BABY



   うんち
 

 汚い話ではあるが、生物である限り、捕食したら排泄するのが道理である。
どんなにかわいい子でもおしっこばかりはしていない。うんちもする。

 母親たちが語る、父親の育児参加についての不満の中でよく見かけるのが
「おしっこの時はおむつを換えてくれるけど、うんちの時はやってくれない」
と言うこと。私も最初はどうしていいかわからずに妻を呼んでしまった。
 妻は「自分の子供のうんちが汚いって言うの!」と不満げだったが、
嫌だ、と言うよりどうしていいかわからなかった、と言うのが正直なところであった。

 
 うんちと言えば肛門から出てくる。産まれたばかりの子供は肛門に筋肉も何もなく、まったくのただの穴であると言う。
ほんの小さな穴である。だから我慢とか何とかなしに、出るときは出てくるらしい。
 しかしうちの娘はマザーリング中に、あまりにもうんちを出せずに苦しくて、浣腸してようやく出すことが何度もあった。
浣腸も小さな体にふさわしく、綿棒を使ったと言うことだ。
 あまりに出ない日が続くと、機嫌が悪くて泣き通しで、おなかをさすって便秘マッサージをしていた。

 うんちは体の中の様子を知るのに重要な情報である。始めて赤ちゃんのうんちを見た人はびっくりする、
と物の本に書いてあるように、緑の色をしていたりして大人とはまったく様子が違う。
それが成長とともに色が黄色っぽくなっていく。
しばらくはドロドロ状だ。

 このドロドロ状がなかなかやっかいなのだ。
次第にうんちのおむつを換えるのも慣れてきた私であったが、ある日あまりの量の多さにおむつを開けた瞬間思わず
「あっ!」と声が出てしまったことがある。
 体も大きくなってきた頃で、毎日のミルクの量もそれまでに比べて随分増えてきた時期だった。
摂取する物が多くなれば、当然排泄物も多くなる。大量に出たうんちをおしりふきで拭き取るのだが、
その量にびっくりしているうちはまだ良くて、ある日とうとうそれがおむつからはみ出てしまっていた。しかも背中から。
 妻には「なにやってるの!」と叱られるが、私にどうしろと言うのだ。最初は私の処理がまずかったように言われたが、
それからしばらくその惨事が続き、おむつを開ける前にそーっと脇から覗くのが習慣になってしまった。
お座りができるようになった頃で、出たうんちが背中側にのぼってきてしまうようだった。
うちの子が細すぎるのか、あるいはおむつのウエスト部分の締め方がまずいのか、色々考えたが解決策は浮かばなかった。
ただ、ラックにお座りさせていたときはうまく収まっていてくれるので、しそうな時はラックに座らせると言うのがせめてもの自衛策となった。

 おむつからうんちがはみ出ると言うことは、下着にまでうんちが出てくると言うことだ。
うっかり油断しておむつを開けると、はみ出たうんちが下着ばかりか、別な場所にも飛び火してしまう。
うんちのついた下着やおむつはどこに置こう?うっかりするとじゅうたんにも被害は広がる。
やばいと思ったときは新聞紙や折り込み広告をまず用意するようになった。

 やばいと思ったとき、まずはにおいで確認する。育児漫画で事前に読んでいたのだが、本当に、ごはんの炊けるにおいが
赤ちゃんのうんちのにおいに思えてくるのだ。これは笑えた。

 下着にまでうんちがついてしまうと、全て服を脱がせて洗濯だ。洗面台でつまみ洗いをして洗濯機にかける。
妻はこれが毎日のように続いて、くたびれきってしまっていた。イライラして虐待されても困るので、私一人の時の惨事の場合は私が洗うようにした。

 
 このところはこのような大惨事はなくなった。何故と言うに、離乳食が進んできて、うんちが固形化してきたのだ。
これがまた娘にとっては、人生で始めて遭遇する体験で、最高に苦しそうな顔で力んでいる。
 あまり力みすぎたのか、お尻の穴が切れて血が出てしまった。ひどい場合は痔になったりすることもあるらしい。
もっとうんちが柔らかく、出やすくなるようなメニューを考えねばならない。うんちの中身や硬さを調べて考え込む妻。
私も覗いてみると、食べた野菜などがチラホラ見える。毎回観察していると、もうそれは汚いとか何とか言う思いはなくなってしまう。
研究の領域に入ってくる。

 顔を真っ赤にして力み、泣きながらうんちをしていた。痛くてきばれないのか、小さな栗大のうんちが一つ。
段々慣れてきて、二つ三つ。先日は7センチぐらいの長さのうんちを出したよ、と帰るなり妻の報告。
 娘のうんちの具合が家庭の話題になる今日この頃。
 私は私で、おむつを換えている途中でお尻の穴から覗いているうんちを発見。見る間にあてがったばかりの真新しいおむつの上に
うんちを出していく。こんな小さなお尻の穴から出すのはさぞ辛かろうと思えるほどうんちはお尻の穴より大きくて、
娘は痛そうに泣き顔だ。普通の栗ぐらいのうんち登場。硬さもそれ程ではない。にんじんがチラホラ見えるが、出血もさほどない。
段々上手になってきたか。気張るのに必要なのだろう、お尻の穴もそれらしくなってきた。
 


 2002年3月26日