいらっしゃる病院がモデル地域の事務局になる。解剖実施施設も必要ですので。東京の場合は監察医務院で行えるように今準備を進めているところです。
【交】どこが統括するの?
【厚】厚生労働科学研究室でこの事業を検討する研究班を作ってもらっている。
【交】新聞によると、医療事故の発生を推定していくための研究班が厚生科学研究班であったが、二八医療機関を対象にしたら半分位しか回答しないということがありましたが、あれはこの作業とは全く関係がないのですね。
【厚】はい、全く関係ない。
【交】医療事故の届け出をなかなか医療機関がしない。医者でなくても医療機関の人間であれば誰が連絡してもよいような形を作らないと。医者からの報告が正規のルートだとは思うが。
【厚】医師に特定はしていない。「自分の医療機関で起きた医療事故・ヒヤリハットの全てを把握して報告する人」というその人が医師であるべきだとは言っていない。
【交】実際に大きなところでは医療安全対策室などを作っていますから、そこが集めたものを報告する形だと思う。だけど、そこに上がったものを全部届け出るか、あるいは医師自身がそこへ報告するかどうかという問題がある。
【厚】そうです。
【交】医療機関を通さないで個人として連絡するということも出てくる可能性もある。
【厚】それは今のシステムにはない。今の話は二つの問題があると思う。ヒヤリハットの報告は三年経ったのですが相変わらず報告者が看護士がほとんどで医師は一割弱。一割になっただけでも増えたとは言うのですけれど。三年経っても医師からの報告が少ないという現状は一つの課題としてあると思います。内部告発のような形での報告のルートがある方が望ましいのかもしれませんが、それは根本的な解決にはならない。いつまで経っても隠す人は隠す、内部告発する人はするというようにしかならないと思うので。
【交】今の状況を一〇年やっても同じだったら、現場から上げるための別のルートを考えていかないと。
【厚】もちろんそのままただただやるつもりはない。ヒヤリハットについても集め方を少し変えることにしました。定点を決めて動向を追えるように今度からするようにしました。
【交】医療機関側からの内部告発も結構増えていますから。そういう人がちゃんと訴えるところがないというのが現実にあるということは考えないと。
【厚】院内報告制度を有床診療所と全ての病院に義務づけたことによって、報告をしなければいけない、報告したことが自分が責められることでなく医療の向上に結びつくのだという意識は少しずつ高くなってきたと思う。医師が一番関わっている事例なのに看護士が報告しているという事例も多々ありますので、ここで自ずと発覚しているという状況はある。
【交】事業目的に「学際的に検討される」となっているが、医学会のある学会で定期的な情報の分析結果を報告するようなことを考えているか?
【厚】学会に対してはない。学会と一緒になって調査分析をするというのはこれまで少なかったと言われていて、非常に注目されている事業なので、行政と学会の連携、情報の提供の必要性は指摘されている。学会はあくまで任意の団体であって全てを網羅できないし非常に細分化されているし、厚労省も全てを把握していないので難しい。報告してもらえない学会が文句を言う。
【交】主要な学会は限られているから、学会を選んでやれば日本中に伝わる。考えて下さい。
【厚】今いろんなことが同時進行しているので混乱している。