第十章 たらい回し


某月某日

一週間勘違いして診察をすっぽかす。一日36時間ペースで活動していたせいだろうか、日付の感覚がずれてしまっているのが原因らしい。
 

某月某日

今日は眼科へ出向く。
まず目の診察。紙のようなものを下瞼に入れられる。
「今目薬入れてないですよね」
「はい」

リ・アと違い何をされているのかよくわからないが、とりあえず角膜に傷はついていないらしい。

引き続き問診。ここしばらく寝起きに目が痛いくらい乾燥しているのでそのことを訴える。
「うーん」とちょっとカルテを見て、
「コンドロンていう、もう少し油っぽい、どろっとしたお薬出しますのでー」
「寝てる間目が開いちゃってる人もいますしねー」
「あとビタミンの軟膏も出しときますからー。これちょっとべたーっとするので寝る前とかに入れてください」
 
 

某月某日

今日は前回すっぽかしたリ・アの振替診察である(当然予約は取り直した)。
このところ壊れたように眠っていることを報告する。

15時間?!

「薬のせいかもしれないねー」
あっさりとかわされて少々拍子が抜けた。

「自律神経失調症とか、そういうのはないんですか?」
「それだと関節痛は出ない
めずらしくきっぱりと言い切る。
「そういうこともあったから精神安定作用のある胃薬も出してたんだけどさー」
「じゃあ胃薬かえてみよっか」

「一ヶ月コルヒチン飲んだ状態で今度血液検査してみよう」
禁妊娠が継続するのは面倒なので、最近ずっとコルヒチンを飲まないでいたのが見抜かれたのだろうか。
「ほんとは女の子にはよくないんだけどねー」
内心「なら出すなよー」と思うのだが。

「じゃあ次診察の前に血液検査してね」

現在の投薬回数 9回/day
 NSAID、胃粘膜保護薬、抗アレルギー薬、コルヒチン
 
 

某月某日

だるだるモードに突入する。体温を測ってはいないが、微熱が出ている気配がある。寝ても起きてもだるい。とても嫌な感じだ。

現在の投薬回数 9回/day
 NSAID、胃粘膜保護薬、抗アレルギー薬、コルヒチン
 
 

某月某日

今日の流行は手首の関節痛だ。
ずっと肘と膝が痛かったのだが、手首に痛みが移動してきたらしい。
 
 

某月某日

生理が終わって一週間で再び生理が来る。別に生理周期がずれてしまうほどの精神的ストレスはかかっていないはずなのだが。それとも自分では気づかないだけで、実はココロにもカラダにも重大なストレスがかかっているのだろうか。
 
 

某月某日

とても気持ちが悪い。一日中むかつき、吐き気が続き、車酔いのような状態だ。コルヒチンの過剰投与かもしれない。というか、多分そうだろう。次の診察日にコルヒチンを止めてもらうようごねようと決意する。
 

某月某日

診察の日がやってきた。今日は最初に採血があるので早起きしようと決意して寝たはずなのに、気づくと午前10時10分。7時の目覚まし時計には気づかなかった。8時半ごろ一度目覚めたのだが、二度寝したのがまずかったらしい。予約は10時半なのであわてて起きる。こういうときお隣に大学病院があると便利だ。
洗面所で自分の顔色の悪さに気づく。目の下に茶色のくまも出来ている。体力不足に加え睡眠不足なのだろう。

採血時、血管があまり出なかったので少し不安になる。体調が悪くなりきっているらしい。

採血後ぼーっとしていて、膠内の隣の受付に受診票を出してしまう。今まで一度もこんなことはなかったのだが・・・。

「関節はー?相変わらず肘と膝?」
「いえ、肘と膝と、あと手首と足首です」
「・・・ぇー、悪くなってるのかなー・・・」
何気なく言ったつもりだが、思いの外引っかかってきたのであわてて言い訳する。
「あの、痛い場所が日によって違ってて、膝だけ痛かったり、肘と手首が痛かったり、いろいろなんですー」

「他はー?」
来た。いよいよコルヒチンを減らすようごねる機会がやってきた。
「3週間くらい前から、吐き気と、むかつくんですよー」

「一番簡単なのはステロイド使っちゃうことだけどねー、顔とか丸くなるし、若い子にはあんまり使いたくないしねー」
一応「若い子」と認識されているらしい。担当医は30代半ばと思われるので当然といえば当然なのだろうが。

会計用のスリップを渡される時、事務のおねーさんが一瞬固まる。
「今日採血済ませてますよね?」
そういえばそうだった。
「今先生に確認してきますから、ちょっと待ってて下さいね」
事務のおねーさんは一旦引っ込み、すぐに戻ってきた。
「今日の血液検査の結果を見て、お話がありますからもう一度待ってて下さい」
・・・患者も医者も採血していることを忘れているのは、いかがなものか。

再度診察である。ディスプレイに今日の検査結果が表示される。
前回0.69と正常上限値を上回っていたCRPは0.01に戻っていた。要するに、ほとんど検出されなかったということか。

「次までに紹介状用意しとくからー」
「次、一ヶ月後に予約入れといたからー。調子悪かったり引っ越すようだったら少しくらい早めに来てもいいしさー」



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