保育園では 子どもたちが勝手に 水道の水を出して遊ぶことは禁じられている。 特に冬場は濡れて体を冷やすといけないので 水遊びは御法度になっている。
しかし子どもたちはおままごとに水を使うのが大好きである。保育士の目を盗んでそっと水道の蛇口をひねることもしばしばなのだ。
ある日 園庭で遊んでいると、私の死角になっていた場所から ダイスケくんとミキちゃんがお弁当箱を持って やけに慎重に歩いてくるのが見えた。彼らの後ろには水道。そしてお弁当箱の持ち方、歩き方。これは…。
「あぁ〜っ」 (イントネーションは出だしが低く、「あぁー」を伸ばして「っ」に向けてひょいっと上がり少し責めるような感じで。大声ではない )
と一言私が発すると。
(あっ、見つかっちゃった。まずい…) ダイスケくんとミキちゃんは足を止め、そーっと踵を返して
ゆっくりゆっくり 抜き足差し足忍び足で 水道のところへ戻って 水を捨てると、 また抜き足差し足で ままごとをしていた場所へ帰っていった。照れたような何とも言えない薄ら笑いを浮かべて顔を見合わせながら。
彼らの歩き方は コントに出てくる泥棒のように妙にスローモーで、私はその様子を見ながらくすくす笑ってしまった。
それにしても 「あぁ〜っ」だけで通じるなんて、私って余程おっかないんだろうか…。