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■2002/12/13 (金) 8年
8年前の今日、我が家に誕生した第一子がめじ君である。
どこの親御さんもそうだと思うが、子供が小さいうちというのは、時間の経
過が恐ろしく早い。1年おきに、続けて3人の子供に恵まれた我が家も例
外ではなく、迫りくる日々の生活にただ流されるようにしてあっという間に8
年が過ぎた。
3才まで言葉らしい言葉を話さなかっためじ君。
通い始めた幼稚園でも、他の子と同じように室内での製作活動やお遊戯
ができず、たったひとり、ふらふらと園庭で遊んでいた。
父親参観日にはこんなこともあった。
それぞれの園児がお父さんへプレゼントを手渡す中、めじ君だけがそばに
来ない。じっと自分の作った物を見つめ、次の瞬間放り投げてしまった。
先生が慌てて拾い上げる一幕があり、親御さんの全視線を集めた帰り道
「どうしてこの子は・・」とかなりブルーになった記憶がある。
だけど今なら分かる。「父の日」ということが理解できなかったこと、プレゼ
ントを上げることの意味が分からなかったということを。
めじ君に付けられた診断名は、高機能自閉症。
育て方に原因があったのだろうか。もう一度初めから育てることができた
ら。かみさんと何度そんな話をしただろう。自閉症という障害は、環境や育
て方に原因はなく先天的な障害だと言われている。分かっている。分かっ
ているけれど、一度歩いてきた道を再び歩けるのなら、もっとうまく歩くこと
ができるはず。だけど、そんなことを振り返ってもしょうがないのだ。
子供の1年は大きい。驚くほど成長する。あの頃を考えれば、めじ君の成
長は奇跡のようだ。多少問題はあるものの、立派に普通級に通っている。
「今できること」を積み重ねてここまできた。これからも、今できることを積
み重ねていくしかない。プリシンにしても同様に、それが大事なのだと思
う。
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■2002/12/01 (日) 結婚式
降ったり止んだり、しとしとと冷たい雨の中、弟の結婚式は滞りなく無事終
わりました。複雑な家庭の(ご両親の)事情を乗り越え、この日を迎えるこ
とができたお嫁さん(義妹になるんですね〜)の最後のスピーチにはこっち
までつられて号泣でした。いい結婚式だったなぁ。
終わると同時に、プリシンを預けていたデイケア施設へ一直線。
プリシンはなんだか寂しそうな表情。置いてけぼりを批難されているような
気がした。見てくださったお兄さんも、笑顔はなく疲れきっている様子。
一言「うんち漏らしました」と、洗ってくれたパンツを渡された。
お気に入りの枕を抱きしめるように眠るプリシンを、しばらく眺めた。
荒れて血が滲む唇、汚れた手で目をこするためか目尻の変な湿疹、
愛しい寝顔を見ていると、いろいろな感情が溢れて目頭が熱くなる。
余程のことがない限り、一時ケアを利用するのは止めようと心に誓う。
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■2002/11/30 (土) もういいだろ?
人の目が気にならないと言えば、そりゃ嘘になる。
ただ、だんだん慣れていくのかもしれない。
奇声を上げながらジグザグに走るプリシンを
自転車で追い越し、何度も何度も振りかえるおばはん。
何もそんなに見ることないだろうが。
好奇心や、奇異の目だけじゃないのかもしれない。
だが、親である私の顔は一切見ずに
何度も振り返ってはプリシンを眺める姿は、不快以外の何者でもない。
プリシンの成長とともに、人に見られるということの感覚が
だんだん麻痺していくのかもしれない。
それはそれでなんだか嫌だな。
「人間らしさ」までもがなくなってしまうようで。
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■2002/11/09 (土) 連れて行けない
来月、弟の結婚式がある。出欠の申し込み期限が今日まで。
親族なのにも関わらず、まだ返事をしていません。
プリシンを連れて行くかどうするか、
ここ数週間かみさんと話し合っていました。時に口論になりながら。
もちろん家族5人で出席したい。
騒ぎ出したら、交代でロビーに出て面倒を見ればいい。
「そんなんだったら行かない方がいい」というのが、かみさんの意見。
一生に一度のおめでたい席、プリシンの奇声や
走り回る姿がビデオに残ると思うと(弟に対して)申し訳ない、
子供達は見ているからあなた1人で出席しなさいよ、と。
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今日は、保育園のバザーの日でした。
かみさんは一日中食堂コーナーでおでんを煮詰め
その後帰宅せずに、そのままお疲れ飲み会へ行きました。
達成感という同じ気持ちを分かち合ったママさんの集まり、
飲む酒は、きっととびきり美味しいことでしょう。
日中、めじ君とあーちゃんは義父母宅へ
プリシンは、一時ケア施設(レスパイトサービス)のお世話になりました。
夜仕事が終わって迎えに行き、プリシンの顔を見たら2つの感情が芽生え
ました。1つ目は、見て下さった方への感謝の気持ち(本当に大変だと思
う)2つ目は、こんな場所に置き去りにしてことに対してのプリシンへ懺悔
の気持ち。帰りの車の中、あどけないつぶらな瞳を見ていたら
信号待ちで抱きしめていました。何度も頭を撫でていました。
それでも決めました。
弟の結婚式の日、プリシンをここに預けることに。
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■2002/10/13 (日) 運動会
上位4人はとっくにゴールし、園庭に1人残されたプリシンは
自分なりのペースでのんびりと走っている。
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プリシンは足が遅いわけではない。
普段の散歩中など、俺の手を振り切り突然走り出したりすると
全速力でなければ追いつかないこともある。
去年までは、スタートラインのすぐそばにいた先生が
ヨーイドンの合図でプリシンの背中を押してくれたが、今年はそれがなかっ
た。
走ることが分かっていないプリシンにポンと教えてあげれば、
例えビリでも、そこそこ走れたんじゃないだろうか、と一瞬思ったが
すぐにその考えを否定した。そうなのだ、そんなこと先生は分かっていたん
だ。
走れる子なのは分かっていて、あえて手を差し伸べなかったのだ。
「園最後の運動会、自分だけの力でプリシンを走らせたい」
その想いが、見えない槍のように心に突き刺さった。
............................................
俯き加減で、手先を揺れせながら走るプリシンに
大勢の親御さんから「頑張れー」「しんちゃーん」の歓声が湧きあがる。
最後の直線に差し掛かかると、今度はたくさんの
それこそ割れんばかりの拍手が、プリシン1人に注がれる。
「今、拍手をする時なんだ」と勘違いしたプリシンは、走りながらパチパチ
手を叩き出し、ドワッと園庭に笑いを提供した。隣りに座っていたかみさ
ん、そして義母と同じように涙が止まりませんでした。
のんびり屋で競争とは無縁だと思っていたあーちゃんは、なんとかけっこ
で第一位。足の遅い子だけを集めたチームだったので、偶然のような気も
したけれど、鼻高々に喜ぶ彼女は、とても輝いていました。それにしても本
番に強い女だな。お疲れ様。プリシン、あーちゃん。
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■2002/09/30 毛髪検査
自閉症児の毛髪検査・・・髪の毛の成分で何かが分かるのか?
自分なりにちょっと調べてみました。
最初の検索でヒットした「個人別毛髪分析レポート」と題されたページを開
いてみると
いきなり飛び込んできた驚きの文字群。
アルミニウム、カドミウム、鉛、銀、ニッケル、スズ・・・おいおい、嘘だろ
う!?
どれもこれも、仕事でよく耳にする名前ばかりじゃないかい。
その毛髪検査のことを教えてくれたKさんの息子さんも、結果が出たと教
えてくれた。
「極高値の頂点に近いヒ素の検出」・・・絶句、どうしてこんなものが。
生まれついてのものなのか、それとも蓄積されたものなのか。
自閉症児の体内では何が起こっているのだろう。
検査のそこから先「だから○○なんだ」、そして「こうすればいい」
と解明される時代が、いつかは来るのだろう。
早く、早く、研究者の方々、頑張ってくださんせ。
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■2002/09/29 脱走対策
鍵を自在に開けることを覚えてしまったプリシンは、目を離すとすぐ脱走す
る。
玄関を出ると、わずかながらの花や植物が置いてあり
そこの土を掴んでは投げ、葉をむしっては口に入れている。
ほんの数分の出来事なのに、手や顔は泥まみれになり
一帯は台風が通り過ぎたような悲惨な状況になっている。
道路まで出たことはまだないけれど、それも時間の問題だと
今日、ホームセンターで大量の簡易鍵やドアチェーンを購入してきました。
以前掲示板に「息子がちょくちょく脱走して困るんです」という先輩ママさん
の書き込みがあった。
なんでもボーリング場の雰囲気が大好きで、自宅から脱走しては
数キロ先のその場所へ、いつも行ってしまうのだそうだ。
慌てて自転車をこぎ、息子を捕獲(?)しに行く姿を浮かべては
「大変だなぁ。いずれプリシンもそうなるのでは」と思ったものだが、
まさかその日がこんなに早く訪れるとは・・・。
ちょっとした外出も心配なので、外側にもドアチェーンを取り付けるべきか
かみさんと相談しながら「これでは幽閉だな」と思いつつも、
今はこうするしかないのだと自分に言い聞かせ。
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■2002/09/20 養護学校見学
来春、プリシンは保育園を卒園する。
その後のことだが、今は養護学校一本に絞って考えている。
自宅から車で15分弱の場所にあるその学校に、かみさんと見学に行って
きた。
廊下には室内用の三輪車や手作りのゴーカート、
中庭には十数台の自転車が置かれ、砂場におもちゃ類が放置してあるの
も見える。
1年生のクラスは2つ、生徒は各6人の計12人。
対して先生は6人いるから、2人に1人の先生がつく計算になる。
教室を覗くと、正面の黒板脇に時間を割り振ったボードが置かれていた。
12時の給食のところには牛乳や煮物の絵カードが張られ、
その下には歯磨きの絵カード、そんな具合に今日の授業の流れを
絵カードや写真で説明していることが分かる。
体育館に案内されると、ちょうど1年生が
鉄棒にぶら下がるという体育の授業を行っていた。
奇声を上げながら走る子を追いかける先生もいれば、
友達がぶら下がっている姿を、おとなしく座って見ている子もいる。
「すごいなぁ、みんなしっかりしてるなぁ」と呟くと、案内してくれた学年主
任の女性は
「人の子はしっかりしているように見えるものですよ」と笑っていた。
学校というと「勉強する場所」というイメージしか持ってなかったけれど
ここは保育園生活の流れをくみ、非常にアットホームな印象を受ける。
小学部、中学部、高等部、続けて進級できるこの養護学校に
何がなんでも入学させたいと思っているけれど
やはり狭き門なのかなぁと、一抹の不安もよぎる。
入れないとしたら・・・プリシンはどこへ行けばいいのだろう。
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■2002/09/06 自閉症
自閉症ってなんなんだろう。
どうしてそんな子供が生まれてくるのか?
この出口の無い問答が、かみさんとの会話にしばしば上がる。
「遺伝なのかねぇ、血の掛け合わせが悪かったのかな」
「お互いの親族にそういう人いなかったっけか」
「大昔に飼っていた犬が、きっと憑依しているんだ」
「お払いした方がいいのかな」 そう結論付けた時もあった。
笑い話ではなく本当の話、2人とも真顔です。
そして昨日、かみさんにこう言われた。
「あなたと結婚しなければよかった。そうしたら普通の子が生まれてたかも
しれないでしょ」
今朝方のこと。
めじ君の悲鳴のような声で飛び起きると、彼は泣きながら怒っている。
「このぉ、なにすんだよ、バカシンゴ!」
見れば、寝しなに読んでいたと思われる大好きな科学雑誌「そーなんだ」
が破られている。
破いたプリシンは、罪悪感のかけらも見せずケラケラ笑っている。
火に油、その姿がさらにめじ君の怒りに火をつける。
このぉ、と握りこぶしを振り上げた途端、プリシンはあっという間にいなくな
る。
こんな時の逃げ足は本当に速い。
物を投げる行為は現在も続いているが、最近は破る行為がプリシンのお
気に入り。一つのことを飽きると次の新しい行動に移る、その繰り返しで今
まできたけれど何故こうも「やってはいけないこと」ばかりなのだろうか?
「なんでプリシンの手の届かない、上の方に置いておかなかったんだ」
おもちゃを壊され、クレヨンを折られるたびに
何度もめじ君とあーちゃんに言い続けてきたこの言葉、もう言えないよ。
悪いのは、やっぱりプリシンなのだ。
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■2002/09/02 プリシンのガールフレンド
プリシンのことを好きだという女の子が、保育園に何人かいる。
手を引いたり、声をかけてくれたり、甲斐甲斐しく
身の回りの世話をしてくれる姿を見かけたのは、1度や2度のことではな
い。
プリシンのどこが好きかと尋ねれば、全てが好きなのだと答える。
5才という年齢、今だけの感情だと分かってはいるけれど
それはそれで親としてとても嬉しい。
その女の子2人が、今日保育園の帰り、我が家に遊びに来た。
プリシンが連れて来た初めての友達である。
遊びにきたはいいが一緒に遊べるはずもなく
プリシンはいつも通り、お気に入りのプラスティックのお皿を片手に
小物を乗せてポンポンと弾ませているだけ・・・だろうな。
とりあえず、みんなで一緒にお風呂に入ることに。
はしゃいだのは、あーちゃん。彼女は年上の女の子が大好きなのだ。
隠れて衣類を脱ぐ姿や、さっささっさ自分で体を洗う姿を見て
不意に5才児の現状を知り、妙に感動した。
4人掛けテーブルを、7人で囲みながら食べたスパゲティの
美味しかったこと。賑やかだったこと。
いつもと変わらず、早々と寝てしまったプリシンに変わり
お姫様2人と遊び続けていたのはあーちゃん。
よほど楽しかったのか、別れ際彼女は目に涙を潤ませていました。
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■2002/08/22 満月の夜に
昨日から今日にかけて、同じことばかり考えている。
今頃プリシンはキャンプで何をしているのだろう?先生は大変だろうな。
回転寿司を食べに行く。
プリシンが一緒では行けないと、前々からこの日に行こうと決めていたの
だ。
みんなが楽しみにしていた回転寿司。
だけど、4人掛けの座席にはポッカリ穴が開いている。
静かだ。静かすぎるほど静かな(?)テーブル。
プリシンを連れても来れたんじゃないのか。
納豆巻なら好物だったし、次は連れて来れるはず。
この前読んだ、島田律っちゃんの本の中のお父さんの言葉を思い出す。
「明日からあれだけワーワー騒いで、毎日のようにパニックを起こしてい
た力郎は
いないんだぞ。そんな生活に耐えられるのか。
このまま『やっぱやめるわ。力郎は家に連れて帰るわ』と言って帰ろう
か」
プリシンが留守の今だからこそ、お父さんの気持ちがよく分かる。
もしかしたら将来、プリシンは施設のお世話になるかもしれない。
だけど、今はそんなこと微塵も考えられない。かけがえのない家族の一員
なのだ。
寿司屋からの帰り、信号待ちのフロントガラス越しにまん丸のお月様を見
ていたら、今日何度目か分からぬ想いが、また胸に去来した。
同じ月を見上げていたかみさんが、俺の心の中と同じ言葉を口にした。
「プリシン、今頃なにやっているのかな」
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■2002/08/17 プールでの問題行動
障害者施設の中にあるプール。
利用者は障害を持った人ばかりだし、これはいいプールを見つけたと
喜んで毎日通っているけれど、ここにきて色々と問題が出てきた。
最近のプリシン、他の子供が使っている浮き輪やビート板を叩くのです。
一声吠えながら、思いっきりバシッバシッと。
ごめんねとその子に、親御さんには頭を下げる、その繰り返し。
太目の女性の胸が大好きなプリシンは、これも同じように突然叩く。
「いいんですよ」と胸を押さえながら女性は言ってくれるものの、やっぱりマ
ズイだろう。
前までは、プリシンの好きなように遊ばせていたのだけど
それもできなくなり、今はプリシンと一心同体、ぴったりとそばに張り付い
ている。
何かやらかしそうになると素早く腕を掴み阻止するのだが、プリシンはそ
れが大層気に入らない。
泣きが入る。吠えながらジャンプを繰り返す。
居たたまれなくなり、しばらくプールサイドを歩いて気を静めようとするが
一旦火がついてしまえばもう駄目、諦めて退散するしかない。
貸切だったらいいのにと、自分勝手ことをつい考えてしまう。
ここでも駄目なのかと、ちょっと気落ち。明日はパス。
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■2002/08/13 (火) 自閉症と納豆の関係
友達ママさんの掲示板で「自閉症児に納豆がいい」と書き込まれているの
を見て、
本当かいなと、半信半疑にネットで調べてみました。
Lycosとyahooで「自閉症 納豆」と検索するものの「自閉症児のうち子の
好物は納豆・・」とか反対に「納豆が嫌いで・・」といったものがほとんどの
中、たった一つだけ「自閉症児の治療にも効果的」というタイトルがあった
のです。医学会の研究報告なので、無断引用していいのかどうか分から
ないけれど、まぁ、書いちゃいましょう。アドレスはご勘弁。
「研究によると、自閉症児50人の毛髪を分析した結果、一般の子どもと
比べて、ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
が少ないことを発見。そしてこの50人の食事を調査したところ、ほとんどが
離乳食期を終えた1歳頃から野菜、とくに生野菜を受け付けなくなったこと
が判明。 そこで、ビタミンやミネラル、とくにレシチンを食事に混ぜて約
100人の自閉症児に食べさせたところ、なんと7割の子どもに過敏な動作
が治まり言葉が出るようになりました」
マ、マジっすかー。レシチンというのは、大豆に多く含まれている成分で
す。だから納豆だけじゃなく、豆腐とかもいいということですね。続けて、
「この治療は、脳がまだ柔軟な3歳以下の子どもに効果的です。
レシチンが子どもの脳におよぼす影響は極めて大きいのです。
親がちょっと気をつけてレシチンをたっぷり摂ることで解決できるのなら、
積極的にレシチン摂取を心がけるのも親の愛情の一つといえないでしょう
か」
膨大なヒット件数から、ここまで詳しい因果関係が書かれていたのは
このサイトただ一つ。どこまで信憑性があるのでしょう?
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■2002/08/09 合言葉は
Tさんの日記を読んだ。
結婚11年目にして、やっと授かったTさんのお子さんは、我が家と同じ自
閉ちゃん。プリシンよりまだ小さいこのお子さんは、何度も何度も自分の顔
を叩くのだそうです。自傷行為と呼ばれているものです。
「大変なお子さんなんだなぁ」と、このことについて夕食時にかみさんと話
をしました。
何か嫌なことがあるんでしょうね。
それが伝えらないから爆発し、自分の顔を叩き出す。
プリシンの場合、それは物投げになります。
機嫌のいい時でも手当たり次第に物は投げるんだけど、
ある程度手加減しているのに比べ、パニック時はすごい。
歯を食いしばり、泣きながら壁に思いっきり物を投げつける。壁なんか、へ
こんじゃうんじゃないかってくらいに強く投げつける。そんな時でも、何もし
てあげることができないんですよね。嵐が通り過ぎるのを待つだけで。
「今日は、もって良かったね」
Tさん夫婦の“合言葉”だそうです。何事もなく無事に外食を済ませた時
に、どちらからともなく発せられる言葉。可笑しいです。我が家と同じです。
自閉ちゃんが一緒の外食は本当に難しい。
何が食べられるか、まず店の吟味から始まります。
いざ店に着いても、ガラス越しに店内を覗き込み、混雑状況や席の作りを
確かめ、「今、空いている。チャ〜ンス」とか「あそこの壁際の席、奥にプリ
シンを座らせろー!」、そんなやり取りが、毎回必ずあります。
ネットを通じ、同じ空の下で、同じ様な苦労を抱えて生きている人と
たくさん知り合いになりました。
Tさんの日記は、そんな大変なお子さんがいるにも関わらず
タイトル通りいつもほのぼのとしているのです。
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■2002/08/06 北海道旅行を終えて
プリシンが一緒の旅行、気楽に考えていたけれどやっぱり何とかなるもん
です。特に心配だったのは機内の中。何かあったらちょっと外で散歩、とい
うわけにはいかないもんね。帰りの機内は、離陸前から寝てしまい本当に
いい子(?)でした。目を覚ました後、前に座っていた女性の髪留めを引っ
張ってしまい睨まれるという一幕があったけど、その程度でした。
レストランでも、「待つ」ということができないプリシンは
オーダーしたものが来た頃に俺と店内に入り、食べ終わればさっさと先に
出ます。これは普段の外食と同じこと。
ただ、3日間ほとんど車に乗りっぱなしだったというのが
ちょっと可哀想だったなと、心にひっかかっていました。
めじ君とあーちゃんは車窓から見えた馬や牛、干草の大きな束に歓喜の
声を上げ楽しそうだけど、プリシンはどんな思いで、車に乗っていたのでし
ょう。なんで乗っているのか?いつまで乗っているのか?飽きて泣き狂っ
ている時もありました。観光地でもずっと手を繋がれたままで、思うままに
彼は走れません。窮屈な想いばかりさせてしまったと、あどけない顔を見
ていたらやりきれなくなりそのことをかみさんに告げました。
「普通の子だったらプリシンはもっと楽しめたんだろうな。きっと面白くない
旅行だっただろう」と。
普通の子だったら〜とか、こんな「もし」のことを考えたのは初めてのことで
す。「そんなことないよ」と、かみさんは言います。「大好きなおばあちゃん
とおじいちゃんが一緒で、きっと楽しかったはずよ」と。そう思うことにしまし
ょう。
羽田空港に預けておいた我が家のマイカーを駐車場で発見したプリシン
は、ニッコリと満面の笑みを浮かべました。「やっと帰れる」と思ったのかど
うか、安堵の表情でした。
帰路に向かう中、助手席のプリシンを見ては「頑張ったな、頑張った」と
思わずプリシンの頭を撫でてしまいます。何故撫でられているのか分から
ず、そっけなく俺の手を払うけれど、それでも何度も何度も撫でてしまいま
す。帰宅してからも「よく頑張ったなー、偉いよプリシンは」
そんな想いが溢れれば、自然とプリシンを抱きしめている自分がいます。
抱きしめて抱きしめて、何度も抱きしめれば治るといいのにと、
そんなバカな考えを起こすほどに、俺も疲れていたのかもしれません。
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■2002/07/26 人を見るプリシン
園での昼食時、プリシンが投げたフォークが男の子の頭に当たり(刺さ
り?)
出血するという出来事があった。子供用の、先端に丸みが帯びているフォ
ークだったので
大事には至らなかったが、そんなフォークでさえ出血したというのだから
相当な勢いで投げたのだろう。当たった場所が目だったら・・・そう考えると
ぞっとする。
だけどプリシンは、家ではフォークどころか食器を投げるなんてことはない
のです。
何故なら、俺やかみさんにきつく叱られることが分かっているから。
そこんとこは、記憶にしっかりとインプットされているようです。
では、なんで園では投げるのか?
S先生に聞けば「私がそばにいるときは投げない」と言う。
入園当時から面倒を見ていただいているS先生の前では、かなりいい子
にしているらしい。
そうなんです。プリシンは人を見ているんです。
「この人は怒らない(怒られても大丈夫)」、そう判断した時には
かなりふざけた行動をとるのだと思う。
この前の日曜日、プリシンの髪をバリカンで丸坊主に刈ると外見だけは、
連日のプールで日焼けした体も手伝って、急にお兄ちゃんっぽくになってし
まいました。
「可愛い可愛い」で済まされる時期は、もうとっくに過ぎています。
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■2002/07/09 N先生の助言
キャリア、うん十年の訓練会N先生は言う。
「わたし・・心配なのよね、あーちゃんが」
プリシンが週に1度通っている地域訓練会の、今日は父親参観日でした。
この3月まで見ていただいたベテランN先生は、自分の担当からプリシン
が外れたあともオブザーバー的に、いつも遠目で見守ってくれています。
今担当している子がいないということで、今日はあーちゃんと一緒に過ごし
てくれました。
プリシンが泣くたびに、あーちゃんはN先生に一生懸命説明をするのだそ
うです。「ぷりしんはね、なんでもないのになくの。だからだいじょうぶ」
「ぷりしんはね、ぷりしんはね」と、何度も何度も。
「(あーちゃんは)感性が豊かな子だけに、注意して見てあげてください。
(プリシンを)ダメなお兄ちゃんだと思わせないようにしてください」
家の中、プリシンをいつも怒鳴りつけている俺とかみさんの姿を、N先生は
見抜いている。では、どうしたらいい?
「例えば、あーちゃんの靴をプリシン君に洗わせるとか。
もちろん、後からお父んが洗ったっていいじゃない。
お兄ちゃんはすごい≠ニ思わせてください」
あ、それならいろいろできるかもしれない。
プリシンに、あーちゃんのご飯を盛らせるとか。
そういえば、めじ君のことは「めじにいちゃん」と言うが
プリシンのことは呼び捨てにしているあーちゃん。
N先生に言われなければ、気がつかなかったこと。
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■2002/07/03 ちょっとしたこと ?
プリシンとあーちゃんを保育園のお迎えに行った帰り道、
先を歩くあーちゃんが、無人の野菜販売所を見つけました。
そこに並んだトマトが欲しいと言うので、左手でプリシンの手を握り締めた
まま
右手だけで財布を取り出し、100円玉を探していた時でした。
走ってきたスクーターが「うわっ」と、急ブレーキをかけたのです。
プリシンが何かを投げ、男性はそれに驚いたのです。
あーちゃんの方を見ていたので、瞬間は見てなかったけれど
路面を見たらガムの銀色の包み紙が落ちていたので、多分それを投げた
のだと思います。
もしかしたら、投げる動作だけだったのかもしれません。
プリシンは、オーバーアクションで投げる仕草もよくするのです。
びっくりしただけだろうと思い込み、俺はすいませんでしたと一言頭を下げ
あーちゃんと一緒にトマト選びを始めました。背後に視線を感じます。男性
は立ち去りません。
トマトを選び終え、振り向いて男性を見ると
プリシンのことをスクーターにまたがったまま、じっと見下ろしています。
怪我をしたわけでもなく、投げたものの多分ただの紙、驚いただけだろうと
思うのだが・・。何故立ち去らないのだろうといぶかしく思いながらも、ごち
ゃごちゃ何か言ってきたら「あんたこそ、ここは歩道だろ」と逆に言い返そう
かと思っていました。男性はプリシンに向かい「僕、ごめんなさいは?」と
問い掛けたのです。そこで気がつきました。あぁ、子供に謝らせなかった
親である俺をなじっているのだと。
「すいません。この子は言葉が話せないのです、すいません」と、もう一度
頭を下げると驚いた風でもなく「だからどうした」みたいな顔でしばらく佇み
「それじゃ、よく・・・」と尻切れに言葉を残し、スクーターで去っていきまし
た。
「それじゃ、よく言い聞かせてください」とでも言いたかったのだろうか?
かみさんに話すと「障害があるので」と言った方が良かったんじゃない?
と。
この先、何度もこうして頭を下げることがあるのでしょう。
何も分からずケラケラ笑うプリシンには罪はなく、まったく腹も立たない、
などときれいに書けば、それは嘘になるでしょう。
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■2002/05/27 手のひらの感触
父親と息子、夕陽を浴びた2人の背を見ている。
そっと差し出された父親の手を、ごく自然に息子は握った。
父親と手を繋いで帰って行った男の子は、めじ君と同じ小学2年生。
少し前に見たこの当たり前の光景に、軽いショックを覚えました。
何故なら、俺とめじ君は手を繋がないからです。
「繋がない」のではなく、「繋げない」状況にここ数年なっていました。
外出時、俺の手が握られているのは、いつもプリシンの手。
目隠しをして数人の子供の手を握れば、多分プリシンの手は分かるでしょ
う。かみさんと俺が手を繋ぐのは、いつもプリシンとあーちゃん。
いつしか、めじ君の手を握る人はいなくなっていました。
久しぶりに握っためじ君の手は、一回り大きくなっていました。
兄弟でも、手の感触はまったく違うんですね。
プリシンの手は、柔らかくてポチャポチャとしているのに比べて
めじ君の手は肉付きよく、ふっくらしているのに固い。和菓子で例えるな
ら、プリシンは「すあま」、めじ君は「翌日の大福」、そんな感じです。
握り慣れていないせいか、めじ君はすぐに手を振りほどきたがリます。
プリシンの手は、この先何十年握り続けるとしても、
いつかは離れてしまうめじ君とあーちゃんの手は、意識して繋ごうと
冒頭の親子を見た時に思ったわけです。
繋げるはずです。手は左右2本あるのだから。
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■2002/05/23 ハッピーバースディあーちゃん
ディスプレイの右下に表示されている時刻は、0:35。
今日はいろいろなトラブルがあり(主に仕事ですが)心身ともに疲れ果てて
帰宅。何気にパソコンを見れば、スクリーンセイバーの花びらがゆっくりと
舞っている。
いつもはかみさんが使用した後、完全に電源は切られているので
わざわざ立ち上げることはしません。だけど何故か、今夜そのままの状態
だったので、マウスを動かしてセイバーを解除、サイトにアクセスしてみま
した。
・・・・・・・・・・・。
日記を書く気力など今夜はどこにもなかったのに、書かずにはいられない
じゃないですか。掲示板には、たくさんお祝いの書き込みがありました。
そう、今日5/23は末娘のあーちゃんの4回目の誕生日です。
かみさんの日記は、もちろんまだ読んでませんがおそらく、あーちゃんへ
の想いを綴っているのでしょう。おまけに今、このPCの前には1枚のA4サ
イズの用紙が置かれています。ご近所のママさんからのお祝いFAXです。
我が子を愛しく思わない親など、どこにもいないはず。
本当にあーちゃんを愛しく思います。目の中に入れてもいい。
耳でも鼻でも、穴という穴どこに入れても・・・マズイ・・・・話を戻さんと。
こんなにたくさんの方から祝ってもらって、本当にいいのでしょうか。
プリシンの誕生日の時も感じたことだけど「ありがとう」、その言葉しか出て
きません。感謝の気持ちを表す言葉を一生懸命探して、いくつかの単語を
思いつくことができます。だけど結局「ありがとう」、その言葉に集約されて
しまうのです。
たかが缶チューハイ1本なのに、今夜はやけに酔いが回るなぁ。
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■2002/05/21 泣き虫の遺伝
何故そんな話になったのか、きっかけは忘れた。
めじ君と夕食を食べながら、過去のことを話していた。
「保育園の時のこと、覚えているか?」
「めじ君担当の先生は、誰だっけ?」
「んんんー・・あ、K先生だ!」
「K先生、元気かなぁ。今何やっているんだろう?」
質問しながら、いつしかめじ君の返答を待たずに
勝手に感慨にふけって、独り言を言っている自分がいる。
やけにおとなしいめじ君を見れば、天井を仰いでいる。
目には涙が表面張力で今にも溢れそう。おまけに鼻水まで垂らしている。
「どうした?思い出しちゃったの?・・・・K先生」
K先生、と言った途端にわっと泣き出し、シャツの衿で涙を拭うめじ君。
保育園時代、年中の1年間をほぼマンツーマンで見てくださったK先生。
そうなのだ。
めじ君は、若き日のヘップバーンのように美しい、このK先生が大好きだっ
たのだ。
“この泣き虫野郎”
すぐに泣くめじ君への苛立ちは、自分への苛立ち。
泣くんじゃないと怒りながら、
実は泣いていることに腹を立てているわけではない。
弱虫ですぐに涙をこぼした、幼少時代の自分にそっくりだから苛立つの
だ。
遺伝だからしょうがない。似なくていいところを似やがる。
“泣くんじゃない”
そう思いながらも、めじ君の涙が伝染してしまった。
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■2002/05/20 (月) 未来を見据える目
昨日の日曜日、定番の森へ。
気候も穏やかになったせいか、プリシンはためらわずに小川に飛び込んで
しまうので
(いつか、変てこなおばはんに「鯉が可哀想だから遊ばせるな」と、注意さ
れた小川だ)
一瞬たりとも手を離せなくなっている。
川に入りたくて、握られた手を振り切ろうと引っ張る力は、とても5歳とは思
えない。
ようやく小川のそばから引き離しても、次には土、石、枝葉の物投げが始
まる。
思う存分やらせてあげたいのだが、やはりすれ違う人、駐車している車の
そばを通る時は、
手首に手錠をかけるようにして、両手を束ねて捕まえておく必要がある。
何度も怒り、何度も手を叩き、家に帰り着いた後も、絵本やおもちゃを投げ
まくるプリシンに朝から何度も鎮めてきた怒りのダムは、もうだめ、決壊寸
前だ。
ヘトヘトになるのは、体ではなく心。
森へ行けばかなりの距離を歩くのだが、体の疲れはさほどでもない。
むしろ爆発しないようにと、怒りを鎮める精神的疲労の方が遥かに大き
い。
「いつか張り倒してしまいそうだ」と、かみさんに告げると
「何言ってんの。来年卒園すれば家にずっといるのよ」と現実を突きつけら
れ、
酒を飲んでもいないのに、ヒヤッと一気に酔いが冷めるような感覚に襲わ
れる。
そうだ、プリシンは来春から養護学校、帰宅時間はぐっと早くなる。
今、年長さんだから、次は卒園なのが当たり前なのだけど
いつまでも保育園にいられると、心のどこかで錯覚を起こしていたのかもし
れない。
その後、この先何年かの養護学校での生活について、かみさんと話し合
ったのだが
やっぱりこの人の未来を見据える目は、能天気なこの親父よりも
数倍大きく見開き、直視しているのだなと感じた。
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■2002/05/14 潮の香り
他の保育園のことは分からないけど、プリシンあーちゃんは毎日、
汚れ物袋という、かみさん手作りの布袋を持って行きます。
朝、折りたたんで園バッグに入れた袋は
帰りには、汚れた衣類で膨らんで我が家に帰還します。
浴室にどさっと置かれた汚れ物を洗うと、いろいろな匂いが漂ってきます。
あーちゃんの汚れ物は、ほとんど下着ですね。自分の子供だと不思議で
す。
強烈なおしっこの匂いも、まったく・・・いや、ちょっとしか気になりません。
プリシンの汚れ物は、いつも多いです。
小川や池に飛び込むので、いつもぐっしょり濡れています。
泥、落葉、小枝が付着した衣類を洗うと、
森のような園庭そのものの匂いが、浴室を充たしていきます。
しかし、今夜は違いました。
ぐっしょりと濡れたプリシンのズボンを桶に入れ、ジャブジャブと洗うと
大量の砂が桶底に溜まると同時に、海の香りがしてきました。
プリシンは今日、園外保育で海へ行ったのです。
我が家で先週に行った海は、冷たい風が吹き付け、ブルブル震えていた
プリシン。
今日の暖かい陽気、彼は思い切り楽しむことができたのでしょうか。
浴室に充満する潮の香り、それが答えでしょう。
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■2002/05/05 幸せについて
我が家の夕食は早いんです。
数年前、訓練会の先生から「食べながらテレビを見るなんて、もってのほ
か」とお叱りを受けテレビは食後にリビングでというで≠ニいう、ルールを
決めました。見たいテレビなどがあるとめじ君、あーちゃんは、時間を逆算
して夕食を済ませなければならず、特に日曜日の夜などは「チビまるこ」
「サザエさん」「こち亀」と3本のアニメがあるので、5時過ぎには夕食を食
べ始めなければなりません。
今日は驚くほど暑かったー。 東京では真夏日を記録したそうですね。
今夜はかみさん不在のため、俺と子供達4人だけの食卓です。
風呂上がり、汗は引かずに一様に皆同じ恰好、Tシャツにパンツだけの姿
です。プリシンが着ているシャツは、後ろ前反対でした。
でもいいんです。自分一人だけの力で着たのですから。
カレーライスを食べながら
「プリシンのシャツ反対だね。あれじゃ、後ろ向きに歩かなきゃだめじゃん」
と言うと
口からごはん粒を飛ばしながら大爆笑するあーちゃんと、
やっと脳へ伝達したのか、1拍遅れてからケラケラ笑い出すめじ君。
ネット友達、Mさんのいつかの日記を思い出しました。
“幸せって何だろう”って、いつも考えていることに気付きました。
人生は、その答えを探し続ける旅なのかな…。
幸せになりたい。 人と比べた幸せじゃなく、
自分の、そして自分達だけの幸せを見つけたい。
初夏を思わせる、蒸し暑い夕暮れ時。
開け放った窓から流れ込む心地よい風が、
食卓の、カレーライスを食べる4人の親子のそばを通り過ぎていく。
幸せって、なんなんでしょう?
価値観や人生観が人それぞれ違うように、感じる幸せも千差万別なはず。
笑い声の絶えない日曜日の食卓、多分こんな普通の日が幸せなんだろう
なと感じていました。なんでもないこんな夕食のひとコマを、
いつまでも「幸せ」と感じられるような、年の重ね方をしていきたい。
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■2002/05/03 すれ違った御家族
ゴールデンウィーク真っ只中、皆様いかがお過ごしでしょうか?
暦通りの我が家は大きなイベントもなく、今日もお決まりの森へ行って来
ました。
お気に入りのN市民の森は、敷地面積が途方もなく、いろんなルートを選
択できます。今日歩いたコースは今までで最も長いコースで、時間にする
と2時間弱の山歩きとなりました。少し前までは、すぐ「おんぶ〜、だっこ
〜」と弱音を吐いていたあーちゃんも、ブーブー文句を言いながらも、今で
はしっかりついて来ます。「この子、足腰弱いんじゃないか?」と心配して
いたんですけどね。
ほっと一安心。立派よ立派、たくましい娘です。
一組の御家族が、前方から歩いてきました。
50代とおぼしき御夫妻と、その後ろに青いキャップをかぶった背の高い青
年。
瞬時に、ピピピッと信号が脳に走りました。(抜け毛信号じゃない)
すれ違い様、青年が発した「うっ、あっ」という短い言葉と指先の動きで
「あ、やっぱり」と、確信に変わりました。
かみさんの顔を見ると、同じように「あら?」という顔で、やっぱり俺の顔を
見ている。お互いの目線が合ってしまい、思わず苦笑です。
未来図・・・なんでしょうかね?
手を繋がなくても、黙ってちゃんと歩いていた青年に、ちょっと感心です。
プリシンも、あんな風に成長してくれるといいな。
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■2002/04/23 ランドセルの背に向けて
「学校楽しいのか?」と聞けば「楽しい」と答える。
「友達いるのか?」と聞けば、数人の名前を上げる。
めじ君は、自分から進んで学校のことを話さないので、ついつい訊ねてし
まう。
「今日ねー、誰々とねー、こんな事があった」と、自分から笑顔で話したこ
となど一度もない。
楽しくないのだろうか。
勉強が難しいのだろうか。
友達が出来ないのだろうか。
いじめられてないだろうか。
靴を履き、無言で玄関のドアを開ける時もある。
挨拶を強要すれば「いってきまーす」と、トーンを変えずに返事する。
台所のシンク前にある小窓から、たった1人で登校して行くめじ君を見送
る。
2年生になり、黄色いカバーの取れた黒いランドセルは、一気にお兄ちゃ
んになった印象を受けるけど、その背中はどこか寂しげに思える。
しばらく歩いた後、突然スキップするように
軽やかに走り出しためじ君を見て、少し、ホッとした。
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■2002/04/15 Do You Speak?
あるママさんが書かれていた日記の内容が、夫婦の会話に上りました。
5才まで喋れなかったら、一生喋れない
お2人の自閉ちゃんを授かった大先輩ママが、数年前を振り返った日記の
中で
当時の先生にこう言われたそうです。
プリシンは現在5才、この秋が来れば6才になります。
一語どころか、ぜーんぜん、なーんにも言葉を発しません。
言葉を覚えさせようと、努力もしていません。いっぱい話し掛けることで、プ
リシンが話せるようになるとは到底思えないからです。
何事もトライなんでしょうか?
うちら夫婦は、このまま喋れないでいいと思ってしまいます。
いろんな先輩ママさんのサイトを渡り歩くと、プリシンの未来を垣間見るこ
とができます。プリシンも、自分の名前くらいは言える日が来ることが分か
ります。
だけど、それさえもできなくてもいいと思ってしまうのです。
可愛い声で言葉を話すプリシンの夢を、何回も見たことがあります。
「あ、なーんだ、治ったじゃん!」と夢の中で俺は、大はしゃぎしています。
実の母親もプリシンが話す夢を見て、涙ぐんで目覚めた朝があるそうで
す。
普段は考えてないつもりでも、潜在意識の中で「話して欲しい」という願い
があるから、そんな夢を見るのでしょうか?分かりません。
オウム返し、独り言等々、受け答えのできないプリシンならば、このまま話
せなくてもいい。かたことの日本語(?)を話せるようになると、もっともっと
大変になるんじゃないだろうか。そんなプリシンを育てていけるのか正直
不安です、怖いくらいです。
こんな考えは、間違っているのでしょうか。言葉・・・やっぱり重要なのか
な。
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■2002/04/14 竹林を駆け抜けて
森です。やっぱ時代は森です。
いろいろな制約がある公園に(もちろんプリシンにとっての制約ですが)
連れて行かなくなってから、久しく経ちます。
ここ最近の休日、行くことが恒例になっているのが森。
いつも行くS区の森ではなく、今日は車で15分程の「M市民の森」に行き
ました。この森は、なーんにもないS区の森とは違い、ハイキングコースが
きれいに作られています。プリシンと一緒なので、ゆっくり鑑賞する時間が
なかったけれど、ある一画は杉、また別の一画は竹と、その場所場所で
木が違っていたりしてまさにここは人工の森、ゆっくりトレッキングするには
いい場所かもしれません。
そのコースに沿いにプリシンは走る。
土、枯葉、枝、しゃがんで、拾って、投げる、そのエンドレス。
誰にも怒られないものだから、目はキラキラ輝き、表情も活き活きしてま
す。
(何も言わないから、もっとやれ〜、どんどん投げろ〜)
こうした山はプリシンにとって天国でしょう。いつもの遠吠えも、キンと冷え
た林の中をこだましたりして、うーん風情を感じる。
興奮し過ぎたせいなのか、どこかにぶつけたのか、気が付けばプリシンは
鼻血を流してます。鼻水と同じ様に、手の甲で拭いながら枝葉を投げ続け
る姿は
最初は驚いたものの、次にたくましく感じ、最後はおかしかったー。
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■2002/04/09 レッドゾーン
今夜時間差でめじ君と俺だけが、あとから夕食をとっていました。
先に食べ終わっていたあーちゃんは物欲しそうにそばに寄り、
離れないので「あっち行けよ、食べたんだろう?」と言うと
彼女はニヤニヤ笑うだけで「ちょっとそのサラダをちょうだい」なんて言って
る。
人が食べていると欲しがるところ、そんな些細な仕草でも可愛いなと思え
ます。
そこへ、スプーンを振りまわしたプリシンが走り寄り、
「おうおう」とテーブルを叩くと、一面に水飛沫が飛び散りました。
あーちゃんのパジャマが濡れ、テーブルが水滴だらけになる。
なんの水だろうとプリシンのスプーンを取り上げると、
濡れたティッシュらしきものが、ステンレス部分に付着している。
その青い柄には、見覚えがあったのです。
もしやとトイレにかけ込むと、そこには流していないウン様と
ゆらゆらと水に浮かぶ、青い花柄のトイレットペーパーが。
瞬間湯沸器、自分でも顔が熱くなるのが分かるほど頭に血が上りました。
さっきプリシンが用を足した時、お尻を拭いたのは他ならぬ自分。
流さなかった俺が悪いのだけど、どうしてスプーンでかき回すのだ?
しかも、めじ君と俺がスパゲッティを食べている食卓で何故振り回す!?
あと少しで、プツッっと切れるところでした。
あと1本糸が切れたら、本気で殴っていました。
吹っ飛ぶくらいに叩きたい衝動を、かろうじて押さえました。
笑い話にしたいところだけど、今夜はちょっと無理です。
苛立ち、たしかにその瞬間は苛立ちました。腹が煮え繰り返りました。
情けない、という感情とはちょっと違う。気持ちを表す言葉が・・見つからん
です。
こんなこと(大変なことは)我が家だけではないことは分かってはいるけれ
ど、
本当に今夜はレッドゾーンギリギリでした。
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■2002/03/20 さようならとありがとうと
今朝、とある神社の脇を車で通り抜けると
視界に、はっとするほどの淡い紅色が飛び込んできました。
満開の桜の木でした。近所にある桜の木は、どれも3分咲きだったので
どうしてこの木だけが、と頭の中は?でした。桜といえば、ソメイヨシノ1種
類しか知らなかったけど、他にも種類があるんですね。
毎日に流され、季節の移り変わりなど今まで気にも留めなかったけど
ここ最近はいろいろな想いが交錯し、今日見た桜に限らず、吹きぬける風
の柔らかさ、花の匂い、いちいち立ち止まっては春の訪れを確かめていま
す。
ネットで知り合った友人が2人、相次いで掲示板を閉鎖しました。
会ったこともなく、もちろん顔さえ知りません。
だけどたくさんの、本当にたくさんの話をしてきました。
知り合ってほんの数ヶ月だけど、身近な友人達より会話を交わし
障がいについて、より深い知識を我夫婦に与えてくれたお二方です。
知り合う前に戻るだけで、永遠に会えないわけではないのだけど
やはり「消えてしまう」ことは、言葉に言い表せない寂しさを覚えます。
子供と、もっと向き合う時間を作るため。
お二方とも、掲示板を閉鎖した理由は同じでした。
そういう決断をする人だからこそ、今まで惹かれていたのです。
Pさん、Fさん夫妻、ありがとうございました。
お子さんの成長とご家族の幸せを、ずっとずっーーーと祈ってます。
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■2002/03/12 (火) 区切りの春
かみさんは、強い人間です。
自分本意で時に冷たく、誰に対してもきついです。
プリシンの通う訓練会の、本年度最終日でした。
かみさんから、顔を出して欲しいと言われていたので、
会の後半を30分ほど、仕事を抜け出して立ち寄りました。
プリシンを間に挟み、俺とかみさん、
そして、プリシンとめじ君の両方を見ていただいているN先生。
今日の訓練会の様子、そして1年を振り返って、いろいろな話をされまし
た。
花粉症で、ぐずっ鼻のかみさんは「ちょっと失礼」と
鞄からティッシュを取り出し、後を向いて鼻をかみ始めました。
いつまでもいつまでも、鼻をかんでいます。
泣いていました。
人を頼ることが嫌いで、群れることも嫌い、全てを一人でしょい込み
必死で頑張ってきた人を支えていた棒が、ポキリと折れた瞬間でした。
人と合わせたり同調することも苦手で、しっかりとした強い芯を持つ人が、
肩を震わせ、顔を真っ赤に上気させて、声を押し殺し号泣しています。
映画やドラマ、作り物の世界では一切の涙を見せず、
どんなに泣きたくても、人前では決して涙を見せたことのなかったかみさん
です。1年が終わり、ホッと肩の荷が降りたのでしょう。
そんなかみさんを見ながら、結婚当時を思い出していました。
思えば、表面の冷たさ強さの裏側に隠し持っている脆さと優しさ、
そんな側面を知り、惚れて一緒になったのでした。
あの時の2人に、プリシンとめじ君2人の障がい児を授かるなんて
そんな未来図は、どこにもなかった。
のろけるわけでも、きれいごとを書くつもりもまったくないけれど、
めじ君とプリシンとあーちゃんの母親がこの人で良かった、そう思います。
かみさんは、強い人間です。
自分本意で時に冷たく、誰に対してもきついです。
だけど、表面の冷たさ強さの裏側に、脆さと優しさを隠し持っている女性で
す。
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■2002/03/10 森の中のプリシン
子供達をどこに連れて行こうかと、地図帳を片手にハンドルを握り、あてど
もなく彷徨ってます。
甥っ子2人と我が家の3匹、車に押し込んで出発したのはいいけれど
行き先を決めるのはこれからです。
もちろん、プリシンを基準として考えなければなりません。
1、投げるものが(特に石!)落ちていない場所。
2、できれば、他のお子さんがいない場所。
(砂をかけたり、おもちゃなどを取り上げて投げてしまうため)
そうなると、必然的に公園は行けなくなる。
3、広い所、たくさん歩ける所、走れる所。
この条件をクリアできるのは、
今のところKニュータウンの緑道と、近所の小学校の校庭だけです。
地図を見て目星を付けたのは、車で20分程のS区にある市民の森という
場所。
ここは良かったです。何が良かったって、ただの森だったからです。
「市民の」というわりに、人っ子1人いませんでした。
オリエンテーリング用なのか、ところどころ矢印がついた木の案内板があ
るけれど、どれも朽ちて文字もはげかかっています。
プリシンは吠え、枝や枯葉を放り投げ、生き生きと駆け回っています。甥っ
子2人は、そんなプリシンの名を呼びながら、甲斐甲斐しく追いかけてくれ
ます。
木々の間からこぼれる柔らかな春光、枝葉の緑と空の青、そのコントラス
トを仰ぎ見ながら、ひんやりとした森の中でまたいつもの思いが去来しま
す。
山や森、海でもいい、そんな場所でプリシンと暮らせたらと。
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■2002/02/28 褒めてあげる状況A
小さいうちが勝負ですから・・・
ざっと目を通した手紙の、その文字が飛び込んできた。
葉書よりもひと回り小さい用紙2枚に、びっしり書かれている達筆な文字。
訓練会のN先生からの手紙です。
プリシン、めじ君、共に見ていただいているN先生。
今まで、何十人の障がい児を訓練してきたのだろう。想像もつかない。
本当に、親身に親身に関わっていただいている。
「親身」とは、近い身内のことをさすのだけど、赤の他人の息子達に
ここまで深く関わり、考えてくれる先生には「親身」という言葉しかない。
手紙と一緒に、袋を一ついただいた。
「食事の時、料理を大皿の盛ってあげて、プリシンに自分で食べる分を
取らせてあげてください。それができたら、褒めてあげてください」
そうかみさんは、N先生に言われたそうだ。
袋の中には、トングが入っていた。
パン屋とかで、トレイにパンを乗せる時に使う、あれである。
手紙の文字が、飛び込んでくる。
できるようになると信じて、やってみましょうね。小さいうちが勝負ですか
ら
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■2002/02/26 褒めてあげる状況@
先週のこと。
プリシンの通っている訓練会の、担当であるN先生と話す機会があった。
普段の家での生活は、かみさんから聞いているらしく、
「プリシンちゃん、家では叱られてばかりでしょう?
できるだけ褒めてあげる状況≠作ってあげてください。
例えばお皿洗いを・・もちろんできないでしょうが、そばにいさせて
そのフリだけでもさせて、そして褒めてあげる。
皿洗いじゃなくてもなんでもいいの、仕事をさせてあげて、
めじ君やあーちゃんにも、褒めさせてあげる」
・・・褒めてあげる、褒めてあげる状況をこちらが作る、か。
考えてもみなかったことだな。
家に帰って、かみさんにN先生との会話をそのまま伝えると、
「それを、私1人がやれというのは無理よ、忙しくって無理よ」
う〜む、それもそうだ。
「めじ君とあーちゃんがやっているお皿拭き、あれを一緒にやらせたらどう
だろう?」
かみさんは即答で「プリシンが、やるわけないじゃないの」
う〜む、それもそうだ。
「そばにいさせて、布巾を持たせるだけでもいいんじゃないの?」
しばし、かみさんは考え込んでいた。
そんでもって、2、3日後、仕事が早く終った日があって
自宅に戻ると、ちょうどみんなでお皿拭きをしているところだった。
めじ君にあーちゃん、そしてプリシンもお皿を拭いている。
よく見ると、皿の表面に布巾をヒラヒラさせているだけだったけど、それでも
スゴイ。
「何のためにこうしているのか、自分では分かってないと思うんだけどね」
そう言うかみさんも、実に嬉しそうだ。
「すごいね」「えらいね」「よくできたね」、
みんなで褒めてあげると、言葉の意味は理解してないのだろうけど
雰囲気を感じるのか、プリシンはニコニコと笑顔を浮かべていました。
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