〜 保育室から 〜
◆駆け出しの頃
辛かったこと、楽しかったこと、アドバイスされたことを書いてみました
◆辛かったこと
〜喉が枯れ、風邪を引く
私は初めて勤めた保育所で3歳児クラスの担当(パートで遅番専門勤務)になった。
3歳児クラスにもなると、保育所生活で 子どもたちがやらなければならないことは案外多い。
生活面は自立しているので 自分で行動してもらうのだが、そこは3歳児。 例えば食後は 食器を片づけ うがいをして パジャマに着替えて・・・ なんて、ひとりでスムーズにやるわけがない。
○○くーん、XXちゃーん、●●してーと声をかけても、子どもたちも互いに声高に喋っているため 大きな声を出さないと 周りの話し声にかき消されて聞こえない。
私の声はもともと通らないし、会社員時代は大声を出すこともなく すっかり声帯が退化していたためか、大きい声を出すと 怒鳴り声になってしまった。
そして勤めて一週間で喉がかれ、がらがら声になった。これはきつかった。
新米・新顔保育士で ただでさえ子どもたちが言うことを聞かないのに、打つ手なしになってしまったのである。
現在は 声帯も眠りから覚め(笑)、 学生時代鍛えた腹式呼吸を使って発声しているので 喉がかれることはなくなった。
なお、声でひとつ言うならば、喉のためにも子どもたちのためにも怒鳴り声はよくないと思う。
子どもたちはやがて、大声を出す=怒鳴る、を覚え とんでもなく嫌な声で友だちの名前を呼ぶようになる。しかもどこか人を責めるような口調なのだ。それを聞くと、こんなことを保育所で覚えさせるようではだめだ、とつくづく思うのである。
風邪もよくひいた。勤めて二週間で風邪をひき、、その後 半年くらいは ほぼ1ヶ月おきに風邪をひいていた。
遅番を受け持っていたため 具合が悪くても仕事を休めず (そうでなくても保育所というのはパートでさえ当日休みが取りづらい職場である)、週末にならないと病院へ行くこともままならず、市販の薬は効かず、最悪な日々がしばらく続いた。
〜ワザがない!
私の場合、保育士資格は試験で取った ただの紙切れである。学校に通っていれば習うはずの手遊びも遊戯もまったく知らない。保育実習もしたことがない。
特に手遊びは 楽しい遊びというだけでなく 子どもが集中するので、 紙芝居や絵本を読む前、 何かの会がはじまる前などに非常に有効なのだ (もと幼稚園教諭談)。
これを知らずに保育は出来ない。 だから、他の保育士がやっているものを見よう見まねで覚えるしかなかった。本や雑誌にもたくさん載っているのだが、 何故かあまり使われておらず、ウケない。
現場でやっているものを覚えるのがいちばんのようである。
しかし、最初に勤めた保育所では ほとんど手遊びをしない担任のクラスに入ってしまった。 そこで私が覚えた唯一の手遊びは、同じクラス担当だった
もと幼稚園教諭のパート職員がやっていたものである。
その後、他の保育所で少しずつレパートリーを増やし 今に至っている。 ちなみに、 同じ手遊びでも保育所によって微妙にバージョンが異なるので、そこは臨機応変に対応すべし。
〜恐怖の午睡当番
最初の保育所勤めで 何がいやだったといえば、これである。
3,4,5歳が ホールで午睡し、 各クラスが順番に 監視当番をするのだ。
保育所では午睡中に職員の打ち合わせをすることが多いため、午睡当番はパートがやることになる。
その時の 5歳クラスは、学級崩壊とまでは行かないが、まったく 話を聞かない、まとまらないクラスであった。特に男子は 担任でなければどうにもならない。(担任でもどうにもならないこともあったが)
それを知ってか知らずか、5歳児の担任は子どもたちをホールに連れてきて、ろくに寝ないまま休憩に入ってしまう。残されるのはパート職員。ひとりのときなどは悲惨であった。
寝るか静かにしているかと 言い聞かせても、 隙あればお喋りをして 他の子の入眠を邪魔しようとする。 3時までがとても長かった。。。
午睡時 どうしても眠らない子どもたちを 別室で静かに保育できればよいのだろうが、そういう環境を作るのは難しいのが実際のところである。
〜散歩もつらい
春、秋、初冬、天気の良い日はお散歩に行く。
先頭は担任。しんがりは私。たまに保育士三人で間にひとり入るときは、私はすかさず間に入る。
保育所のお散歩は0、1歳児クラスはベビーカーか避難車(体育館のボール入れみたいなやつにタイヤがついているもの)、2歳児クラス以上は徒歩になる。
2歳児は保育士の片手に2,3人ずつ手をつなぎ、避難車も併用する。
3歳児以上は子どもがふたりずつ手をつなぎ 一列になって歩く。
だが、列の途中で遅れがちになったりはみだしたり、予断を許さないのが3歳児である。私はしんがりから
「○○くん、道路の端に寄って」
「XXちゃん、間空いちゃったよ」
「お手手出さないでー(注・路傍の自販機や壁につい手を伸ばすのが子どもたちである)」
と注意しながら歩く。当然、ここでも喉はかれる(笑)。
片側三車線の信号を渡るときなどは 冷や汗ものであった。途中で靴が脱げ、子どもがパニックになって泣いてしまったときには 私の方が泣きたいくらいだった。
しかし事故に遭うこともなく、散歩は無事に終わったのであった。
ちなみに。休憩室で他のクラスの職員数名と一緒になったとき
「3歳児クラスで(18人)、担任とパートだけで散歩っていうのは よくやるなーと思うわよ」
と言われた。そうか、やっぱり無謀だったのか。。。
◆楽しかったこと
〜得意科目
私はお絵かきが好きな子どもであった。自由遊びの中で、これが唯一の武器となった。
「先生○○描いて」 と子どもに頼まれて描いて以来、子どもたちは 「でめ先生は絵がじょうず」と思ってくれるようになったらしい。その点で私は、一目置かれる(?)ようになったのである。
類は友を呼び、絵の上手なミユキちゃんは特に私のことを好きになってくれたらしく、新年度担任が替わって なかなか顔を見なくなった頃 久しぶりに会うと
「でめせんせー!」
と駆け寄ってきて、抱きつく・・・と思いきや 勢いあまって私の背後の壁にぶつかる、というベタなネタまでやってくれた(笑)。そうやって喜びを表現してもらったことがとても嬉しかった。
〜いつもの空間
早番・遅番の時間帯は当番制。保育士がローテーションしているため、ほとんど担任に会えない、という保護者の方も多いと思う。しかし私は「3歳児クラス遅番」担当保育士であったため、3歳児クラスは 毎日私ともうひとり朝・夕2時間ずつ勤務のパート保育士で固定された環境にあった。
つまり、夕方から3歳児クラスは 同じ部屋で同じ保育士が、だいたい同じメンバーと過ごすようになったのである。それを 変化がないからつまらないと言えばそれまでだが、 一日のうちで 保育士が入れ替わり立ち替わりするのは 人的環境として落ち着かない。
いつもの時間帯、いつもの場所でいつもの人たちと過ごすことで環境は安定する。変わるのは遊び。
遊びにも流行がある。最近はみんなパズルに夢中。今はブロック。今度はお絵かき。
そして子どもたちにも波がある。○○くんはここのところ怒りっぽい。XXちゃんは甘えん坊になった。△△ちゃんはぐっとおねえさんになってきた ・・・そういう子どもの様子をじっくり観察できる。
ベテランであればあわただしい日中の保育でも 子どもたちの”今”の状態を察知できるのかもしれない。けれども新米の私にはそれが難しかった。ひとりひとりの”今”にきちんと対応するには、この固定された環境が有り難かった。
子どもたちにとっても いつもの時間が安らぎであり、落ち着いて遊びが出来る場になったのではないかと思う。
あの時、3歳児クラスの影の担任は朝・夕2時間ずつ勤務のパート保育士だったと思う。毎日同じ時間帯に必ずクラスにいてくれる彼女が、子どもたちの拠り所になっていた気がする。
〜無事故
パートなのに遅番を任されているということは、正職員と同等の責任があるということである。
事故を起こしたら雇った側の責任にもなる。未経験者を雇ってくれた園に迷惑はかけられない。
そんなわけで、私は事故に神経質であった。
といっても、園庭で転んだ・他の児に押されて切り傷をつくった、という怪我はあった。それらは防ごうとしても全部は防げない。
しかし、とりあえず事故報告書を書くような事故は一件もなかった。
そんなの当然。と思われるかもしれないが、その年の3歳児クラスでは、なんと3件もの事故報告書を挙げるような事故が起きたのである。(同クラスで3件は多い方です)
いずれも私が休暇か、その場にいないときに起きた事故だった。大変利己的だが ”私は大きな事故を起こさなかった”ことは、この保育所の勤務中 唯一胸を張って言えることである。
◆アドバイスされたこと
〜まずはたくさん遊ぶこと
初めて勤めた保育所で主任に言われたこと。
「まずは子どもたちとたーくさん遊んで仲良くなるのよ。そうすると ”いつも遊んでくれるこの人が言うことは聞いてやろう”と思ってくれるから」
それで何の経験もなかった私は、とにかく子どもたちと遊んだ。遊び相手としては受け入れてもらえたが、そこから「保育士」として認められるまでは長かった(ような気がする。記憶が定かでないのだが)。
経験を積んでいくと 貫禄だか風格だかが身に付いてきて、はじめて受け持つクラスでも すぐに子どもたちが慣れてくれる。それまでは
とにかく遊ぶこと。
〜自分から声をかけること
保育の現場に入って戸惑ったのは 指示が出ないこと。 指示待ち人間のつもりはなかったが、私は多分そう思われていただろう。
会社では「これをやって」「あれをやって」と何らかの指示がある。けれども普段の保育では 上の人が指示を出すよりも 下(新人やパート)が 「次どうしましょうか」「何かやることはありませんか」と聞くのが一般的のようである。
また 食事の介助をしていて これで終わらせてよいかどうか など 判断に迷うときは どうすればよいか 他の保育士に聞いてみるとよいと思う。 いつまでも人の判断を仰いでいては困るのだが、 新人のうちは どうしよう?と思ったら ひとりで困り果てていないで 声をかけること。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言いますが、わからないことはきちんと聞くこと。 学校で勉強してきたでしょうー?!と意地悪を言われることを恐れ、 知ったかぶりしてやってしまい あとからこんなことしちゃって…というケースは周囲も迷惑します。