我が家のランチ風景 
─インドレストランで繰り広げられる夫のナンパ?─
「住んでるの、どこ?」。
つれはいつもこう切り出します。
聞かれたウェイトレスさんは(特に、初めての!)、同伴している私を前にどう答えていいのかドキドキマキ…(笑)。
初々しい方に限っては、「これ、どういう意味なんですか…?(ナンパ?)」と、かなり真剣な表情で私に助けを求めて来たりする場面もあったりして…、私は妻という立場を忘れ、にやにやなんぞしてしまうのです。うふふ。
これは、休みの度に繰り返される、我が家の近くのインドレストランでのランチの席のお約束のひとコマです。
我が家は嬉しいことや何かイベントがあると、近くのインドレストランに行きます。
あ、でも1番行く確率が高いのは、遅く起きた日曜日かも。
これがいい天気だったりすると、もうそれだけで「阿吽の呼吸」で直行です(笑)。
ま、一重に妻の料理の腕という噂もありますが(笑)。
話を元に戻しましょう。
「どこ、住んでるの? 大学生? 何、勉強しているの? お父さん、お母さんは一緒住んでるの?」。
もう、つれの矢継ぎ早の質問攻めに、殆どのウェイトレスさんはたじたじ…模様。
実は、私もつれと出会った当初、これにやられました(笑)。
勿論、質問にもてんてこ舞いでしたが、1番謎(笑)だったのが、デートの時に行くインドレストランでの毎回の一こまでした。
それは、お店のドアを開けて、インド人らしきボーイさんが「いらしゃいませ!」とくるやいなや、
「これは、奥さんです!」。と、聞かれもしないのに、私を紹介するのです。しかも、どのお店でも(笑)。
私としては、つれと一緒に楽しい時間を過ごすのに、どうして他人に聞かれもしないのに「素性」を明かす(笑)のか、訳がまったくわかりませんでした。
あんまり大きな声では言えませんが、たまに訳もない言い争いなどをしてちょこっと険悪なムードを引きずっての外出時など、
「そんなに、私と一緒にいるのが恥ずかしいのォ〜! どーしてわざわざ知らない人に奥さんだよって、断りを入れなきゃ行けないのよぉ!」と噛みつく場面もしばしばあったりしたのも事実です。
(今だから、告白>時効だもんね!)。
皆さんの生活の場面で、これと同じような経験、おありですか?
せっかく大切な人と過ごす時間ですもの。
妻としては少しでも(それなりに毎日の生活から離れて・笑)
ロマンチックに過ごしたいと願うのは、万国共通ですよねぇ。ふー。
でも、つれを問い詰めた結果、次のような事実が発覚しました。
つれ曰く、
「だって、大事な奥さんと食事に来ているのに、恋人との密会と思われたくないんだよぉ〜!」。
そうそう、御紹介が遅くなりました。
何度か私のコラムをお読みになってくださっている方はご承知くださっているかもしれませんが、我がつれは、パキスタン籍で、パシュトゥン人です。
そう、今、巷の話題を独占の「ムネオ」くんによって、その開催の意義を煙に巻かれた「アフガニスタン復興支援会議」は記憶に新しいところでしょう。この支援会議ではパシュトゥン人・カルザイ氏のとてもチャーミングな笑顔とウィットに富んだ会話やスピーチも記憶に鮮明ですが、男女のいかんに関わらず、つれらパシュトゥンはいかにウィットに富んだ会話ができるか(笑)で、その人のキャラクターも評価されるようなところがあります。
あ、話が脱線しました。
前述のつれの発言の真意は、パシュトゥン人の生活そのものから来ています。
つまり、「(妻がいる身で)奥さんでない女性と一緒にいることなんて
(たとえこの場が日本でも)考えられないので、最初から断りを入れておく!」のだそうです。
夫は妻を妻として扱い、大切にする。
これが、夫から妻に対するリスペクト(尊敬)の態度なんだそう、です。
ですので、冒頭で紹介した一見、ナンパ(笑)にみえるつれの発言も、「サルマ(筆者)という奥さんと一緒にいるから。」できることであって、実は、お店のコックさんをはじめ、殆どの従業員さんが、私たちが夫婦であることを知っているからなのです。
故に、殆どのウィトレスさんが、つれのナンパの経験者(被害者・笑)だったわけなのです。
それと、もう1つの事情。
つれらはとても親族の情愛を大切にするのと、初めて会った方には会話の初めに必ず家族の安否を尋ねるのが一種の礼儀のようなところがあります。
ですので、つれにしてみればとってもポピュラーな会話の一場面なのですが、一方でウェイトレスさんの立場に立ってみれば、初対面である客に、
「家族は元気ですか?」と突然聞かれ、
「なに? なに? この人?ぉ。女の人と一緒にいるのに、これってナンパぁ?」となるわけです。
そして、事情を知っているインド人コックさんをはじめ、他の従業員さん及び私、そしてつれ本人もにやにや顔♪。
新人ウェイトレスさんが避けては通れない儀式(笑)となっているわけなのでありました、はい。
また、私たちが足繁くランチに通うもう1つの理由があります。
それは、インド人であるコックさんたちの心遣いが、カレーと同じくホットだからです。
コックさんは、私たちのオーダーを聞いて、注文していないものを必ず一品、プレゼントとしてくれるのです。しかも、前回と重ならないように、と、心憎いまでの気配りで、私たちは殆ど(自分たちで注文していないのに!)お店のメニューを網羅してしまいました。
「もう、出せないだろう!」と私たちが意地悪くかつ安心していたら、今度は、「これ、私の愛用の品だけど…」と、ポケットから英国産の葉巻をつれに差し出してくれるではありませんか…。
このお金では買えない何よりのプレゼントに、つれもとても嬉しそうだったのを覚えています。
仕事がひと段落した厨房に行って、葉巻談義を繰り広げているつれとコックさんたちを見ると、最近のインドとパキスタンの関係のもつれが嘘のように感じられてもきます。
この私たち夫婦へのプレゼント攻撃も、私とつれが一緒に仲良くつれだって行く時だけのそうで、以前、つれが(私に内緒で!)友人らと(むさ苦しく男性だけで)来店したときには、コックさんは軽くウインクしてくれただけだったそうな…。
このことからも、私たち夫婦をとても大切な客として扱ってくださっているコックさんをはじめ、お店の方々のお心遣いについつい足を運んでしまうことになるのです。
…ふー、来週もきっとほころびかけた桜のお花見と称して、ランチに行ってしまうんだろうなぁ…。