「んじゃ、やっぱりこれやろうか」と担当医に言われ、結局Gaシンチレーションをやることになった。
血液検査では顕著な結果が出ないので、リンパ節の腫脹がないかどうかとりあえず調べてみようというわけである。病名がつかない以上、担当医も手の打ちようがないのだ。
・・・しかし、実験に行き詰まった姿とダブって見えるのは、そして、患者が字通り体を張って実験しているように見えるのは、
気のせいだろうか。
核医学検査室で予約を取る。予約票に「この検査では高価な薬剤を使います。この薬剤は貴重で開封後1時間以内に使用しなければなりませんので、検査当日は遅刻することのないようご協力お願いします」とかなんとか書かれてある。RIだから賞味期限があるのだ。
某月某日
遅刻して賞味期限切れになってはつまらないので、がんばって早起きする。
RIをivしてくれた放射線技師は
「は〜い、お注射しますからね〜。ちょっと、ちっくんてしますけど大丈夫ですよ〜」
と、言葉遣いは丁寧だが(以前の職場は小児科か?と思うほどやさしい口調だった)、しっかり内出血を作ってくれた。
面白いので周囲に「ねぇねぇっ、私今歩く放射線源なんだよ」と吹聴しまくる。
調子にのってガイガーカウンターで放射線を計測しようとして、友人に釘を刺される。
「ガイガー計の測定原理知ってるの?あれは放射線の電離作用を利用してイオン化して計ってるんだよ?検査に使うのはガンマ線でしょ?ガンマ線は電離作用弱いんだよ?調べてもどうせ検出できないよ?」
よけいなお世話だ。
某月某日
明日が撮影日という日の夜中。突然下剤を飲み忘れていたことを思い出す。
午前9時に検査開始なので、前日の午後9時、つまり12時間前に飲むように下剤を処方されていたのだが、すっぱりと忘れていた。3時間遅れで、あわてて下剤を飲む。
RI(放射性Ga)といえどもしょせん金属イオンなので大部分はリンパ節に取り込まれることなく排出される。排尿・排便がないと腸や膀胱にたまったRIが出すガンマ線もひろわれてしまうので面倒なことになる。
某月某日
結局下剤の効果はなかった。やはり3時間遅れが響いたらしい。
恐る恐る撮影に出向く。
「どこか悪いところあります?」
「耳の下のリンパ節のところと、脇の下が痛いです。・・・あとソケイ部もちょっと・・・」
「あー、出てないねー」
「ふだん便秘気味ですか?」
「別にそういうわけじゃないんですが・・・」
「あんまり出ませんでした?」
「はぁ・・・まぁ・・・」
まさか素直に下剤を飲み忘れましたとも言えない。
「あのねー、お腹に残っててうまく撮影できないんですよー。でね、今日はもうこれでお終いにして、明日もう一回来てください」
案の定、お腹がPosCon状態になっていたらしい。
すごすごと引き下がる。
このままRIを排出してしまうのも残念なので、友人を拝み倒してガイガーカウンターを借りる。
センサーを近づけた途端、ぴぃぴぴぃぴぃぴぃぴぴぃぴぴぃ〜〜〜〜〜〜と電子音が鳴り響く。あまりにうるさいのでスピーカーをオフにする。
センサーを壁に向けてみると、ぴっ・・・・・・・ぴっ・・・・・・と頼りない音がする。
センサーを友人に向けてみるとぴっ・・・・・・・・・とほとんど音がしない。
「いーい感じに鳴ってますね」
「そうね、いーい感じにね」
「俺がsouthernやるときこのくらい出てますからね、ちょうど倍くらいですね」
友人も同席していた友人の上司(助手)も好き勝手なことを言っている。
「・・・じゃあ、これあげるよ」と、友人の上司に放射線で感光するフィルムを頂く。一晩ほどだっこしていれば感光するそうだ。
某月某日
フィルムがボードに入っていなかったことが判明。全身脱力である。
某月某日
フィルムを現像してみたいのだが、はずせない用事を抱えているためそのまま放置してある。
喘息が再開する。久しぶりに夜寝られない。昼も寝られない。こういうときに限ってエアゾル剤が手元にない。横になることもできない。起座呼吸と言われる体勢で寝たり起きたりを繰り返す。
某月某日
昨夜も眠れなかった。
昼過ぎ、外気温の上昇とともに呼吸が楽になるが、午後三時頃から再び息苦しくなる。外気温と気管支狭窄がシンクロしている。
某月某日
耐えきれなくなって予約を取り大学病院に出向く。
担当医に「どしたの〜」と聞かれ、単刀直入に「喘息の薬下さい。」と切り出す。
「何?夜眠れないとか?」
「夜中、いわゆる起座呼吸の体勢で眠れないし横にもなれません」
あいかわらず実験の結果を報告しているような調子だ。
ステロイドのエアゾル剤が出る。いよいよお出ましのようだ。
ついでに、この間のシンチレーションの結果を聞く。
「どうでした?多分なんにも出てませんよね?」
「うん。異常なし。まっちろ。」
ここで核医学からの報告書を見せてくれた。
「なーんにも書いてないよねー」
確かに報告書は二行で完結している。
某月某日
本日やっとフィルムの現像である。だっこした日から数えると十日あまりが経過している。
「BASフィルムの測定原理知ってるの?」と友人にまた釘を刺されるが、かまわず現像してもらう。
フィルムは真っっっっ黒であった。
友人も、友人の上司も無言である。
「ねぇねぇ、このフィルムって自然光で感光したりしないの?」
友人が黙っ〜〜ってこちらを見る。
「BASフィルムは自然放射線じゃ感光しないんだよ。感度が鈍いの。あっちの○○フィルム(筆者注・フィルムの名前を聞き忘れた)は感度高いから自然放射線で感光するけど」
「あとね、あのイレイザーで20分照射しないとフィルムきれいにならないの」
・・・ということはつまり・・・?