ミオは家庭の事情で4月に転園が決まっていた。
「ライオンのプールのあるほいくえんにいくんだよ。ミオ、ぜんぜんさみしくないよ」
と、毎日のように言っていた。しっかり者で理知的な反面、午睡では必ず指しゃぶりをするさみしがり屋でもあり、強がりとも思えたし、どこまでもクールなのかもしれないとも思えた。
さて、年度末の日、ホールで職員と子どもたちのお別れ会が開かれた。ミオは転園する”主役”として、在園児のつくるアーチをくぐり抜けた。その様子は、特に楽しそうでも悲しそうでもなかった。
そして、私が保育室で新年度用の名前貼りにいそしんでいるところへ、彼女は戻ってきた。
「みんなとお別れするのが、淋しくなっちゃったの」
と言って、ぼろぼろ涙をこぼしながら。私はそれを見て、堪えきれずに一緒に泣いてしまった。
はじめて保育士として勤めた年の終わり、子どもたちと離れるのが悲しかったのもあるが、何より、ミオは最初の勤務日にふたりきりで遊んだ相手で印象が強かったせいだった。
ミオはあれから、どうしているのかな。幸せであるといいな。 。