◆ニーズは増えているけれど
数時間、数日という形の一時保育が広まっています。行政の方針として、園が特色を出すために、と理由は様々考えられます。
しかし大抵の保育所では一時保育対応の人員・場所はないのが現実だと思います。預ける側に預かる側の対応が追いついていないのです。正直、そんな準備ができる資金は保育所にはないと思います。
まだまだ問題山積の一時保育。預ける側・預かる側双方にも問題があるのではないでしょうか。
◆一時保育を利用される方へ
見知らぬ保育所に預けられた時のお子さんの様子などは「はじめての保育所」に書きましたので、ここでは省略します。
あのエッセイと異なるのは、一時保育のお子さんは一日中・毎日保育所に通うわけではないことです。以下、やや厳しい書き方になりますがご了承いただきたいと思います。
さて、短時間の一時保育でお子さんがどこまで保育所に慣れるか?と言われれば、ほとんど慣れずに泣いて終わるでしょう、と私は答えます。いきなり厳しいですが、家庭で過ごしているお子さんが見知らぬ場所で知らない人たちに囲まれて、泣かずに過ごせるなんてことはほとんど考えられません。祖父母によく預けているから、というのはあてになりません。その場合祖父母は慣れ親しんだ存在ですから。「見知らぬ場所で見知らぬ人に預けられた」経験を求めているのです。といってもこれ、家庭で育てていると皆無に近いのではないでしょうか。
見知らぬ場所の見知らぬ人に預けられたら自分の子どもはどうなるのか?を想像してください。お子さんは一体、どんな反応を示すでしょう?にこにこ笑ってその場で遊べるでしょうか?お母さんに手を振って別れてくれるでしょうか?
一時保育を利用される方は、どうもその辺のことがわかっていない方が多いのです。残念ながら。
そして保育士は保育を生業としていますが、魔法使いではありません。お母さんを求めて泣き叫ぶ子どもを ”ちちんぷいのぷい”っで泣きやませる術は持っていません。
抱っこしていれば泣きがおさまる子もいれば、触れるのさえ拒否するお子さんもいるのです。
お迎えに来てみたら、ひとりで泣いている…そんな姿を見たら辛いですよね。誰も相手をしてくれなかったの?!と憤る方もいらっしゃるでしょう。しかし誰にも相手をして欲しくないこともあります。保育所によっては「そろそろお迎えの時間だから泣かないように抱っこしていよう」とその場だけ取り繕うこともあります。考えようによっては預けた方はお迎えに来た時泣いていなければ安心するでしょうから これも一概に悪いことではないのかもしれませんが、お迎えの時泣いていたから/泣いていなかったからといって、保育所にいる間じゅうずっとそうだったとは限らないのです。
お子さんがどう過ごしていたのか、お迎えに行った時に聞くとよいと思います。
一度目は泣かなかったのに、二度目は泣いていた、ということもあります。一度目は見知らぬ場所を好奇心で探索して夢中で過ぎてしまうのですが、二度目からは目新しさも失せ、お母さんと別れることのつらさに焦点が当たってしまうようです。そうなると毎日保育所に通う子どもと同じで、最初に泣かなかったお子さんの方が 慣れるのに時間がかかります。
もしも短時間の利用であれば、保育者が比較的手の空いている時間帯を選ぶのがよいと思います。午前中なら昼食までの時間、午後ならおやつ後の時間。保育所の子どもたちが遊んでいる(もしくは製作など活動している)時間帯です。昼食、午睡、おやつの間は保育士の動きもあわただしいですし、午睡時は静かにしていて欲しいという制約も生まれがちです。一時保育専用の部屋・保育士がいる場合は別ですが、そうでない場合がほとんどだと思いますから。
それから、一時保育の場所・保育士に慣れるまでは食事や睡眠を取るのは難しいと思います。確かに空腹で機嫌が悪く、食べて落ち着くこともあります。が、知らない人に「これ食べましょう」と言われても、手作りのお弁当さえ拒否することもあります。
食事時に預けることになり 「他のお子さんが食事しているのを見たら うちの子だって食べたくなるに違いない」と思われるのが親心でしょう。
しかし、泣いている状態では食べられるものも食べられません。泣いているのは「ぼくに食べ物がない」からではありません。
空腹でも眠くても、子どもたちは泣いて頑張るのです。絶対知らない人の言うことなんかきかない、お母さんじゃなきゃやだ、と。
一日利用される場合は昼食・おやつを食べることになります。この時も申し訳ないのですが適量食べられるという期待は薄いです。泣いて泣いて頑張って、生理的欲求に勝てずに一眠りすると落ち着いておやつを食べるというのはよくあります。
昼食を食べない理由として考えられるのは 朝起きるのが遅く朝食も遅かったので空腹でない、ということ。保育所の昼食は11時、あるいは11時半で一般的な家庭より早めです。それから用事があっていつもより早く起きて預けられているため、眠くて機嫌が悪いこともあります。
以上まとめてみますと
● 一時保育に預ける時、子どもは泣き通しになる可能性もある
● お迎えに来た時の様子だけでどう過ごしたかを判断せず、保育士にお子さんの様子を聞く
● 一度目は平気でも二度目から泣くこともある
● 短時間の利用ならできれば昼食、午睡、おやつの時間帯を避ける
● 食事や睡眠がいつものように取れるとは限らない
● 普段と違う時間に起きるという生活リズムのズレがお子さんに影響する
このように、一時保育を初めて利用される時は、それなりの覚悟をしておいて欲しいと思います。大げさで、なんだか脅すようで申し訳ないのですが。
それから、子どもには大人のように「保育所はこういうところ」という知識がありません。それも心にとめておいてください。
◆預かる側として
一時保育では、預かる側も毎日登所するお子さんと同じように考えてはいけないと思います。子どもたちは、お母さんと離れた時に側にいた保育士について歩くことも多いので、一時保育を担当するクラスの保育士が最初にお子さんと接するのが理想です。その保育士とまた別れると、子どもたちは誰をよりどころとしていいかわからなくなってしまうようです。あるいは、この人にも行かれてしまった…と再び絶望感が襲うかもしれません。
お子さんが身につけている上着やリュックは無理に離さないようにします。おもちゃは紛失もあるのでお母さんと別れる時に持っていってもらうのがよいでしょう。それ以外の着衣・荷物は本人が納得するまでそのままにしておきます。「自分の」荷物を身から離されると、子どもたちの不安は増長するようです。
抱っこで落ち着くならできるだけ抱っこします。嫌がるならこれも無理にはしません。
ひとりで置いていかれて泣いていても、意外に平気なのが外遊び。お迎えが来るまで外にいられるなら、外で遊ばせるとよいかもしれません。
お母さんと別れると 激しく泣くお子さんが多いのですが「もういい加減にしなさい」などと泣くのを止めるように諭してもあまり効果はないと思います(保育士によってはこれで泣きやませられる人もいます)。
このケースに限らず、お子さんの気持ちを代弁するようなことばかけをするようにしていきたいと思います。
「お母さんがいなくなって寂しいのね」「どうしてぼく・わたしを置いて行っちゃったの?って思うよね」「お母さんもう帰って来ないって思うよね」など(この辺のことばかけについては私も勉強中です)。自分の気持ちをわかってもらえたことで、ある程度落ち着くお子さんもいます。
泣きながらも周囲を見渡すようになったら、おもちゃを見せたり名前を呼んだりして遊びに誘ってみましょう。最初のパニックがおさまり、ここは一体どんな場所なのか?をお子さん自身が観察し始めているのです。自分と同じような子どもが楽しそうに遊んでいる…どうも危険な場所ではないらしい…コワイ場所でもないらしい…。そこが気持ちを切り替えられるいいタイミングだと思います。
最後の手段として保育所にあれば、テレビをつけるというのもあります。家庭にあるものに子どもたちは安堵感を覚えるようです。既知のキャラクターや番組に気を取られて泣きがおさまり冷静になれることも多くあります。
預かる時には事務的な必要事項の他に、泣き通しになるかもしれないこと、食事を摂らないかもしれないことを話します。お迎えが来た時には保育所でのお子さんの様子を伝えます。きめ細かく対応し、逐一詳しく説明する必要があると思います。
◆子どものことを・親のことを考える
預ける方に対しては、繰り返しになりますが お子さんは自分と離れた時点でどういう状態になるか、自分と離れて過ごすとはお子さんにとってどのくらい辛いことなのか、を一度想像してみて欲しいと思います。一対一で相手をするわけではない保育所に預けるということがどういうことかを。
そして預かる方は、預ける側の「わかっていなさ」(失礼ですが…)を理解して事前に説明し、理解を得るよう心がけることが大切だと思います。
これらは一時保育だけでなく、現在の保育所全般に言えることだと思います。保育所と保育士のあり方は、今まさに変わろうとしているようです。