7.いざ、訴訟
4月27日。霞ケ関駅で下車して、東京簡易裁判所(民事)に。地下1階19階建ての建物。「厳重警戒体制」の看板。入り口の両わきを警備員が固める。1階の相談コーナーに。
相談カードに必要事項を記入して、受付番号券を引いて待つ。解決には、3つのやり方がありますと、窓口で説明を受ける。
<支払督促申立>書面だけによる手続き。
<調停申立>呼び出しを受け、調停委員2名が入り、話し合いによる解決。
調停不成立の場合は通常訴訟へ。
<訴訟>取り下げ、和解、判決の解決。
通常訴訟……何度か呼び出され、解決に時間がかかる反面、
じっくりやるのには適している。
少額訴訟……30万円以下の金銭支払い請求。原則、1日で審理完了。
被告側は期日前、期日開始、判決後のいつでも通常訴訟へ
移行できるが、原告はできはない。
原告側は判決に不服の場合、異議を申し立てることができる。
少額訴訟のつもりだったが、判決に不服でも通常訴訟に移行できないと聞いて心が揺れた。だが、自信と、お互いの負担軽減を考え、少額訴訟にした。
少額訴訟は平成10年1月から実施された制度で、請求金額30万円以下の金銭の支払いを求める訴訟が対象となる。膨大な訴訟を効率良く行うことが目的だという話もある。もちろん、30万円以下でも通常訴訟を起こすことができる。
相談をしているうちに、予想外の事態が生じた。
「この場合、被告は大家になりますね」窓口の男に言われた。貸主代理の管理会社を訴えるつもりだった。契約書には大家の名前、住所は一切、表記されていなかった。原告−管理会社間のやりとりで交渉していたので、正体不明の大家を巻き込むと、こじれるのではという懸念もあった。前日もらった「区分建物全部事項証明書」で明らかになった所有者(大家)を被告として手続きした。大家とは、当然、面識がない。
そして、この訴訟手続きが後で、影響してくるとは、その時は思いもよらなかった。
* * * * *
窓口で、必要書類を数枚渡される。
「事情説明書」「当事者の表示」「請求の主旨・紛争の論点」「証拠書類一覧表」そして、「訴状」である。それらは「訴状」ですらアンケート用紙のように書き込めば簡単に作成される。鉛筆で書き込めばいいので、書き損じの心配は不要だ。
その場で書こうとすると「後ろの机で書き込んでください。書き終わりましたら、また、番号札を引いて下さい」と言われた。書き込みが終り番号札を引くと、今度は先程とは違う窓口に回された。先程と違う人。
地下の売店で書類を被告、裁判所用に2部ずつコピーをとり、郵便切手3910円と印紙1500円を買ったら、また戻ってきて、番号札を引くように言われる。地下には食堂、司法書士事務所などもあった。コピーは係の人にとってもらうのだが、1枚40円也。領収書をもらう。相談コーナーに戻り、番号札を引くと、また違う窓口。書類をチェックされるが、コピーする書類が不足していることを指摘される。
前日、電話で問い合わせた時は、管理会社が被告になると言われたが、今日は、大家が被告だと言われる。管理会社Fの「現在事項全部証明書」は、何の意味ももたなかった。
「区分建物全部事項証明書」も、大家の名前が分かっていれば、必要のない類いのものかもしれない。番号札を引くたびに、変わる窓口・担当者。コピーする書類すら、間違えて教えられ、「区分建物全部事項証明書」も、担当者ごとで、必要か不要か意見が分かれる。誤解していたのは、相談コーナーは裁判所の職員で、法律の専門家ではない。相談できるのは手続きの相談のみで、「法律の相談には応じない」と明記されている。相談コーナーが、頼りなく見えてきた。
訴訟を起こす割りには、あっけなく手続きは進んでいった。
相談コーナーとは言いながら、説明を受け、渡された用紙に記入するだけで、訴訟に必要な書類が揃う。取り敢えず、相談というつもりで訪れたが、簡単に手続きが進んだので、同じ1階にある訴訟の受付に行く。職員がコピーした書類を確認し、裁判所用と被告用に分けて綴じる。
受付票を渡される。その後、担当者と話し合い、公判日を決めた。
その日の昼、会社についてから、担当者に電話する。訴状に訴訟費用請求の旨を書き忘れていたので、聞いた。「勝訴という形になれば、判決のほうに盛り込まれると思います」という答えだった。