6.交渉のようなもの
4月20日。内容証明郵便の猶予期間を一日前に控え、ようやく管理会社から電話。内容証明で全額返還とのことだったが、大家とも相談して、敷金は返せないが、請求していた4万円をチャラでどうだということだった。
私「でも、この物件は貸主が管理会社で、大家は関係ないんじゃないですか?」
管理会社「いえ、そんなことはないです。大家の代理をしている訳ですから」
「そうなんですか」
「内容証明郵便を受け取ったのは、あなたが初めではなくて、過去、何回かありました。法的措置をとられるとのことでしたけど、裁判になっても、お金も時間もかかりますし、話し合いで済ませたいんですよ」
「私の考えは前と同じということで」
「裁判になって、どういうことやるか知っていますか?」
「いえ」
「裁判官が前に立って、あなたと大家が法廷にたちます。裁判官が話し合い(和解)を勧めます。それで終わりなんですよ。裁判になっても、何度も行かなくちゃなりませんし、全額戻ることは、殆どありません。お忙しいなか、お金と時間もかかりますし」
少額訴訟なら1日で済むし、金もさほどかからない。もちろん、和解に応じるかどうかは、自由だ。
「今日、いきなりというのも何ですから、来週またお電話します」そう、相手が言って、電話を切るのを制して聞いてみた。
「●●さんは、何年目なんですか?」
「もうかれこれ、3、4年目です。ですから、裁判で全額戻らないことも分かっていますし、消費者センターや、都の住宅局のかたも知っていますし」と答え、再度、時間と金がかかることを付け足した。
内容証明郵便を送ると、当然、法的措置に踏み切ることを示唆している訳で、貸主があっさり、敷金を全額返してくれることも少なくない。だが、今回はそう簡単に事が進まなかった。
調べて、法律的にも敷金返還には自信があったが、何故、相手は返してくれないのか分からなかった。それまでの電話では出てこなかった大家の存在。大家がいることは知っていたが、契約書には大家の名前は一切、表記されていない。正確に言えば、貸主(大家)の代理人として管理会社と契約していることになる。
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24日、管理会社から電話。話は先週と何一つ変わっていなかった。
私「借り主に修繕義務はないですよね」
管理会社「リフォームして渡すのがうちのやりかたですから」
私「退室日に立ち会わないというのもおかしいんじゃないですか?」
管理会社「立ち会わないのがうちのやりかたですから」
話は進まなかった。そして、管理会社は先週と同様、裁判になったところで時間とお金がかかるだけと言い、裁判でも全額返還はありえないと断言した。じゃあ、いくらかかるのかと聞けば、知らないと言う。実際は、証紙代ぐらいしか、かからない。
「困りましたねえ」管理会社はそう言って、「こちらとしては、話し合いで済ませたいんですよ」と、苦笑する。
内容証明郵便で全額返還を要求し、猶予期限の21日を過ぎても、管理会社は話し合おうと言う。
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25日、東京簡易裁判所に電話する。
大家はいるが、大家の名前は契約書になく、管理会社が代理で貸主という契約。被告は管理会社になり、建物の登記簿謄本の登記書と、管理会社の存在資格証明が必要になるとの答えだった。
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26日、東京法務局新宿出張所で「区分建物全部事項証明書」を東京法務局渋谷出張所で「現在事項全部証明書」を手に入れた。ともに1000円。
夜8時。管理会社と連絡がつく。管理会社の担当者は、大家と上司に相談したが、全額返還の要求は受けいれられないと話した。裁判になるのなら、それもしょうがないという態度。信じられなかった。大家も無知なら、管理会社も無知。
修繕費を4万円負けて14万円だという、新しい請求書をファックスでもらった。わからなかった。何故、それほどまでに自信があるのか……。