◆年齢に合わせて選ぶ
私はいくつかの保育所に勤めてきましたが、どこにも保育室にたくさんの絵本がありました。 けれども肝心なのは量より質。
保育室に置いてある絵本で その保育所の質が見えてくるかもしれません。
* 無認可園A
「建物も新しく、たくさんの絵本があります!おすすめの園です」 と口コミ誌に書かれていたので期待して勤めた園。
だが たくさんの絵本のほとんどは 小学生向けの児童書。他の絵本も、その園が主に預かる0-2歳児向けのものは少なかったのです。ただ、絵本を読むコーナーは区切られていて 子どもたちが椅子に座って静かに絵本を読める環境になっていました。
* 無認可園B
0歳児の保育室で朝夕 合同保育をするため 1歳児以上対象の本も置くのは仕方ないのだけれど、赤ちゃんたちに食べられ
引きちぎられて本がぼろぼろ。まともに読める本がほとんどなく、本を読むコーナーもありません。 絵本はおもちゃの一部になっていて、袋につめて持ち歩いたり、ひどいと投げられたりしています。
絵本には 対象年齢が書かれていますが、それは内容だけでなく 装丁にも関係があると思います。子どもたちにじかに与えるなら、0歳、1歳児の手で めくれないような 紙の薄い本を渡すべきではないと思います。 厚紙や布製など、赤ちゃんたちの手で扱える本がきちんとあります。 それを吟味して与えるのが 保育士の役目ではないでしょうか。
私は本が好きなので 人よりこだわりがあるのかもしれませんが、 読み尽くされてぼろぼろになったならともかく、
絵本を絵本として扱えない赤ちゃんに与えた結果 修繕できないほど痛んでしまった絵本を見ると悲しくなります。
余談ですが、 絵本の選び方・管理が下手な園は おもちゃの選び方・管理も同じように上手くないと思っています。
◆楽しいお話ならよいか?
昔話には残酷な内容が多くあります。子どもたちに刺激が強すぎる、と いつ頃からか 残酷な描写を削り 登場人物・動物はできるだけ死なないように話が改ざんされるようになったようです。
死や恐怖や悲しみを取り除いて 「楽しい楽しい」だけにしてしまったおはなし。 私はそんなものには何の魅力もないし、何の意味もないと思います。
生きていれば 様々な感情の波が絶えず押し寄せてきます。 楽しいだけの人生なんてありません。子どもたちだって喜怒哀楽を感じて生きています。
成長するにつれて その感情は複雑になっていき、葛藤もうまれます。 大好きなお母さんが自分の思うとおりにならなくて だいっきらいだと思うこともあるでしょうし、あきらめなければならないと頭の隅でわかっていても
欲しくてたまらないおもちゃを目の前にして 泣きながら自分を納得させることもあるでしょう。子どもたちは様々な感情を制御し、自分を育てていると言ってもいいと思います。そういう心の動きを疑似体験できるのが物語の貴重な役割なのです。それなのに「楽しい」だけの世界を見せていては、物語は本当に何の説得力もない空想のかけらになってしまうように感じます。
そして死は生の終わりに必ずあるもの。その存在を否定することはできないでしょう。死を含めて人間が経験することすべて、物語にはそれが含まれているべきだと思います。
子どもたちにはまだ明確な死の概念がありませんし、残酷な描写を聞いてもそれが実際にどうなることなのかわかっていないようです。ただ漠然と「かわいそう」「さみしい」「いやだ」「悪いことをされた」と感じるくらいではないかと思います。その感じをうち消してくれる展開が物語にはあるはずです。それが”いやな思い”を解消するひとつの練習になるのではないでしょうか。
勧善懲悪を、世の中はそんなに単純ではないと嫌う風潮もあるようです。けれども悪はうち砕かれて善が勝つ、という、未来に希望を持てる展開は、人生に期待感を抱かせるのによいと思います。古典的推理小説や二時間の推理ドラマが何故人気かと言えば、必ず最後に謎が解けて
読後、あるいは見終えた後にすっきりとした爽快感があるからだそうです。最近の推理小説はそういう単純さだけではなく、最後に葛藤を残したままというものもあります。その方が文学的価値はあるのかもしれませんが、問題解決した読後感の良さを求めて読むとしたら不適だと思います。
それと同じように、大抵主人公に自分を重ねて物語を辿る子どもたちには、話の筋立てとしては単純なものでよいのではないかと思います。成長していけば、「世界で一番美しい」座を守りたくて継子(本当は実子だとか?)を殺せと命じる女王の気持ちがわかり、そちらに肩入れするようになるかもしれません。
最後にひとつ、私の友人がディズニーの「リトルマーメイド」について語った感想を紹介します。彼女は自分の子どもと一緒にこの話を見ました。しかし私たちの知っている「人魚姫」とはラストが違います。ディズニーはハッピーエンドでなければならないのでしょう。それがディズニーの限界なのでしょうか。
「人魚姫って最後に泡になってしまうでしょう?子ども心に"かわいそう、なんか、せつないなぁ"ってきゅんとしたんだよね。それがよかったんだけどな」