11ヶ月で保育所に入ったナギサちゃんは人見知りが激しい。
抱っこされていれば泣きやむが、それ以外はひたすら泣く。保育士の後を追いかけ回して脚にしがみついてくる。
その状態では仕事にならず、眠そうな顔もしているので ベッドに入れる。ベッドの中では落ち着いて遊んでいることも多いのだが、泣き続ける時もある。
打つ手がなくて困ってしまう。
最初はどんなに泣いていても、2,3ヶ月のうちに保育所生活に慣れる子は多い。慣れる早さは子どもの性格や年齢にもよる。
産休明け(生後8週)から働くのはお母さんにはきついかもしれないが、子どもは比較的早く保育所に慣れる。
半年を過ぎてしまうと家庭生活が身に染みている上 人見知りも始まるので なかなか慣れない。
そこから1歳半くらいまでの子どもは順応にいちばん時間がかかるだろうか。
「お母さんは行ってしまった。でもちゃんと僕を/私を迎えに来る」…この後半の部分を理解するのが難しいようである。
ナギサちゃんは入所して2ヶ月経って少し落ち着き、保育士と離れて遊べるようになったと思ったら体調を崩し、また泣いて保育士を後追いする状態に戻ってしまった。
昼食休憩で保育士は保育室にひとりきりなのに、ナギサちゃんの泣き声でお昼寝中の他の子どもたちが目覚めて泣き出すような状況がいちばん厄介だった。
皆の側についてトントンしてやろうにも、何せ腕は二本しかない。
そこである時泣いているナギサちゃんをおんぶしてみた。
彼女は全般に経験不足で、慣れないことをいやがる。
入所したての頃はおんぶをいやがっていたので躊躇したのだが、やってみると意外にも落ち着いてくれたのだった。少しほっとした。
それからは抱っこしていられないが泣いているとき、私はできるだけナギサちゃんをおんぶすることにした。
ある園で「○○園は赤ちゃんの時にうんと手をかけてあげよう、そうすると大きくなるにつれてどんどん楽になるから、って考えで、0歳児クラスはいつ行っても誰かがおんぶされてるの」という話を聞いた。
ところで、園によって保育方法についての考え方は違う。
保育所側として言い訳すると、保育士対子どもの比率(0歳児は1:3)からして,、全員を抱っこやおんぶして手をかけられない面もある。無認可園ではこの比率を遵守できず保育士ひとりに対する子どもの数が多いのでなおさらだ。
泣き出したからといって、必ず適切に対処できるわけではない。冷たい感じもするが、入所したての子どもを4人乗りベビーカーに乗せてひたすら揺するだけ、ということだってある。
だけど、と私はふと思った。
この子には手をかけなければだめだ。
ナギサちゃんが泣きやまず保育所に慣れず、保育士がそれにうんざりしてしまって安易にベッドに入れておくだけになり、さらにナギサちゃんは泣きやまず…「この子はむずかしい子」というレッテルを貼られてしまう。
「おんぶは最終手段」と言って、1歳を過ぎたナギサちゃんをおんぶすることにあまり賛成でない顔の同僚もいた。
だが、私が見つけた方法はそれしかなかった。いつかと同じようなちょっとした開き直りの気分だが、自分の気持ちも楽になったのがわかった。
背中にくっついているとナギサちゃんは安心して機嫌良くなり、指さしをしてあーあー言っている。
そして眠気が覚めれば、あるいは落ち着けば、背中から下ろしても遊ぶことができた。
そうやって手をかけても、完全に慣れるのにまだまだ時間がかかるかもしれない。
が、手をかけなければもっともっと長い時間がかかるだろう。
だから おんぶに限らず たくさん彼女と関わって、私に慣れ、保育所に慣れていってもらえばいいのだ。きっと。