第八章 禁酒・禁煙・禁妊娠


某月某日

お隣へ出向く。
「来たねー」とカルテを見ながら担当医が笑いつつ宣う。
「風邪?」
「月曜の夜中に38度越える熱が出たんで、これは水曜まで持たないと思ったんで救急で来ました」
「うんうん。この間風邪薬出しとこうかと思ったんだよねー。出さなかったら来ちゃったか」
大して悪くもなってねェくせに救急で来てんじゃねーよ、とでも言われるのかと内心びくびくしていたがそうでもないようなのでほっとした。
 
夜中に転がり込んできてからのこちらの状態を報告する。
カルテをチェックしながら「あー、抗生剤出してくれてないのかー」と担当医がつぶやく。

「うん、扁桃腺の右側が腫れてる」

「好中球の活動が活発なのかもしれないねー。無菌性膿ホウ(筆者注・某日本語IMEでは漢字が出ない。やまいだれに包む)症っていうんだけどさ」

関節痛が持続していることについては
「うーん、尿酸値が少し高いのかもねー」

何だかんだと説明してくれるのだが、今回はこちらの予習不足のためふんふんと聞き流すだけで終わってしまう。

「好中球の活動を抑える薬出しとくからー」
ディスプレイを見ると、コルヒチンが表示されている。どこかで見た覚えのある薬なので「コルヒチンて抗生剤でしたっけ?」と聞いてみる。
「いや、痛風の薬」
・・・思い出した。確かコルチカムだかイヌサフランだかの球根に含まれる成分で、飲み過ぎると死ぬ、毒薬だ。
「あ、妊娠しないでね」
禁酒・禁煙に加えて禁妊娠らしい。

顆粒球エラスターゼの測定は保険がきかないらしい。そこで担当医が出してきた技は、
「ぇえぃ、研究費で落としちゃえ」
「いいんですか?」
「いんだよいんだよー」
「スウィート症候群の疑いと書いといてやろう。珍しい病気だし」

「メモ書いといてあげるね」
薬が大量に出たので、処方箋とは別にメモを書いてくれた。

最後に採血をして終わりである。

現在の投薬回数 のべ9回/day
 NSAID、D2receptor-blocker、コルヒチン
 
 

某月某日

悪心、吐き気がひどい。とりあえずサンプルとして貰ったOTCの胃薬(成分を見る限りではいわゆる苦味健胃薬だ)を飲んでみる。

現在の投薬回数 のべ10回/day
NSAID、D2receptor-blocker、コルヒチン、OTCの苦味健胃薬
 
 

某月某日

一日一回でいいコルヒチンを一日三回飲んでいたことが判明する。薬剤師の友人に尋ねてみると「ばか。」と一言だけ返ってきた。
「コルヒチンの致死量って7mgなんだよ。7mg飲んで死んじゃった人もいるんだよ」
「今、0.5mgの錠剤が十何錠あるんだけど、それ全部飲んだら死ぬ?」
「全部でいくらあるの」
「10mgちょい」
二人くらい殺せるね

死というものは意外と身近なものらしい。

現在の投薬回数 のべ7回/day
 NSAID、D2receptor-blocker、コルヒチン
 
 

某月某日

貰った薬についてあれこれ調べてみる。
例の、誤って三倍量飲んでしまったコルヒチンは大量使用又は誤用による急性中毒症状が服用後数時間以内に発現、過量投与で悪心・嘔吐腹部痛、激烈な下痢、咽頭部・胃・皮膚の灼熱感、血管障害、ショック、血尿、乏尿、著明な筋脱力、中枢神経系の上行性麻痺、セン妄、痙攣、呼吸抑制による死亡があるらしい。副作用発現までに3〜6時間の潜伏期があるそうだ。たまたま生理だったから「今回は生理痛重いなー」で済んでしまったが、実は過量投与による副作用だったのか?(笑)

喉が痛むので、出された抗生剤と消炎酵素薬を自主判断で飲む。一応風邪様症状のとき服用との指示を受けているのでこれでいいだろう。多分。
ちなみにこの酵素薬は抗生物質、化学療法剤、非ステロイド系消炎鎮痛剤等との併用で皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johason症候群)、中毒性表皮壊死症候群(Lyell症候群)、間質性肺炎、PIE症候群(発熱、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多を伴う)、ショック(不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴り、発汗等)の副作用があるらしい。頻度はいずれも0.1%未満だが、この0.1%に賭けてみることにする。
2ちゃんねらーの友人には「そういう厨房なことをしちゃいけません」と突っ込まれた。

現在の投薬回数 19回/day
 鎮痛剤、D2receptor-blocker、コルヒチン、気管支拡張剤、抗生剤、消炎酵素薬



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