ありえない人々
2003年 7月 9日


 思わぬところで「ありえない」モノと遭遇して狼狽することがある。
 ここでいう「ありえない」とは勿論巷の女子高生が連発する「ありえねーマジかわいー」などの意味不明な使い方とは別物の、いわゆる「ここにあるはずがない、こんな状況は起こり得ない」のほうである。
 しかしながら、ホントに「ありえない」のならそんな目に遭うはずもないので、たいていの場合その「ありえない」状況は「ありうる」状況にほかならない。それらを「ありえない」にする理由はひとえに、ものすごーく確率は低いがナイこともない、という希少性か、他人にとっては普通に「アリ」なのに自分だけが「ナイ」と勘違いしてるという思い込みの、どちらかによると思われる。(なんかクドい文章だなあ)
 かくいう私も思い込みの激しいタイプ、後者の「ありえない」で時々気まずいハメになる。
短大の入学式場で高2の時のクラスメートを見かけ、「おお、Sちゃあん」と歩み寄って行ったのだが、突然ハタと(いやいや確かうちの学校から今年ここには私しか来てない→だからここにSちゃんがおるわけない→よってこのヒトはSちゃんではない)と思いたち、目の前で「すいません人違いしました」とUターンしたことがある。ちなみにそれはSちゃん本人で、「なんでやねん」とすぐツッコまれたのだが。
 さてここで何が問題かというと、勘違い自体ではなく、その変移にある。
いるはずないと思っていたところにSちゃんがいたのだから、誰も来ていないというのは間違いだった、と、これまでの認識を改めるものでなく、「いるはずがないのだからSちゃんではないのだ」と、事実をねじまげる新たな誤解をしているわけだ。しかもそれは意識して考えをすりかえている訳ではなく、本人マジメにそう思ってるので、その時点で一人でそれに気づくのはおそらく難しいだろう。ヒトが聞けばかなりムリ目な解釈でも、脳ミソにとってはこれまでの認識を覆す事実より、そのまま錯覚し続けられる解釈のほうがすんなりくるのかもしれない。
 もうひとつ例があって数年前、高槻に住んでいた頃、会社で仕事のからみの多い技術系の部署のTさんと同じバスに乗りあわせたことがあった。乗り合わせるというか、帰りの混んだバスの中でTさんは私の真ん前にいて、混雑で身をよじってお互い初めて気づいたのだ。しかし、そんなとこでTさんに会うわけがない、と勝手に思い込んだ私は、またもや彼をTさんではない、他人の空似であると勝手に解釈してしまい、あげく(でも他人にしては似すぎーもしや兄弟だったりして。むふふ)とマジマジ見たあげく、ふっとヨソ向いてシカトしてしまったのだ。勿論ホントの他人なら目をそらして知らん振りするのは普通だろうが、はたしてTさんはなんと思っただろうか。こんなに真ん前にいるとゆーのに。
 しかし次の日会社にきて、同僚のMくんに「昨日バスでTさんに激似のヒト見かけてー」と話そうとして、ふと(もしや本人だったりして)という考えがよぎり、社員住所録を確認してみた。というのは私には前科があって、かつて隣の部署にいたMさんをやはり同じバスで見かけ、シカトしたことがあるのだ。その時は少し離れていたのだが普通にMさん本人だとわかり(何が違うのだろう)、でもバスの中でまで会社のそれも顔見知り程度のオジサンと話しなければならないのは苦痛だったのでつい見なかったフリして目をそらしてしまった。しかしあとでMさんに「無視されたわー」と言われ、自分が悪いのだがショックを受けた記憶がある。そのヒトはざっくばらんなヒトで、別にいやがらせでそんなツッコミをしたわけではないのだが、あーこの先イヤだなあと思っていたらほどなく北陸に転勤になってしまった。やったーラッキー!
 そしてそのTさんも、やはり自分と同じバス路線地域に住んでいた。げげ、やっべー!Mさんと違ってモロ目の前でシカトしてまった!!
 しかし幸い(?)、Tさんもその後すぐ京都に転勤になってしまい、勤務時間帯の関係もあるのかその後バスで見かけることは一切なくなり、良かったーとひと安心だった。なになに?私がヤバい!と思ったヒトはみーんなどっか行ってくれるのかしら?にゃはは。
 そして今年、組織改正で同じ本部の同じシマ、斜め前隣にそのTさんは座っている。そしてMさんは2年ほど前から本社の総務に戻っており、今も私の持っていく書類にペタリペタリとハンコを押している。よけいな事にそのあけすけな物言いは健在で、つい先日も同じエレベーターにMさん、Tさんと3人きりで乗り合わせてしまったとき、「うーん皆高槻組やな!」とのたまっていた。い、いらんことを!
 Tさんが特にコメントもなく自分の目的階でさっさと降りていった後、しょーがないのでMさんに「いや私昔Tさんて高槻やと知らなかったけどそうなんですよねー」と言うと、Mさんは「ホントに知らんかったの?」とニヤニヤしていた。そんなこといちいち知らーん言うねん。
 なんか話がズレた気もするが、とかく思いこみは混乱のもと。視野を広く、ものごとを客観的に見れるよう心がけていきたいものである。くわばらくわばら。