| 【松ッチャン】 流 行 最 先 端 の 巻 |
「流行最先端」 ワシとじぃちゃんとの出会いの事を、時々思い出す。 あの頃、勤めておった喫茶店で、運命の出会いを感じたじいちゃんは、妻子持ちの江戸っ子だった。 「う!なんてステキな紳士なんだ」 これが思った第一印象だった。 しばらくして、闇の暗いお付き合いが始まったが、時代も時代、ワシはねーさんに進められた見合い話に乗せられて、好きでもない人と結婚するハメになった。 が、しかし・・・・・・・ そんなのは長続きするでもなく、ある日夜汽車にのって、夜逃げした。 揺れる夜行列車。 行き先は江戸。 結婚の時にいただいた指輪に未練はあったが、清水の舞台から飛び降りるつもりで置いて来た。 これが、じいちゃんとの再会への切符になった。 それからじいちゃんが死んでしまうまでの、50余年。 人生を共にするハメになったが・・ 何度、別れと再会を繰り返した事か。 ワシは、常に流行最先端を行く、大正の女だ。 「不倫は文化」と言う言葉の原版は、ワシにあったのだ・・・。 何はともあれ、後悔ない人生は素晴らしい。 きっと、あの世に行ったとしてもじぃちゃんに会うだろう。 |