喘息った。明け方から息苦しい。朝起きてみると喘鳴がする。こういうときの呼吸のコツは、喘鳴を起こさせないよう気道の上半分だけに空気を通すような気持ちで呼気を吐くことである。
試しに下半分に息を通すと、ひゅ〜という音がする。よくない兆候だ。
ちなみに上だの下だのというのはあくまで主観的な感覚なので、それはなんだと言われると困る。
塩酸プロカテロールのエアゾル剤を使ってもいいのだが、はっきりいってこれはあまり好きではない。心臓がばくばくして手がぷるぷるするからだ。塩酸プロカテロールはβ2-receptorの選択性が高いことになっているがイマイチすぱっと効かない。体質なのかもしれない。
現在の服薬回数 のべ3回/day
NSAID、H2-blocker
某月某日
先日の血液検査の結果が出る。今回引っかかったのは、塩基球、リンパ球、補体価(C4、下限値オーバー)、IgM(上限値オーバー)、その他。前回引っかかった血沈は今回はぎりぎり正常範囲であった。今回も抗核抗体は出なかった。
また、前回正常下限値を下回ったUN、CKは今回は正常範囲であった。どうやら一時のきまぐれだったらししい。検査項目が独立である場合P=1-(1/20)^n(nは検査項目数)の確率で正常値からはずれる、という統計学上の落とし穴にずっぽりはまっているようだ。
検査結果は液性免疫はまあ正常、細胞性免疫もまあ正常といったところ。
雑菌に入られたことを報告する。ぴくくっと担当医が反応したのがわかった。
「ちょっと免疫力が弱いのかもしれないねー」
自分でも薄々思っていたことだ。
「目が乾燥するって言ってたよねー」
「はい」
「シェーグレンてことも考えられるし、涙液量はかってみる?」
「そうですねー」と頷く。新たな実験を提案されているようだ。
「シェーグレンだと一緒に唾液量の検査もかるんだよねー。唾液腺のところに棒みたいなの突っ込んでぐりぐりやって分泌調べるんだけど、これも痛いんだよねー
」
「唇の下に脂腺があるんだけどさ、そこ切って分泌調べるんだよね」
「ちょっと切るだけでいいんだけどさ、ここ(筆者注・大学病院)はがーっていっぱい切るから唇がこんなに腫れるよ」
「痛いんですか?」
「痛いんだよねー」
・・・そんな内幕までばらしていいのか。
「あと、シンチレーションやってもいんだけどさー」
なんだかとっても聞いたことがある検査法だ。
「まあ、ほんとにSgSだったらあんまり治らないしねー」
このへんの予備知識はこちらにもあるので黙って頷く。
「薬も、鎮痛剤あんまり効かないし。ほとんど鎮痛剤で、ちょっとステロイド使う程度かなー」
・・・こんなことは普通の患者にはあまり言わないような気がするが。
「東京か北海道だったらさ、ここで診断書出してさっさと難病指定とってもいいんだけどさ、ここは茨城だし、あんまりとってもしょうがないしさー」
・・・そんなことまで患者に伝えていいのか。
「唇切る検査って痛いんですよね?」
「うん、痛い」
「じゃあ痛くない涙液量はかる検査を先にやって、もし異常が出たら痛い検査やるっていうのはだめですか?」
「うん、それでいいよ。やっぱり痛いのは嫌でしょ?」
・・・実験のディスカッションでもしているようだ。
「掛かり付けの眼科ってある?別にここの眼科でもいいけど」
「いえ、眼科はないです」
「じゃあ眼科に紹介状書いとくから、帰りに予約取ってね」
「わかりました」
「あと、気管支拡張剤がもうないんで出してほしいんですけど」
「何使ってるの?テオスローとか?」
「テオフィリンです」
「どのくらいの量だった?」
「えーと、100mgのを一日二回でしたね」
ふんふんと頷く担当医。・・・患者に聞いていいのか。
「あと抗生剤出しとくから」
「?」
「まあ、念のためねー」
「胃薬のほうは」
「あー、アルサルミンかー。ねと〜っとした奴ねー。いらない?」
「ちょっと飲みにくいんで・・・あんまり飲みたくないですねー」
あいかわらず へっぽこな投薬姿勢だ。
「あと、こっち(筆者注・H2blokerのこと)はもう少し続けようねー」
「続けるんですか?」
「うん、もうちょっとねー」
「じゃ目薬も出しとくね。ついでだから三本くらい出しとく?」
「お願いします」
「クールタイプの、すきっとするやつは刺激強いからあんまりしょっちゅう注さないでね」
「次いつ来る?いつでもいいよー。薬切れてからでもいいしさ」
「じゃあ眼科の結果が出たらまた報告にきますね」
なんだか実験のプログレスリポートをやっているような気になる。
どうもかのリウマチ専門医は私のことを患者というより身内としてとらえているように見えるのだが・・・。
もっとも最近はインフォームド・コンセントも進んでいるからこの位普通なのかもしれない。
帰りに眼科の予約を取る。
現在の服薬回数 のべ5回/day
NSAID、抗生剤、H2-blocker
外用薬 ヒアルロン酸ナトリウム含有点眼薬
某月某日
今日は眼科に出張の日である。視力測定、涙液量検査、眼底検査のフルコースだ。
今日は待ち時間がずいぶん長かった。相当待った後、視力測定にかかる。わかっていることだが、裸眼視力0.03などと言われるとどーしたもんかと思う。
またしばらく待った後、問診に入る。リウマチ・アレルギー内科から回されてきたこと、免疫障害の家族歴、SgSの疑いの話などをする。
今回担当の眼科医は童顔の若手であった。見た目から判断すると研修医とかシニア・レジデントとか、そういったとこなのだろうか。
「じゃあ最初に涙の量はかるんで・・・」
やたらと丁寧な、さしずめ小児科医のような言い聞かせる口調である。リウマチ・アレルギー内科の担当医とは雰囲気が違う。久しぶりに「ああ、ちゃんと診察を受けているんだなあ」としみじみする。
「シルマー試験ていうんですけど、目の下のところに紙挟んで涙の量はかるんですよ」
濾紙を小さく裂きながら眼科医が説明する。
「5分間はかりますんで、その間あんまりパチパチしないで下さいね、紙が落ちちゃうから」
「じゃ、ちょっと上向いてて下さいね」
細く裂かれた濾紙が下瞼に差し込まれる。
「ちょっと痛いんですけど、我慢してくださいね」
眼科医が時計を見ながら説明する。
「5分間の涙の量測るんで、少し待ってて下さいね」
またしばらく問診が続く。
「あの、結構痛いんですけど」
濾紙が微妙に下瞼に突き刺さって痛い。ついついパチパチと瞬きを繰り返す。と、濾紙が落ちてしまった。
規定の5分には多少足りなかったようだが濾紙がはずされた。眼科医がプラスチックの物差しで濾紙の濡れた部分の長さを測定している。
「11ミリ・・・」
つぶやく声が聞こえる。
確か5ミリ以下でドライアイだったはずだ。
ここで一旦問診は終了。待合室に戻った。
しばらくして看護婦に名前を呼ばれる。
「今日はこれから二回別の目薬入れますから、こっちに座って待ってて下さい」
まず一回目の点眼。
一応どんな薬なのか説明されたが、予習不足なのでよくわからない。
「じゃあ今から角膜の傷見ますから」
暗室に通され、目の奥がのぞき込まれる。どういう原理か、瞼に丸い細胞の影が映る。角膜の上皮細胞だろうか。
なんだかよくわからないうちに、一旦眼科医の診察は終了した。
再度看護婦に呼ばれ、何かの散瞳剤らしい点眼薬を注す。
「今度は瞳孔を広げる薬を注すんで、ちょっとぼやーっとしますから歩く時気をつけてくださいね」
しばらく待ち、再び暗室へ。焦点がうまくあわないのは点眼薬のせいだろう。
今度は先ほどの若手眼科医ともう一人、年輩眼科医二人が待ち受けていた。年輩眼科医はどうも助教授だか教授だかのエライ人らしい。
年輩眼科医によって再び目の奥がのぞき込まれる。
「少ないな・・・」
年輩眼科医が若手眼科医のほうを振り返って訪ねる。
「これって○○入れたんでしょ?」(筆者注・○○には薬物名が入るのだが聞きとりそこねた)
「入れました」
「ふーん」
眼球を上下左右に動かしての診察が続く。
そして、結論。
「ぎりぎり普通だね」
ああやはり。
「角膜もきれいだし、まあ大丈夫だよ」
「目が乾燥するならマイティアみたいなのを注してね」
若手眼科医が尋ねる。
「先生、あの、ヒアレインは・・・」
「ヒアレインまで使わなくてもいいでしょ」
再度若手医師にかわり、机でお話である。
「今角膜の傷を染める薬を入れたんですけどね、あんまり染まってないですしね」
「今のところ傷もついてないですし、目が乾くようなら目薬差して下さいね」
「来年くらいにもう一度来てくださいね」
やっと眼科から解放された。今度は授業である。
この間、授業で採った血液サンプルの結果が上がってくる。総コレステロール214、LDL136・・・。やばい。高脂血症だ(笑)。ついでにZTTも引っかかっていた。
さらに、尿検査では尿残サで引っかかり(扁平上皮細胞だったのでまあいいらしいが)、ビリルビンで引っかかり、ウロビリノーゲンで引っかかり、と散々であった。糖尿だったらどうしようと内心どきどきしていたのだが、尿糖は正常だった。
これが二週間前なら確実にケトン体も引っかかっていたのだが(胃が荒れて絶食状態だった頃だ)。
もう自分の体が信じられない(笑)。
現在の服薬回数 のべ5回/day
NSAID、抗生剤、H2-blocker
外用薬 ヒアルロン酸ナトリウム含有点眼薬
某月某日
腋下が痛む。昨日までは右側のみだったのだが、今日になって両側が痛み出した。寝ているときに壁にでもぶつけたかと思ったが(肘だの上腕二頭筋だの、どうやったらそんなとこに痣ができるんじゃというようなところによく痣を作るのだ)、リンパ節が腫れている可能性もある。そういえばさりげなくソケイ部も痛い。耳の下も痛い。
熱っぽいが、うまく眠れない。
何度も書いていることだが、通常ならば溶けるように意識がなくなっていくのに今回はいつまでも意識がなくならない。絞殺されるときはこうだろうかと思うほど徐々に、かつ苦しいまま意識が失われてゆく。
あるいは転落死かもしれない。転落した後の、死までの時間をずっと過ごしているような感じだ。
失血死、あるいはモルヒネの大量注射死のように眠りについてみたいものだ。
微熱はあるが(37度前後)、関節痛がないのはありがたい。しょせん人間の体など化学物質(chemicals)には勝てないのだ。
某月某日
右側の耳の下のリンパ節が腫れる。なぜか右側のみで、左は腫れていない。右と左で押さえたときの感触があからさまに違う。
微熱がある。全身がだるく(まあ熱があっても倦怠感がないほうが珍しいが)、うとうとと寝ているうちに時間が過ぎる。
が、大学病院の予約をとろう思った翌日、若干状態が好転してしまった。先日の眼科もそうだが、決意して医者に診てもらおうと
するとちょっと状態がよくなる。へそまがりな体だ。