「石崎・高橋・松本さん」
「―――だからな。石崎、今はあんまり騒ぐな。こちらの松本さんが面倒なところ全部受け持って下さるって仰ってるんだ」
高橋の隣に座っている松本がニッコリと石崎に微笑んだ。高橋の正面に座っている石崎はそれを見ようともしない。
「騒ぐなつったって。このまんま放ってたら、この町そのまんま宇宙船にでもなっちまいますよ」
「いいじゃねえか宇宙船。群がるガキをそのまんま宇宙に運んでやりゃ大評判だろ」
高橋は新しいタバコに火をつけた。石崎はそれに少し顔をしかめたが、松本は相変わらずニコニコしている。
「そうじゃないでしょう。この町にはこの町の空気っていうのがあります。この町で生きてる人間だっているんです」
「『この町の空気』って。石崎君よお。いつまでもそんな古臭え事言ってんなよ」
「とにかく俺は反対です」
石崎は高橋の方だけを見ながら言った。
「ウゼエ事言うなや石崎。何のためにお前を呼び戻したと思ってんだ」
「しかし・・」
「解ってんならいちいち文句たれんな。お前がここにいんのはそういう事じゃない」
「・・・」
不満の色が消えない石崎だが、高橋は煙をふーっと大きく吐き出し、話を続けた。
「Kが丞柳会の下から抜けたらしい」
「Kが?」
「ああ。Kを飼ってた組の長を殺して、もう一人組員をさらって消えたらしい」
「何故?」
「しらん。それから、何回か丞柳会系の人間がKを追ったらしいが、全部駄目だったらしい」
「いえ、その、何故って言うのは、Kが一人殺さずに『さらった』のは何故なんです?」
石崎は少し身を乗り出した。それに押されて高橋の方は体を下げた。その隣の松本は涼しい顔をしている。
「ああ・・それも知らん。ただ、他の人間は全部死体があがってるのからして、そいつがKと一緒に逃げたって可能性もあるらしい。まあ、系列の違う所の情報だからな。そこまで詳しくは流れてこねえ」
「そうですか・・・」
「それでな、石崎。最近そのKがこの辺によく出てくんだよ。こちらの松本さんの所のスタッフも何人かやられた」
「それは・・Kがやったってのは確かなんですか?」
「ああ。方法からしてKしかありえない。その御蔭でこっちの工事が進まないんだよ。それでお前を呼んだ」
松本の顔が少し曇った。
「はあ」
「Kを殺せとは言わん。それは松本さんのところのスタッフがやってくれるそうだ」
松本の顔に再び笑顔が戻った。
「はあ」
「なんせ丞柳会以外の人間でKとまともに会話できるのはお前だけって各地で評判だからな。しっかり松本さんをサポートしろ」
「・・・・」
「この町で生まれたお前の気持ちも解らんではないさ。石崎。でもなあ、これもビジネスでな。よろしく頼む」
高橋はそう言ってタバコを灰皿に押し付けると、立ち上がり、
「うんこ」
と言って便所に向かった。高橋のいなくなった席の隣で、相変わらず松本はニコニコしていた。