ホームに戻る 人権弾圧(殺害)

第164回国会 政府開発援助等に関する特別委員会 第6号 平成18年5月31日(抜粋)


○近藤正道君

 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。

 スケールの大きな話の後で恐縮でございますが、私はフィリピンにおける一つのODA事業のことについてお尋ねをしたいと思います。

 資料として配付させていただきましたフィリピン、ルソン島のアグノ川かんがい事業の円借款のことでございます。これは上流にサンロケ・ダムというアジア最大のダムがあると。そのダムのかんがい部門という位置付けでございまして、事業費が約二百億、このうちの百五十億をJBICが円借款をするということで話が進んでいるようでございますが、今年の二月の二十一日付けの書簡で、現地の住民団体から政府とJBICに要請が来ております。これは事業の環境面あるいは社会面での問題点を指摘しながら、それが解決するまでは借款については慎重であってほしいと、こういう中身であるというふうに私は承知をしておりますが、JBICとしてはこの書簡に対してどういうふうな対応をされるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○参考人(武田薫君)

 ただいまの御指摘のございました書簡で、住民団体から要請のありました環境、社会配慮、こういうかかる事項につきましては、今後とも本行としましてはフィリピン側関係機関と十分に連絡を取ってまいりたい。

 また、本事業の融資につきましては、日本国政府とも十分に協議をしながら、引き続き慎重に検討してまいりたいと、こういうふうに考えてございます。

○近藤正道君

 ところが、この今の書簡、ここの一番最初に名前を連ねた現地の住民運動のリーダー、ホセ・ドートンという六十二歳の方がおられるんですが、この方が今年の五月の十六日に何者かに射殺をされると、こういう事件が起こりました。現地ではこれは軍が関与しているというふうな、言わばこれまたうわさなんですけれども、これが中心で、かなり騒然とした事態になってきております。

 そこで、外務省としては、この反対運動、かんがい事業の反対運動の言わばリーダーが日本の政府に要請をした後に射殺をされたという事件の概要についてどういう情報を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○副大臣(金田勝年君)

 現地の報道によりますと、五月の十六日の午前、ルソン島中部のパンガシナン州におきまして、帰宅途中のホセ・ドートンさんがバイクに乗った二人組に至近距離から銃撃されて死亡したと、このように承知しております。なお、容疑者及び事件の背景については分かっていないということで報道がなされております。

 フィリピン当局は現在捜査中であるというふうに承知しておりますが、本事件と我が国が円借款によります支援の意図表明を行いましたアグノ川統合かんがい事業を直接関連付ける事実は現在のところないと承知しております。

○近藤正道君

 私は現地の人たちの情報を日本のNGOを通じて何本か聞かさしてもらっているんですけれども、これはもう明らかにやっぱりこの事業の反対のリーダーをつぶすと、この人を殺害することによって反対運動そのものをつぶすと、そういう意図に基づいて行われたものであるということは明らかだということを皆さん言っているわけでございます。

 このかんがい事業は、先ほど言いました上流のアジア最大のダム、これによって大量の人たちが移住をさせられる。そして、今度はそれに基づいて下流でかんがい事業を行うと。これに伴ってもやっぱり百世帯を超える人たちが移住をさせられると。にもかかわらず、ろくなアセスも行われていないと。こういうことの中で、現地の人たちが反対運動に立ち上がって、そしてその文字どおり中心で頑張った人、日本政府やあるいはJBICに要請を行った人がその要請の直後に射殺をされるということでありまして、もうこれ、どう考えても、これはこのかんがい事業と無関係とは言えないというふうに見るのが私は常識ではないかというふうに思っておりますが、是非、日本政府は、単にこれを見ているだけではなくて、徹底した真相解明をフィリピン政府にやっぱり求めるべきだというふうに思いますし、この殺害の真相が分かるまでは融資の決定、JBICの融資の決定はやっぱり私は延ばすべきだと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(金田勝年君)

 委員御指摘のただいまのお話については、いずれにしましても現地でのフィリピン当局による捜査というのが行われているわけであります。こうした動向を見守りながら、また本件、この円借款事業につきましてはいまだその交換公文を締結していない状況であります。そのほか、社会環境面については、何といいますか、本件について関係NGOの指摘される問題点というものは、やはり住民移転の問題、あるいは環境影響評価と環境緩和方策を再考してはどうかといったような、そういう主張も行われているというふうに聞いております。

 いろいろそういう中で、そういう確認すべき点もあろうかと思いますので、本円借款事業については、融資の検討については慎重を期していく所存であります。

○近藤正道君

 慎重に対応したいと、それは結構でございます。是非このところはよくこれから現地の状況を見定めていただきたいというふうに思っています。

 フィリピンのアロヨ政権の下でこの種の事件が今年に入って九十件を超えているということでありまして、大変な状況。こういう状況の中で、果たしてODA事業をフィリピンで行うことがいいのかどうかという、そのことさえ私は考えざるを得ないと、こういう状況でございますが。

 フィリピン全体の話は仮にわきに置くとしても、今回のこのアグノ川のかんがい事件について、こういうリーダーが、反対運動のリーダーが殺されるということを考えたときに、私はやっぱりODAの大綱だとかあるいはODA四原則の、この国のODA事業の正に原点に立ち返って考えるやっぱり必要があるんではないか、こういうふうに思っております。

 ODA大綱では、環境と開発の両立だとか、あるいは途上国における民主化の促進、とりわけ基本的人権及び自由の保障状況には十分注意を払うと、こういうことがしっかりうたわれておりますし、援助政策の立案及び実施という項目の中には、適正な手続を確保する、つまり環境面と社会面、その両面で行う事業がどんな影響をもたらすのか十分に調査をして配慮しろと、こういうことが書いてありますし、不正とか腐敗には絶対結び付けてはならないと、こういうふうなことが具体的に書いてございます。

 まだ真相は分からぬところがありますけれども、私は、前後の流れからいけば、これは正に今言ったODA事業実施に伴って日本政府がやっぱりきちっと配慮すべき問題と極めて密接にかかわっている問題であると。ですから、是非このことについては慎重の上にも慎重、そして真相をしっかりと見極めて、そうでないというやっぱり確信が持てるまでこの事業は事実上止めるべきだと、私はそういうふうに思います。重ねてひとつ御答弁いただければ有り難い。

○副大臣(金田勝年君)

 アグノ川の統合かんがい事業に関しましては、JBICを含みます現地ODAのタスクフォースにおきましても関係者と緊密に連絡を取りながらフォローをしているところであります。また、現地で活動しているNGOとも外務省としてはJBICとともに直接連絡を取りながら随時意見交換もしております。

 いずれにしましても、これら現地の状況を十分に踏まえながら、また政府としてはJBICとも緊密に連携を取りながら、本案件実施については引き続き慎重に検討していく所存であります。

○近藤正道君

 この事業は日本とフィリピンの二国間の協定ということでどうもスタートしているようでございます。二国間の協定で仕事が始まりますと、とかく現場の思惑をあるいは心配を乗り越えて事業だけがどんどん進むと、こういうことが大変懸念されるわけでございます。是非、あらゆる情報はやっぱり現地にあるわけでございますので、現地でしっかりとやっぱり情報をつかんで、その情報に基づいて事を進めていただくと。単にフィリピン政府からの情報だけではなくて正に現地の、それも現場の情報に立脚をして事を進めていただきたい。

 そういう意味では、JBICの役割は非常に大きいと、この考え方をやっぱり大いに大事にして事を進めていただきたいと、こういう思いがございますが、こういう認識でよろしいでしょうかね。

○副大臣(金田勝年君)

 そういう認識でよろしいと思います。

○近藤正道君

 JBICには、環境社会配慮確認のためのガイドライン、こういうものが作られてあります。〇三年の十月から施行されているわけでございまして、これ以前はいろんな問題がございました。正に環境と開発の衝突するような様々な問題がある中でこのガイドラインが作られたわけでございますが、しかし、その後、このガイドラインに基づく申立てが一件もないということでございます。申立てがないということは、それはいいことなんでありますけれども、しかし本当に問題がなくてこのガイドラインが使われていないのかどうか、私は大変懸念をしておりますし、現地の情報に精通しておりますNGOの人たちの話をいろいろ聞く中では、なかなかやっぱりもう物が言えないんだと。現地の住民は、政府の圧力、こういうものがあって、あるいは身辺に危険を感ずることさえある、場合によっては今のアグノ川のかんがい事件の反対派のリーダーが射殺されるような、こういう事件が非常に起こる中で声が上げられないんだと、こういうことを言う人がたくさんございます。

 問題のあるODAの事業に対して、現地の住民だとかあるいはNGOの皆さんが日本政府に直接物を言う、異議申立てをする、そういうシステムをやっぱりしっかりとつくるべきではないかというふうに思っています。

 今日は、今ほど来の議論でODAの事業のかなりでたらめな執行方法はいろいろ出ました。すべてやっぱり税金で使っているんだから、しっかりと無駄遣いあるいはでたらめな使い方についてやっぱり監視をしなければならない、どうやってやっぱり監視をするのかと、こういう議論がずっと続いたわけでございますけれども、是非、日本政府に直接物を言って、そして日本政府の中で第三者機関をしっかりつくって、先ほどODAの評価委員会の話が官房長官からありましたけれども、本当に信頼できる第三者機関をつくって、そういう現地の声をしっかり受け止めるシステムをやっぱり構築する必要があると、こういうふうに改めて思うわけでございますが、官房長官の所見をお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(安倍晋三君)

 ODAの実施に当たりましては、持続可能な開発の観点から、実施機関において環境社会配慮のためのガイドライン、先ほど御言及があったわけでありますが、このガイドラインを策定をして、環境や地域社会に及ぼす負の効果をできるだけ回避するように努めているところであります。

 具体的には、環境等への負荷が特に大きいと想定される途上国の要請案件については、ホームページでの情報公開や外部専門家のコメントを通じ、環境等への影響の把握方法や緩和策等をプロジェクトに反映させるように努めているところであります。また、ガイドラインに抵触した場合には異議申立て制度も導入をされています。その手続については情報公開が定められており、その情報については政府とも共有されることになります。

 また、効果的、効率的なODAの実施のため、ODA事業に対するチェック体制の充実が重要であります。これまで、評価、監査の充実、案件モニタリングの充実等に積極的に取り組んでまいりました。各援助事業の評価については、第三者の視点を入れて行うようにしているところでありまして、今後とも、こうした取組を進めることにより、ODAの適正かつ効果的な実施を図っていきたいと考えております。

○近藤正道君

 終わります。