photo by yotsu3
季節は秋。
冬の始まりに近い秋だった。
その日はその季節にしてはめずらしく
お日様が顔を出し心地よい暖かさだった。
柔らかい光がさしていて
地味な商店街が照明があたったみたいに
くっきりとキレイに見えた。

それは私がまだ高校生の頃。
風邪をひいて学校を欠席した私は
近所の内科で診察してもらい
お日様の光でポカポカと背中を温められながら
家までの道をぼんやりと歩いていたところだった。

向かい側から幼稚園の帰りと思われる
3組の親子が歩いてきた。
明るい陽射しに子供たちの笑顔が映え
自分もつられて微笑みながら子供たちを見ていた。
子供たちは、3人で本当に楽しそうに
母親たちの回りをくるくる走り回り歓声をあげている。
すれ違う時に一人の母親の話声が耳に飛び込んだ。

「 あ〜 幸せ〜 」

その時
漠然と自分の中に何かの答えがが打ち込まれた気がした。



あれからもう十数年。
笑って話せない事もあったけど
たくさんの出会いに恵まれて今の私がいる。


十年来の付き合いの仲間達がいる。
その一人から久しぶりに電話があった。

「最近どうや?」と彼は言った。
「うん。毎日平凡で幸せー。」
私はそう答えた。
彼は私の言葉の意味を正確に理解して
「そうかー。それが一番や。良かったなぁ。」そうしみじみ言った。


何が本当に大切で
何が取るに足りないもので
何がどうにでもなる事で
何がどうしても必要な事なのか

間違ったり
迷ったり
どうでも良くなったり

そうこうしながら

どこにでもある平凡な毎日が
どれだけ幸福で
それを維持していく事の大切さを
思うようになった。

そんな私を見てきた仲間だからこその
言葉だった。



「じゃあまたね」

電話を切った後
久しぶりの長電話の心地よい軽い疲労感を覚えながら
私の頭の中には
あの晩秋の暖かい陽射しの中でみた
穏やかな光景が浮かんでいた。


















































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