19才、ゲン君、ダウン症。
17才、ジュン君、自閉症。
この2人の青年がアメリカ、アリゾナ州にホームステイするところから物語は始まり
ます。物語・・・じゃないですね、この映画は。ゲン君、ジュン君はもちろん、登場す
る人たちは全て実名でステイ先で過ごした3ヶ月間を、ひたすらカメラで撮り続けて
いるドキュメンタリーフィルムです。

ホストマザーであるキャサリンは、ほとんど障害の知識がない。
夫であるマークも同じこと。彼らは2人の行動に、当然一喜一憂するんです。その姿
が、床屋に行ったり、バスケットをしたり、イルカショーを見に行ったり、夕食を囲んだ
りと、ありふれた生活の中に映し出されている。キャサリンとマークの一生懸命さが
胸を打つんだな。淡々とスクリーンに映し出されるからこそ、そのおおらかで前向き
な人柄が伝わってくる。
そんなキャサリンとマークが、別れの前夜に語らう場面。
「いろいろなことを彼らに教わったね」「その日その日を、彼らは精一杯楽しく生きて
いる。私達の方があれこれと考えすぎ、日々の生活を難しくしているのかもしれな
い」「本当に彼らはスペシャルだ」「もし彼らが我々の息子だったら、私は誇りに思う
だろう」2人は涙ながらに何度も言うのだ。「彼らは誇りだ」と。言葉の壁など、まるで
関係なかった。同年代のこの夫婦がとても大きく見え、大好きな存在になった瞬間
でした。
それともう1つ印象的なシーンが、ジュン君の涙。ジュン君は、別れの日学校で涙を
流す。おそらく、何故自分が泣いているのか分からないのでしょう。こぼれる涙の扱
い方が分からないから、しきりに目をつぶって指先で瞼を押さえる。別れの寂しさ
が、純粋にただ純粋に涙となり目から溢れ出ていました。
エンドロールが流れても誰一人席を立たない。拍手が沸きあがり、私を含め誰もが
泣いていました。別れの辛さにもらい泣きしたのではなく、この国境のない同じ空の
下、同じような境遇の親御さん、同じような子供達が当たり前に生きているという事
実に、ただ単純に嬉しくて涙がこぼれました。ジュン君は未来の「プリシンに思え
た」のではなく、プリシンそのものに思えます。
アリゾナの高い空、みかん色に広がる夕焼け、キャサリンとマークとジュン君の涙、
ラストシーンの空高く舞い上がった虹色の気球が、しばらく離れそうもありません。
■2003/01/25
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