able/エイブル  ’01日

19才、ゲン君、ダウン症。
17才、ジュン君、自閉症。

この2人の青年がアメリカ、アリゾナ州にホームステイするところから物語は始まり
ます。物語・・・じゃないですね、この映画は。ゲン君、ジュン君はもちろん、登場す
る人たちは全て実名でステイ先で過ごした3ヶ月間を、ひたすらカメラで撮り続けて
いるドキュメンタリーフィルムです。



ホストマザーであるキャサリンは、ほとんど障害の知識がない。
夫であるマークも同じこと。彼らは2人の行動に、当然一喜一憂するんです。その姿
が、床屋に行ったり、バスケットをしたり、イルカショーを見に行ったり、夕食を囲んだ
りと、ありふれた生活の中に映し出されている。キャサリンとマークの一生懸命さが
胸を打つんだな。淡々とスクリーンに映し出されるからこそ、そのおおらかで前向き
な人柄が伝わってくる。

そんなキャサリンとマークが、別れの前夜に語らう場面。
「いろいろなことを彼らに教わったね」「その日その日を、彼らは精一杯楽しく生きて
いる。私達の方があれこれと考えすぎ、日々の生活を難しくしているのかもしれな
い」「本当に彼らはスペシャルだ」「もし彼らが我々の息子だったら、私は誇りに思う
だろう」2人は涙ながらに何度も言うのだ。「彼らは誇りだ」と。言葉の壁など、まるで
関係なかった。同年代のこの夫婦がとても大きく見え、大好きな存在になった瞬間
でした。

それともう1つ印象的なシーンが、ジュン君の涙。ジュン君は、別れの日学校で涙を
流す。おそらく、何故自分が泣いているのか分からないのでしょう。こぼれる涙の扱
い方が分からないから、しきりに目をつぶって指先で瞼を押さえる。別れの寂しさ
が、純粋にただ純粋に涙となり目から溢れ出ていました。

エンドロールが流れても誰一人席を立たない。拍手が沸きあがり、私を含め誰もが
泣いていました。別れの辛さにもらい泣きしたのではなく、この国境のない同じ空の
下、同じような境遇の親御さん、同じような子供達が当たり前に生きているという事
実に、ただ単純に嬉しくて涙がこぼれました。ジュン君は未来の「プリシンに思え
た」のではなく、プリシンそのものに思えます。

アリゾナの高い空、みかん色に広がる夕焼け、キャサリンとマークとジュン君の涙、
ラストシーンの空高く舞い上がった虹色の気球が、しばらく離れそうもありません。

■2003/01/25  


  


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