誕生・・
頭が少し大きいため出産予定日前に陣痛誘発剤での
出産が決まった・・。子宮を開くために、風船のような物
を入れられた・・。鈍い痛みがジクジク襲ってくる。。。

「ああ〜いよいよだ・・。」まだ心の準備もつかぬままの
出産・・。朝一番で点滴もスタート・・。じわじわ襲ってくる
陣痛が尚もママの気持ちを不安にしていった・・・。

だんだん強くなる陣痛・・。先生が心音の確認に来た・・。
「心音も弱くなっているから、多分産声もあげないと思い
ます・・。」返事する余裕も無い・・。ただ、怖かった・・。
猛烈な痛みでママは言葉を失う・・。パパの懸命な励まし
が伝わってくる。。。

そして・・H11年11月24日 2196グラムで誕生!
女の子だった・・。産声もあげない、恐らく死産であろうと
言われていたのに・・産まれた瞬間にか細い産声を3回
あげた・・。分娩室の外で待っていたパパの耳にもちゃんと
3回聞こえたらしい・・。産声を聞いた瞬間、今までの迷いは
消えていた!!「生きて!生きて!生きて!奇形でも良い
何でも良い、どうか・・生きぬいて!!!」
集中治療室に運ばれる前に、看護婦さんが夢香を見せて
くれた・・。口をもごもご動かし、うっすら目を開けていた・・。

その後、パパは集中治療室に行った・・・。
ママは一人、分娩台で祈っていた・・。「生きて!お願い
だから生きて・・。どうかこの世に神様がいるなら夢香を
助けて下さい・・。私の夢香を連れて行かないで下さい・・」
必死に心の中で祈った・・。

でも、その祈りは届かなかった・・。1時間後、夢香は静かに
息を引き取った。初めて抱いた夢香はもう硬く目を閉じた
ままだった・・。頬を撫でるとまだぬくもりが残っている・・。
母が優しく夢香の頭を撫でる・・。「よく頑張ったね・・」と。
その光景が辛く苦しく、涙があとからあとから出て止まらな
かった・・。

先生のお話しがあった・・。へその緒から検査をしたが、夢香の
奇形の原因は染色体異常でもなく、突然変異でたまたまの事だと
言われた・・。たまたま運がなかっただけだと・・。パパのせいでも
ママのせいでも、ましてや夢香のせいでも無い・・。
誰のせいでもなく・・たまたま運が無かっただけ・・。妊婦さんなら
誰にでもおこることが、たまたまママに起こっただけだと・・・。
辛かった・・やりきれなかった・・たまたまの事がどうしてママに
おこるの?どうして夢香におこるの?どうしてよ!!!

夢香と一緒にいさせて欲しい・・。そう願い病室に夢香を連れて
来てもらった・・。顔を頬に付けると冷たさが伝わってきた・・。
「夢香・・ゆめちゃん・・」つぶやいても夢香は目を開けない・・。
だんだんと、色が変わってくる夢香を見て、奇形だと知らされた時
一瞬でも奇形なら死んでしまった方が良いのかも?と、思った
自分が許せなかった・・。「ごめんね・・ごめんね夢香・・」
夢香を抱きしめ泣くママを、そっとパパが抱き寄せる・・。
「ごめんね・・ごめんねパパ・・」パパの目からも涙が溢れ出す・・。

パパの両親が病院に駆けつけてくれた・・。パパの両親にとって
初孫だった・・・。パパのお母さんが、「パパに似てるね・・」
と、涙を流す・・。パパもたまらず号泣。。。。

誰にも見取られず逝ってしまった夢香が不敏でたまらなかった。
せめて逝く時は見送ってやりたかった・・。
ママの腕の中で逝かせてやりたかった・・。

冷たくなった夢香を見つめ、この子の重みを忘れないでいよう!
この子の声を覚えておこう!この子の顔を忘れないでおこう!
夢香の全部を覚えておこう!

夢香はその後、パパ達が家に連れて帰った・・。夢香の火葬の日
病院側から外出の許可がおりた。家に帰ると、小さな小さな棺おけ
に、花がたくさん敷き詰められていた・・。その中で安らかに眠る
夢香・・。そっと、頬を撫でるとひんやり冷たい感触がした・・。
棺おけにお菓子をたくさん入れ、ふたを閉める瞬間、胸が閉めつけ
られる思いがした・・。お別れなんだ・・。夢香とお別れ・・。

そして・・夢香は小さな小さな宝石のような骨になった・・。