「姉さんは怖いもの知らずだから、こっちの方がみていて怖いよ。」
三つ違いの弟がよく言っていました。

「そんなことないよ。私は普通だよ!」
そう返事をすると、
「本人がそう言うなら、そういうことにしておいても良いけど・・・」
と笑います。
あるとき、その会話に竹田さんが加わったことがあります。

「うん、それは言えていると思う。こんなことがあったもの。」
と含み笑いをしながら彼が話し始めました。

 まだ結婚する前だから、惠美ちゃんが二十歳になっていなかったころのこと。
小田原城址公園でデートをしていた時のことなんだよ。
ベンチに腰をかけて話をしていたんだけど、後ろの生垣のあたりでごそごそ音がしたのさ。それを聞きつけて、
「ちょっと! なに覗いているのよ! 出てきなさいよ!」
惠美ちゃんはつっと立ち上がって怒鳴ったんだよね。出てこないと知ると、足元にあった小石を拾って音のした方へ投げたんだよ。
僕はびっくりして、本当に出てきたらどうしよう と怖かったよ。

「はははっ、姉さんらしいや。」
と弟。


   こんなこともありました。
自転車を連ねて、子供たちと徳島市内へ出かけたときのことです。まだ二男が、小学生だったと記憶してします。
私たちの住んでいたところから市内へは、吉野川を渡らなければ行けません。
四国三郎と呼ばれる吉野川は、とても川幅の広い実に雄大な河川です。
そこにいくつかの橋がかけられているわけですが、その中でも交通量の多い吉野川橋を渡っていました。

 真ん中に車用の広い橋があり、両脇に自転車と歩行者用の、自転車なら二台がすれ違うだけのゆとりはある 言うなれば、狭い橋があります。

私が先頭を走っていました。どちらが上りで、という取り決めはありませんが、一応左側の橋を渡っていました。
半分以上渡ったところで、学生さんが二列に並んで下ってくるのが目に入りました。
私はすかさず、
「一列になって走りなさい。危ないでしょ!」
と叫びました。
彼らは、私とすれ違うぎりぎりになって一列になりました。かなり、腹が立ったのは事実です。

 渡り切って、目的地に着くまで二男がぶつぶつ言っていました。
「なにをぶつぶつ言よるん?」
と聞いた私に、
「かあさんと一緒におったら怖いわ。さっきは僕が吉野川に落とされるんでないかとびびったんじょ。」
と答えました。
「なんで? なんで落とされるんよ?」
と重ねて聞くと、
「かあさんが余計なこと言わんでも、一列になるに決まっとんでぇ。一列になれ や言うたら気ぃ悪うにして、僕が仕返し されるわ。余計なこと 言うたらあかんよ。」
と言いました。長男は、もっともだ と言うように頷きながらにやにや笑っています。

「あんたらのために、あんたらが安心して渡れるように、と思って言うたのになぁ・・・」
とぼやいた私でした。


 昨今の子供事情に疎かったのか、正義感が強すぎるのか・・・
とにかく、私のすることは少し常識を外れているようです。
『この年になって』 という台詞は嫌いなのですが、タクトで徳島を出るときも、本を出したときも、周囲の反応はなぜ?  でした。
「夢を実現したい なんて馬鹿なこと言わず、もっと地道に生きたらどう? これからは、孫の成長を楽しみに生きるときでしょ?」

そんなことを言われたこともあります。
それでも、私はそれだけで生きるのは悲しいと思ってしまうのです。

 もっともっと、いろんなことを知りたい。
もっともっと、いろんなところへ行きたい。
もっとたくさんのひとと話がしたい・・・
ほんの些細な事でも、これはどうしてこうなるのだろう? とまるで三歳児のような興味を覚えるのです。
私はいつも、自分の心にすなおに行動しているのですが、どうも周りの人には怖いもの知らず と映るようです。

 そう、無知と無暴と好奇心。。。

 頭で考えるより先に、こころで考えて行動することも多いので、ドジとも縁が切れません。もうこれは、ドジを直すとか、 好奇心を抑えるよりも、積極的に仲良くするほうが私らしい、と思うようになりました。

もしかしたら、三歳児に、ほんの少しの常識を足したのが私なのかもしれません。


2003.11.3

 


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