保育士として働き出して3ヶ月くらい経った頃、私は諸々の理由で、仕事を辞めようかと思い悩んでいた。
そんなある日、昼食の後片付けで床を拭きながらそっと溜息をついていると、ちょんちょん、と肩を叩く者が。
ひょいと見上げると、左右に体を揺らしながら、にっかにっかおどけて笑っているアキラの顔があった。彼は空になった皿を指差して、全部がんばって食べたことを、ことばはないまま報告してくれたのだった。
「よく食べたね」と私は思わず笑顔で答えた。
アキラはいつの時代にもいる典型的なやんちゃ坊主で、よく言えばいつも元気な明るい男の子、悪く言えば3歩歩くとすべて忘れるお調子者。
ゲンキな男の子と接し方がわからず敬遠気味だったせいか、この時まで、私の言うことなどまったくきいてくれない子だった。
しかし、彼はこの後、突然意味もなく私の目の前にきて、にっかにっかと笑いかける、という謎の行動をしばらくの間続けた。それに、段々と私の言うことも聞いてくれるようになっていった。
アキラの行動の理由も意味も、全くわからない。
けれど、まるで”元気出せよ”というような、彼の無邪気な笑い顔に救われたことは確かなのだ。それは私にとって、無言の励ましだった。
彼の笑顔に励まされ、私は結局仕事を辞めずに、今に至っている。
だから、ほんとに、君には感謝してるんだよ。アキラ。