〜 保育室から 〜

◆家庭を成り立たせることは、簡単なようで結構難しい。 (2005/4/9)


◆家事は女のもの?

 
最近新聞で見た意識調査によれば「結婚しても妻は仕事を続けて欲しい」という割合が増えているそうで、専業主婦を希望する男性は減ってきているようです(記事が手元になくうろ覚えですが)。
 しかし、現実に夫婦ふたりがフルタイムで働いている家庭では、帰宅して家事をやるのは圧倒的に妻の役目になっていませんか?
 女性が家事をやるのが当然、という感覚を持っている男性はまだまだ多い気がします。何もしなくても構わないぞ、と口では言いながら (また外食かあ、もっと料理して欲しいなー)と心の底で思っている夫たちや、意識調査では「家事は分担すべき」と答えていても 家庭の家事ってどのくらいあるのかわかっていない方々、とかね。

 仕事を終えて帰宅し、家事をする余力なんてない状態はよーーーく分かるのです。会社員時代は残業して家に帰ると「おかーさーん、ごはん」と言って夕食を食べる>「お風呂はいる」>「おやすみ」という、まさに「メシ、フロ、ネル」の生活をしていた私ですから(笑)。その当時男性と同じ労働条件で働いていたにもかかわらず、会社では「家で飯作るのか?弁当くらい自分で作れよ」と男性社員に言われてむっとしたこともありました。
 労働時間の差はあれど、働いて疲れるのは皆同じです。それを家事は女性がするもの、と思われていると女性に不満が溜まります。家事をすることだけでなく「私の大変さを理解してくれない!!」点で。それからもうひとつ、女性だからって家事が得意なわけではありませんから(って、これは私のコトね)。

 ただ、夫に家事協力を求められない場合もあると思います。夫が朝早く出て夜遅く帰る家庭や、緊急事態で家を出たらいつ帰るか判らないような職業など。
 ですから家庭によって、家事分担の割合は異なると思います。家庭の状況を鑑みて、夫婦納得の上で家事分担をするのが理想ですね。現実には難しいですが。


◆置き去りにされるのは子ども
 
 保育所・幼稚園の開園時間は年々長くなる傾向にあります。朝早い出勤の方・朝ゆっくりで夜遅い仕事の方、様々な勤務形態の方がいるので それはそれでよいと思います。でも、開園時間が長いからといって 長時間子どもを預けるのは 子どもにとってよいと思いません。
 毎日保育所に通わせていると、保育所は親にとって擬似家庭のような感覚になってしまうようで…というのは[家庭のような存在だ」という意味ではなく「家庭のように毎日行く・いるのが当たり前という点」で、です。
 それで親の休みの日に必ず「お出かけ」、それも遠出をする方がいますが、子どもは毎日保育所に「お出かけ」していると考えて欲しいです。保育所はあくまでも集団生活です。遅くても 1歳を過ぎれば個人のペースでの生活はできなくなります。しかも週5日(あるいはそれ以上)一日10〜12時間を過ごしている子も少なくない。これだけで子どもたちは疲れています。そして家に帰れば親と関わりたいために、または親が家事を片づける間寝かしつけるゆとりがなくて、等の理由で夜更かしになってしまう。
 だけど、週末気晴らしに出かけなくちゃ私がやっていけないもの!と思うお母さんもいるでしょう。
 そうなのです。そこが難しい。

 二重保育も広まってきました。毎日保育所の後はシッターさんに見てもらう。それだけでなく、月−金は幼稚園や学校、土日は保育所やシッターさんというパターンもあります。変則勤務の親は平日が休みで土日出勤があり、土日も保育の手が必要です。けれども子どもは月−金は幼稚園か学校で土日も家にいられない。親に休みはあっても子どもには休みがない生活。これも事情は判るけれど、賛成しかねる状況です。

 アメリカ映画で−映画でしか見ていない世界ですが− 妻がバリバリのキャリアウーマンで仕事のために転勤し 事実上離婚している夫婦や、帰宅が遅く家でも仕事の母親に対し、我儘放題で何でも買ってもらっているのにまだ我儘を言う子ども、というのを見ます。
 おそらくこの状況はもう家庭と呼べないと思います。離婚も女性が仕事を続けるのも悪いことではありませんし、離婚を否定するわけではないのですが、どうも子どもが置き去りにされていると感じます。何でもアメリカの真似をして、家族の破綻が当然になっていくことはないでしょう。
 確かに一旦仕事を辞めたらキャリアは中断されてしまう。そして日本は再就職がかなり難しい国。中断したキャリアをそこから再スタートできるような状態ではないと思います。でも…子どもたちはどうなるの?


◆わかってほしい

 男は仕事、女は家庭。それは時代錯誤なのだけど、ある程度そのような、家で誰かが待っていてくれる・家で過ごせる時間が長い・家庭に家族の精神的支柱となるひとがいるというのは、子どもにとって重要だと思うようになりました。保育日記「求めているひと−保育士の限界」でも書きましたが、どんなに好きな保育士がいても、子どもたちにとってのいちばんは親なのです。と言うのがお母さん方にプレッシャーをかけることになるかもしれません。けれども私たち保育士がいちばん歯がゆいのもこの点なのです。
 みんなお父さん・お母さんがいちばん。できるだけ長く一緒にいたい人。家庭でくつろぐのは子どもたちにもたいせつなことなのです。
 様々な保育の形態が現れたため、就学前はまだよいです。小学校に上がってからの方が問題です。ここ一、二年のニュースを見ていると 子どもだけで留守番させるのも登下校させるのもかなり危険なことだと思われます。塾に行くからひとりで夕食を食べる子ども。食の乱れも気になります。

 雇用側や国の人間にも訴えたいです。
 共働きが当然になって家族のあり方が変わった今、家庭で過ごす時間が長くなるよう労働のあり方を考え直して欲しいと思います。残業するのは残業手当がなければ収入が少ないからという理由もあります。長時間仕事するのが熱心でよいという価値観は古いと思いますし、効率よく仕事をして定時であがっても充分な収入があるような状態を理想としていただきたいと思います。少子化対策に保育所やその定員を増やし、育児休業期間を長くすれば問題が解決するなんて甘い考えではありませんか。もっと根本的に労働形態・意識を変えることを考えていただきたいのです。
 
 そしてお父さん方。仕事をしながらの子育てがきついのは、女性が矛盾の中で悩むからです。子どもはかわいい。仕事を切り上げて保育所の送迎をするのが嫌なわけじゃない。けれどもそのおかげで 出産前はこなしていた残業ができなくなり、出世したいわけじゃないけれど自分のキャリアに見合わない程度の仕事しか回されず、いつしか数年下の男性(能力的には自分より低い!)の後輩が上司になり、自分と同期の夫が管理職に昇進し、ただそれを見つめている哀しさを感じる。…だからと言って子どもさえいなければなんて思わない、でも子どものために犠牲になっているのは私だけ…?そんな複雑で解決しようのない気持ちを抱えていることをわかってください。


◆家庭というもの

 もっと子どものことを考えて欲しい−保育所に勤めていると本当にそう思います。
 親なんだもの、私がいちばん子どものことを考えているわ、わかってるわよ、とおっしゃる方もたくさんいるでしょう。実際、そうなのでしょう。
 理想型でなくても子どもはたくましく育っていく力があるとも思います。
 ただもう少し子どもの気持ちに気づいて欲しい、子どものことを見て欲しい、と思う親御さんがいるのも事実です。両親が家にいなくても、近所の方や祖父母という身近な大人がいて「親はなくても子は育つ」時代でもありません。
 家というハードだけが存在しても 家族というソフトがその中にいて関わり合わなければ、家庭は成り立たないと思います。そして関係を修復することは時間が経つにつれ、どんどん難しくなっていくものです。
 私は今、保育所の子どもたちと親を見ていて、家族のあり方が最重要の問題だと思っています。



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